ゴシック

吉田訳ポーふたたび

悪漢と密偵さんのツイート(正確にいえば藤原編集室のリツイート)で、吉田健一訳ポーが中公文庫の一冊として出ることを知る。これは近来にない快事だ。世間もようやく吉田訳ポーの凄さに気づいたかムハハハハという感じである。ポー一流の沈鬱かつ淀みない…

『幻想と怪奇』3号

各所で話題騒然の『幻想と怪奇』3号を買ってきた。 巻頭80ページあまりの平井呈一特集は圧巻で、これだけでも十分にもとはとれるが、さらに圧巻なのはそれに続く短篇群である。実にみごとなアンソロジー(精華集)になっている。アンソロジーのテーマはいわ…

続吉田訳ポー

ポーの文章は重い石を積み重ねて城壁を作っていくような感じで、内容はともかくその文体が好きか嫌いかと問われると、まああれだね、ちょっと答えにくいところがある。 むかしむかし、松山俊太郎翁の講義、というか放談がまだ美学校で行われていたころ、佐々…

不穏の書

*リテラリーゴシック・イン・ジャパン: 文学的ゴシック作品選 (ちくま文庫)作者: 高原英理出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/01/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (7件) を見る* 『虚無』へ捧ぐる供物へと 美酒すこし 海に流しぬ いと少しを * …

ありがとうございました

文学フリマは多くの方に来てくださり、どうもありがとうございました。新刊は美女売り子嬢の奮闘もあって、一時過ぎには完売。その後はひたすら来た下さった方に頭を下げる。申し訳ありません! 次回はまた山羊に食わせるほど作ってまいります。 それからう…

ゴシックの魂を持つ者たちよ、西荻に集え!

ゴシックスピリット作者:高原 英理朝日新聞社Amazon 唐突に宣伝などしてみる。 高原英理氏×小谷真理氏によるトークイベント 『ゴシックの夢、ゴシックのリアル』 2007年11月11日(日)、今野スタジオMAREにて、 16:30開場/17:00開演、料金1,500円 只今予約受付…

マゾッホ時代のゴシック・カルチャー

醜の美学作者: カールローゼンクランツ,Johann Karl Friedrich Rosenkranz,鈴木芳子出版社/メーカー: 未知谷発売日: 2007/02/01メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (11件) を見る くわしい感想をいずれ書くと言いながら放ったらかしにして…

ジョルジュ・サンドのゴシック

スピリディオン―物欲の世界から精神性の世界へ (ジョルジュ・サンドセレクション 2)作者:ジョルジュ サンド藤原書店Amazon 知る人ぞ知るジョルジュ・サンドのゴシック・ロマンス『スピリディオン』が突然翻訳された! 全九巻の「ジョルジュ・サンド・セレク…

もう一つのゴシック・ロマンス

金曜の夜、某所でゴシック・ロマンスの同人誌を作ろうではないかという話題で盛り上がった。ゴシックといってもM文庫の名訳集成に載るようなたぐいのものではない。ヴィクトリア・ホルトとかフィリス・ホイットニーとか、たぶん東雅夫さんなら死んでもとり…

『怪の物』はボーイズラブか?(その2)

ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語 伝奇ノ匣7 (学研M文庫)学研プラスAmazon (昨日の続き)江間医師を密かに慕う怪富豪村山三郎は首尾よく(?)怪我をし、これを口実(?)に江間の往診を乞うこととなった。しかし、館に招き入れられた江間を待ち受けていたのは…

『怪の物』はBL(ボーイズラブ)か?

ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語 伝奇ノ匣7 (学研M文庫)学研プラスAmazon 世を避け一人淋しく暮す江間医師(もちろん男性)のもとに、夜な夜な怪しい影が現れる。 余は折々暗(やみ)の夜に起上がりて窓の外に目を配るに、勿論闇き為に何物をも見弁け得べくも…

『怪の物』(「ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語」)

ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語 伝奇ノ匣7 (学研M文庫)学研プラスAmazon ついに出た『ゴシック名訳集成』。そのなかでも一番のページ数を占めるのはおなじみ涙香先生の「怪(あやし)の物」です。原作者はエドモンド・ドウニーというイギリスの作家。イギリ…

コミケ当選!

二日目(8月14日(土))の西2“う”18aです。 新刊は、(もし間に合えば)、モーリス・サンド「迷路」(Maurice Sandoz "Das Labyrinth" 1941)が出るはず。ジャンルとしてはゴシック・ホラーだけれども、「アンチクリストの誕生」に負けずとも劣らぬ驚愕の…

ゴシックよもやま話(5)『幽霊屋敷 (開巻驚奇 龍動鬼譚)』

ハーンが「英語で書かれた最上の怪談」というブルワー=リットン「幽霊屋敷」であるが、これは創元推理文庫「怪奇小説傑作集」の第一巻巻頭に収録されている。しかし、この巻には『ポインター氏の日録』『パンの大神』『緑茶』『猿の手』『炎天』『秘書綺譚』…

ゴシックよもやま話(4)『「モンク・ルイス」と恐怖怪奇派(小泉八雲)』

小泉八雲ことラフカディオ・ハーンは、1896年から7年間にわたり東京帝国大学教授として英文学を(もちろん英語で)講義していた。その講義録が恒文社版新著作集の6-13巻に収められている。全15巻の新著作集の過半を占めるという大変な分量であり、自らの知見を…

ゴシックよもやま話(3) オトラント城綺譚(現代語訳)

ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語 伝奇ノ匣7 (学研M文庫)学研プラスAmazon 平井呈一翁の名訳と言えば十指に――いや二十指にさえ余ろうけれど、その中でもひときわ異彩を放つのがこの「オトラント城綺譚」である。不勉強にして擬古文訳の方は通読さえしていない…

ゴシックよもやま話(2)『吸血妖魅考』  ISBN:4480087826

最近文庫版も出た日夏耿之介『吸血妖魅考』は、日夏自身が序で記している通り、門下の太田七郎らの助力に負うところが少なくなかったらしい。またその内容もモンタギュー・サマーズの吸血鬼関係の二著の祖述(翻案)であるという。それならばこの本には日夏…

ゴシックよもやま話(1)〜『地獄風景』

伝奇ノ匣のゴシック編は全三巻になるそうだ。7月には高原英理氏の「ゴシック的思考」も出る。まことに慶賀にたえない。この機会に拙豚もその驥尾に付し、ゴシック小説への偏愛をポツポツと語らん。 で、「地獄風景」であるが、巷ではこの作品は「パノラマ島…