文学フリマ広島の超収穫

遅くなりましたが二週間ほど前に行われた第二回文学フリマで遭遇した恐るべき本を紹介したいと思います。組糸座(くみとざ)という謎のサークルが頒布する十夜木文麦という方の三冊です。下の画像の左から「いろはなとり」「にしのことりことつきのよる/きた…

時間からのポー

ポーといえば気にかかることが一つある。ツイッター界隈を流れる噂によれば、ラヴクラフトの "Colour out of Space" を「宇宙からの色」とか、"Shadow out of Time" を「時間からの影」と訳している本があるらしい。ツイッターというのはデマ生成装置みたい…

続松山翁とポー

モーセと一神教 (光文社古典新訳文庫)作者:フロイト発売日: 2020/02/04メディア: 文庫松山俊太郎翁のポー解釈は、マリー・ボナパルトの『エドガー・ポー』の影響を受けていたように思う。ここでいきなり脱線すると、この『エドガー・ポー』といい、プシルス…

続吉田訳ポー

ポーの文章は重い石を積み重ねて城壁を作っていくような感じで、内容はともかくその文体が好きか嫌いかと問われると、まああれだね、ちょっと答えにくいところがある。むかしむかし、松山俊太郎翁の講義、というか放談がまだ美学校で行われていたころ、佐々…

史上最強

東雅夫さんのこのツイートにはわが意を得た思いがする。「史上最強」というのはまったく同感。「中学時代、これでポーにハマりました」というのもまったく同じ。「赤き死の仮面」がにわかに注目をあつめるポオには、戦前から多くの訳書がありますが、一巻本…

続ホワットダニット

こんな話を聞いた。もしかしたら業界では有名なエピソードなのかもしれない。むかしむかし、作家X氏の傑作集が出ることになって、その解説をY氏が担当することになった。ところが、いざ出来上がった解説に目を通したX氏は、「これではだめです」と言い張り続…

MONKEYの探偵特集

MONKEY vol.20 探偵の一ダース作者:出版社/メーカー: スイッチパブリッシング発売日: 2020/02/15メディア: 雑誌 ボルヘスはマリア・エステル・バスケスとの対話でこんなことを言っています。 ボルヘス ……第二に(これははるかに大切なことですが)探偵小説は…

幻想と怪奇来たる

縁あって『幻想と怪奇1』のご恵送にあずかりました。 どうもありがとうございます。紀田・荒俣両巨頭による創刊の辞、北原尚彦氏のイントロダクションに続いて、いきなりアーサー・マッケンの短篇登場! いやー実にわかってらっしゃる! やはりアーサー・マ…

ホワットダニット

竹本健治さんがマイ・ホワットダニットという面白い催しをやっている。 このTogetterがやたらめっぽう面白い。でも「何でこれがでてこないんだ!」という古典があったので FF外から失礼します、どころかツイッター外から失礼します。つまりこれ↓ですね。もっ…

やれ嬉しや

高原英理さんが拙訳『怪奇骨董翻訳箱』を第六回日本翻訳大賞に推薦してくださいました。どうもありがとうございます。おかげさまでアマゾンで在庫四冊だった『翻訳箱』が今では二冊になっています。高原さんが気に入ってくださったツァーンの『ある肖像画の…

新たなる噴飯の胎動

『阿部徳蔵魔術小説集』、フランメンベルク『降霊術師』、「『犯罪公論』傑作選」と、恐ろしくモトデがかかっているであろう好企画を続けざまに放っている黒死館附属幻推園がまたまた何か怪しげなことを企んでいるらしい。そう風の便りに聞いた。漏れ聞く噂…

あとになって

新しく出た訳本をパラパラとめくるたびに、粗忽な拙豚は「あーしまった」と天を仰ぐ。今回の『イヴのことを少し』もはたして例外ではなかった。今回一番恥ずかしいのは、キャプションの訳である。'take over'というのはむろん「引き継ぐ」という意味で、こん…

2020年はキャベルイヤー

年明け早々、南條竹則氏の『幽』での連載をまとめた本が出るそうな。まことにめでたい。ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚作者:南條 竹則出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2020/01/07メディア: 単行本言うまでもないことだが、この…

『イヴ』ついに発売!

