2018-01-01から1年間の記事一覧

発掘

とりあえず魔窟に潜って原本を発掘した。 挟み込まれていたレシートを見ると、この本は1979年11月15日に三省堂アネックスで810円で買ったらしい。ということは今を去るおよそ40年前のことだ。もうそんなになるのか! 時の流れが速すぎてついていけません。 …

秘密の合図

昨日のことである。とあるイベントに行ったら、会場で妙齢の美女から人目を忍ぶようにこれを手渡された。平然と受けとりはしたものの、内心では動揺を抑えられなかった。すでにこうしたものまで作成されていたとは! ふつうこうしたものは本が出てから作るも…

トランスファンタスティック

エイリア綺譚集作者:英理, 高原国書刊行会Amazon 定価が三千円を切っているのもかかわらずこの美麗装丁はただごとではない。どこをどう叩けばこの価格でこの造本が実現できるのだろう。版元の屋台骨を揺るがすくらいの大部数を刷っているのだろうか。ともか…

ドタキャン!

来たる11/25(日)の文学フリマでのスペース「エディション・プヒプヒ」は、当方スケジュール錯綜のためキャンセルのやむなきにいたりました。申し訳ありません。また明年お会いしましょう。

黄色の研究

外国語の色の名は、訳すのが簡単なようで案外難しい。たとえば"purple"。「紫でしょ。ディープ・パープルっていうじゃない」と言われる方もいるだろう。ところがディープでないただのパープルは、日本語でいう紫よりもっと赤みがかった色らしい。とりわけ古…

オーストリアギャグ

今後出してもらえることになっている本は今のところA、B、Cと三冊あって、Aは初校を戻して解説も書いたのですでに山は越した気分。Bは来月以降初校ゲラがポツポツ来る模様。Cはスケジュールさえはっきり決まっていないメロンタ・タウタ(="these thin…

別府とフィンランド

ここを見ている方ならたいていご存じと思うが、ある国内ベストテン級のミステリでは、別府はあの温泉で有名な大分県の町ではない。といってもパラレルワールドの異世界ものというわけでもなく、何というか、もっと陰険で悪辣なものである。だがこんなトリッ…

マクロイを愛す

牧神の影 (ちくま文庫)作者:マクロイ,ヘレン筑摩書房Amazon悪意の夜 (創元推理文庫)作者:ヘレン・マクロイ東京創元社Amazon ヘレン・マクロイが好きだ。海辺まで走っていって、「好きだよー!」と叫びたくなるくらいに好きだ。だからここ最近のマクロイの新…

ジュテーム?

英語とは何か (インターナショナル新書)作者:南條 竹則集英社インターナショナルAmazon ジャズトランぺッターMiles Davisの名は英和辞典の発音表記で見るかぎり、「マイルス」ではなくて「マイルズ」である。ところが「日本で一番マイルスに近い男」と呼ばれ…

高い山から

自分はシブサワ派かもしれない。だがタカヤマ派だろうかと自問すると、やはり違うような気がする。タカヤマ本はたいてい読んでいるが、いや正確に言うとたいていページをめくってはいるのだが、あれら膨大な著作の基調をなすメッセージが、シブサワの場合ほ…

シブサワなう

『カラマーゾフの兄弟』中のゾシマ長老伝のはじめのほうに、二十歳前に結核で夭折した長老の兄マルケルのエピソードがでてくる。その兄は死ぬ一か月前にこんなことを言ったそうだ。 「お母さん、泣かないでください。人生は楽園です。僕たちはみんな楽園に住…

中野さんの本

中野善夫さんが9/15のツイートでいつものように届いた本の報告をされている。 本が届いた。今日はいい日だ。しかし、霊が写り込んでいて書名が見えない。 pic.twitter.com/gZvtQA5l0n— 中野善夫 (@tolle_et_lege) 2018年9月15日 実はわたくしも同じ本を持っ…

ルビのために

ルビというのは大切なものである。むかし、「忽然(こちねん)と叩叩の欵門(おとない)あり。」の「叩叩」のところにルビがなかったので、「とんとん」と読んだ人がいた。大阪圭吉か! でもまあ、「こちねんととんとんのおとないあり」もけして悪くはない。…

一考さんの鍵

澁澤龍彦はアンドレ・ブルトンから一本の鍵をもらったという。かくいうわたしも、むかしむかし、渡邉一考さんから一本鍵をもらったことがある。ほかに革ジャンパーももらったけれど、そちらは今の話に関係がない。まだ一考さんが赤坂見附の「ですぺら」でマ…

識語

南條竹則さんの『英国怪談珠玉集』が怒涛の勢いで売れているそうです。まことに慶賀にたえません。やはり夏は怪談が一番であります。ツイッターでの告知によると、購入された方には抽選で素敵なプレゼントもあるようです。 【プレゼントキャンペーン】 『英…

