ヨーロッパに船出する高丘親王


 

『みすず』の読書アンケート特集を見ていたら、宮下志朗氏が『高丘親王航海記』の仏訳をあげておられました。仏訳が去年出てたんですね。全然知らなかったので驚きました。ちなみに訳者は先に『ドグラ・マグラ』を訳されたパトリック・オノレ氏です。

検索したらイタリア語訳も出ていました。

すでに中国では澁澤の訳書は多数出ていますが、さらにフランスやイタリアへも進出するとは愉快ではありませんか。いまにヨーロッパの読書家たちのあいだで、澁澤本がもてはやされるようになるかもしれません。ぜひ「澁澤なんてもう古いよ」とか言っている人たちの鼻をあかしてもらいたいものです。

もっともフランス人なら著者の名を「たちゅいこ・しびゅさわ」と発音しそうで、そこは少々不安です。なにしろボルヘスだって平然と「ボルジュ」「ボルジュ」と言う人たちですから。澁澤はコクトーに手紙を出すとき Tasso と署名したそうですが、これもトルクァート・タッソにあやかると同時に、 Tatsuo だと「たちゅお」と読まれるかもしれないと懸念したのかもしれません。しかしまあ「たちゅいこ」もインファンティリスムの発露ということでそれはそれでいいのかもしれません。