J.B.キャベル『イヴのことを少し』がアマゾンで「在庫あり」になりました。どうぞこぞってお求めください。毎月の国書税が厳しい昨今ですが、版元でマニュエル伝を担当されている方に話をうかがったら、この『イヴ』は、「当社ではもっとも安い価格帯の本」…

文学フリマ収穫(その4)

その4は「サメねえちゃん」でおなじみのサメンバーさん待望の新刊です。なんと『サメンバーレポート』#4は「表記ゆれ」という肺腑を突く特集なのです。ここでは表記ゆれは校正の立場からではなく言語学的に考えられています。「あることばで表記ゆれが観…

文学フリマ収穫(その3)

その3はサークル「管弦楽団 響」さんの「クラシック冥曲案内 ハズす側の論理 ハース版最終稿」。アマチュアオーケストラで活躍されている方の本です。軽妙な文体でクラシックの名曲と名盤を紹介しています。執筆者の一人のお嬢さん(表紙画担当、通称画伯)…

文学フリマ収穫(その2)

文学フリマ収穫のその2は、柿内正午さんという方の「プルーストを読む生活」。これは何というか、ひょんなことから『失われた時を求めて』(井上究一郎訳)全巻を買ってしまった青年が、毎日少しずつそれを読みながらしたためている日記です。といっても内…

文学フリマ収穫(その1)

日曜の文学フリマに買い専で参加してきました。収穫その1としてご存知噴飯文庫の新刊。いつもそうですが商業出版してもおかしくないほどのクオリティです。表紙がすばらしいですね。吉邨二郎という人の絵だそうです。どこからこんな絵を見つけてくるのか………

ゲラ紛失譚

エイリア綺譚集作者: 高原英理出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2018/11/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る もうすぐ『イヴ』の再校ゲラが来るはずだ。来たら赤字を入れて送り返すのだけれど、こんなときいつも思うのは「これ途中で紛…

驚愕の十文字

ジャーゲン (マニュエル伝)作者: J.B.キャベル,中野善夫出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2019/10/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 「マニュエル伝」美麗内容見本がわが家にもやってまいりました。そしてそこに驚愕の十文字があったのでご…

わが解説作法

推理小説にはたまに「読者への挑戦」というものが挿し挟まれている。つまり、手がかりはすべて与えたから犯人を当ててみろと作者が読者に挑戦しているのだ。拙豚はこういう挑戦は受けて立つほうである。紳士たるもの、白手袋で頬をはたかれれば拾わざるをえ…

魔界参入

ついにわが陋屋にも到来した美の司祭四人の饗宴! 漏れ聞く噂によれば、白玉楼中で憩っていた澁澤を降霊術でむりやり召喚して作品選択をさせたのだという。えらい迷惑な話のような気もする。たぶん「まあ蔵書目録や伝記の恩もあるからな」としぶしぶ応じてく…

『幻想と怪奇』の思い出

メディア: この商品を含むブログを見る 半世紀前の雑誌『幻想と怪奇』の傑作選が出るという。なんという素晴らしい企画ではないか! 今の人には『幻想と怪奇』は、われわれにとって『新青年』がそうだったような、名のみ聞く伝説の雑誌と化しているのではと…

外国語内外国語

ギリシャ棺の謎【新訳版】 (創元推理文庫)作者: エラリー・クイーン,中村有希出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2014/07/30メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る 外国語で書かれた小説の中に、別の外国語が入っていることがある。たとえばエラ…

篠沢教授のチンチンチン

今回の『イヴ』の翻訳で一番の難関だったのが冒頭のソネットの翻訳である。「だった」とつい過去形を使ってしまったが、初校ゲラ時点ではあまり決定稿という感じはしない。とはいえ『ジャーゲン』冒頭にある謎の五行詩ほどは難しくはないと思うから、ここで…

最後的対話

中国の本もずいぶん手に入れやすくなった。なにしろアマゾンでぽちっとするだけでいいので止められない止まらないである。装丁もひところにくらべればずいぶんと垢ぬけてきたと思う。で、最近買ったのがこの『最後的対話』の二冊。この本は英独仏西版がすで…

ありがとうブリリア

『イヴ』初校ゲラをたった今ヤマト便に出してきたところだ。初校ゲラというと普通の人は確認あるいはバグフィックスのため見るのであろうが、拙豚にとってはここからが本番なのである。赤潮にやられた海のように真っ赤に染まるのである。関係者諸氏の迷惑は…

全部買ってもいい

東京創元社さんから60周年記念ブックケースをいただきました。どうもありがとうございます。売り上げに全然貢献していない、それどころかきっと足を引っ張っているであろうわたしにまで下さるとは恐縮です。カシオの電子辞書がちょうど入る大きさなので重宝…

なのめに書き流したる

下の画像は特に名を秘す版元の、昔の本に挟まれていた愛読者カードだ。ここを見ている方なら「あああれね」とピンとくる方も多いと思う。 ごらんのとおり斜めになっている。印刷ミスではないようだ。意図的に傾けているらしい。古老の話によればこの本の新聞…

くとぅるーちゃんも驚愕

ただいま『イヴ』の初校ゲラと格闘中である。鉛筆で丹念に書き込まれた藤原さんの疑問出しを見ていると、こんなに手間をかけさせて申し訳ない、と思うと同時に、「オレってこれほど英語ができなかったんだなあ」という感慨めいたものも湧いてくる。還暦を越…