陥穽と振子

とある編集者の方のウェブサイトにあった「今月の予定」を、すごい仕事量だな相変わらず大変そうだなとか思いながらボーッとながめていたのだが、何秒かのタイムラグのあと、とつぜんハッと気がついた。「今月入稿予定が二冊」って、一冊は自分の担当なので…

登場人物表のパラドックス

煙で描いた肖像画 (創元推理文庫)作者:ビル・S. バリンジャー東京創元社Amazon 今はむかし、世紀の変わり目前後に、ミステリ系サイトが栄えた一時期があった。実をいうとこの「プヒプヒ日記」もそれら先輩サイトに刺激を受けて生まれたものだ。ところが栄枯…

最後から二番目の消夏法

* 毎日暑いですね。皆さんはいかがお過ごしですか。国書刊行会さんもこの暑さには参っているようです。 window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; …

当たりとの遭遇

《続き》傍線、書き込み、はさみ込んだ葉書や裸写真(『urecco』が一番綺麗に撮っていた頃の「名作」ばかり)、ひょっとして万札、千円札、当時の記念切手類、一切ノーチェックだから、そういうの含めて関心ある向きの、ただ一度っきりの幸運を祈ります pic.…

学魔本を求めて

学魔本を求めてまたまた古書ほうろうへ。これで三度目か四度目だと思う。この店のよいところは、「学魔本」というコーナーを特に作ることなく、あちこちの棚に分散して置いてあるところである(ときには均一本の中にまで!)。おかげで。宝探しの気分であち…

閉と開

ウロボロスの基礎論 (講談社ノベルス)作者:竹本 健治講談社Amazon 竹本健治さんの『ウロボロスの基礎論』がこの五月に講談社文庫に入った。なんと今回が初の文庫化らしい。二十年ぶりくらいに読んでやはりこれは傑作であるなあと改めて溜息をついた。本書の…

百門の薔薇館

*皆川博子の辺境薔薇館: Fragments of Hiroko Minagawa作者: 皆川博子,綾辻行人,有栖川有栖,石井千湖,井上雅彦,伊豫田晃一,宇野亞喜良,岡田嘉夫,恩田陸,佳嶋,北原尚彦,北村薫,日下三蔵,久世光彦,倉田淳,黒田夏子,小森収,近藤史恵,今野裕一,齋藤愼爾,坂野公…

学魔本放出を巡る誤解を正す

駒場のとある古書店主が今回の学魔本放出について、日記で触れている。「懇意でもないのにかっさらいやがって」という嫉妬と羨望が見え隠れする嫌らしい文だけれど、そのせいかどうか、どうも認知に歪みが生じているようだ。同業者なんだから、ちゃんと裏を…

学魔本を求めて

window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js = d.createElement(s); js.id = id; js.src = "https://platform.twitter.com/widgets.js"; fjs.paren…

自殺の歴史

*自殺の歴史作者: ロミ,土屋和之出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2018/04/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る* 土屋和之さんから『自殺の歴史』をご恵贈いただきました。ありがとうございます。 (当然のことながら)もう自分でも買…

ミステリーズ!

ミステリーズ! Vol.88作者:樋口 有介ほか東京創元社Amazon 「ミステリーズ!」の4月号を開いてビックリ。巻末の名物コラム「レイコの部屋」に、盛林堂書店の小野純一さんが登場してるではありませんか。西崎憲さんの読みきり短篇「黄燈紅燈」と並んで今号の…

『皆川博子の辺境薔薇館』

皆川博子の辺境薔薇館: Fragments of Hiroko Minagawa作者: 皆川博子,綾辻行人,有栖川有栖,石井千湖,井上雅彦,伊豫田晃一,宇野亞喜良,岡田嘉夫,恩田陸,佳嶋,北原尚彦,北村薫,日下三蔵,久世光彦,倉田淳,黒田夏子,小森収,近藤史恵,今野裕一,齋藤愼爾,坂野公一,…

一本の毛の問題

ドラコニアの夢 (角川文庫)作者:澁澤 龍彦KADOKAWAAmazon乱歩謎解きクロニクル作者:中 相作言視舎Amazon 先に触れた『ドラコニアの夢』には、「江戸川乱歩『パノラマ島奇談』解説」も収録されている。これは角川文庫が宮田雅之の切り絵を表紙にして乱歩を出…

大予言

書物の宇宙誌―澁澤龍彦蔵書目録国書刊行会Amazon 澁澤の(乱歩みたいな)魅力が、今後も若い人のあいだに読み継がれるあろうと昨日書いた。でもそれは2006年、『澁澤龍彦 書物の宇宙誌』ですでに予言されていたことだった。昨日の日記は実に十二年間の後塵を…

胡桃の中の世界

澁澤龍彦玉手匣作者:龍彦, 澁澤河出書房新社Amazonドラコニアの夢 (角川文庫)作者:澁澤 龍彦KADOKAWAAmazon 澁澤龍彦はあまり人間という感じがしない。古生代の虫を封じ込めた琥珀。蜃気楼を吐く大はまぐり。スカラベに埋められた糞玉。そういうたぐいのもの…