中井英夫

中井英夫生誕百年祭に参加

あまりにも暑いので家にじっとしておられず、恵比寿で昨日から催されているGalerie LIBRAIRIE6の中井英夫生誕百年祭に行ってきた。1941年に書かれた日記の一部と死の直前に書かれた覚書が並べて展示されていたのだけれど、筆跡がそっくりなのにびっくり。ふ…

「百年はもう来ていたんだな」

今週の土曜から月末にかけて恵比寿のGalerie LIBRAIRIE6で中井御大の生誕百年祭が開かれるようです。LIBRAIRIE6のサイトによれば、「中井英夫 生誕100年」展 – 本多正一写真集「彗星との日々」と装画作家たち – を7月16日 (土) ~ 7月30日 (土) まで開催いた…

これが百合か3

『安達としまむら』を十巻まで読んだ。いや~よかった。感服つかまつった。これが百合か。百合というものか。なるほどね~。これが男女の恋愛だったらここまで切なくひたむきにはならないように思う。恋愛感情のひたむきさでこれに近い読後感のものに、中井…

黒鳥忌に寄せて

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)作者:中井英夫講談社Amazon 「黒鳥忌に寄せて」というものの、黒鳥忌すなわち中井英夫の命日は十二月十日だったから、もう二週間くらいも過ぎてしまった。『虚無への供物』をはじめて読んだのは高校生のころ、講談社…

中井英夫「鏡に棲む男」フランス語朗読

本多正一さんから、フランス語版「鏡に棲む男」の朗読がYouTubeにアップされたことを教えてもらいました。これはなかなかのものですよ。 www.youtube.com ちなみにテキストはここにあります。「これがこの人間世界にあっていいことなのか……」という藤木田老…

空がとっても低い

「鏡に棲む男」に続いて「火星植物園」が "Nouvelles du Japon" に掲載された。このサイトには他に太宰治の「走れメロス」や野坂昭如の「戦争童話集」も訳載されている。訳者たちが真に共感する作品を選りすぐって掲載しているのがうかがえる好サイトだと思…

中井英夫フランスに進出!

これは本多正一さんから教えてもらったのですが、中井英夫の短篇「鏡に棲む男」の仏訳が”La Nouvelles du Japon.com”というサイトに掲載されています。ちゃんと契約を交わした上の訳出といいますから、本格進出といっていいでしょう。この「鏡に棲む男」とい…

毒は作品より早く

本の雑誌396号本の雑誌社Amazon* むかし雀*1仲間だった花笠海月さんから『「詩世紀」における長谷川敬(赤江瀑)』をいただきました。ありがとうございます。花笠さんと彩古さんと共著のかたちで書肆いろどりから出されたものです。また「本の雑誌」の6月号…

破戒

近くまで来たついでに古書いろどりに寄ったら、店主の彩古さんから、今日は「戦後70年 中井英夫 西荻窪の青春展」の初日であることを教えられた。おおそうであったか。すっかり忘れていた。その足で東京古書会館に回ると、二階でひっそり、いかにも中井英…

Three is the perfect pair

神の聖なる天使たち −−ジョン・ディーの精霊召喚一五八一〜一六〇七作者:横山 茂雄研究社Amazon 中井英夫が一九八五年に発表した『月蝕領崩壊』は、がんに侵された〈自らの分身〉Bを看病するA(著者自身)の日記である。そのまえがきにこうある。「どことも…

濁点と半濁点

ツイッターを見ていると、「やぱい」とか「ばくってる」とか「べガーナロスト」とか「白昼のスカイスクレエバア」とか、濁点と半濁点とを混同した表記がたまに目につく。スマホでの文字入力手続きが、濁点と半濁点とを混同させやすいようになっているのかも…

アヒルの影ありて

まごまごしているうちにブラックスワンのキャンペーンは終わってしまった模様。残念。それにしてもアフラックといえばアヒルのはずなのになぜブラックスワンなのだろう。中井英夫が何かのエッセイで、 わが面にすこしアヒルの影ありて呑気すぎたる子を魅する…

黒鳥が欲しい

街でもらったティッシュにこんな引換券がついていた。 おうブラックスワン! 「それは、真黒い恥の固まりで、きれぎれな小さな啼き声は、こみあげる恥の記憶に堪えかねて洩らす呻きというより呪文に近い。どのような魔法の鞭が、こんな変身を可能にしたのだ…

中井英夫西荻窪の青春展

今日は一日オフにして『中井英夫西荻窪の青春展』に行ってきました。西荻窪駅に降り立つのは何年ぶりでしょうか。でもあまり変わってなさそうなのが頼もしい限りです。ただ古本屋は何件か消滅した模様。この展示はあちこちにばらけているので、まずは図書館…

『泡坂妻夫 からくりを愛した男』

泡坂妻夫: 総特集 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)河出書房新社Amazon 開巻早々、北村薫氏が法月綸太郎氏に謎をかけている。 北村 泡坂先生が、亜愛一郎は○○○だ、と言っておられるんだけれども、○○○にはカタカナ三文字が入ります。はい、何が入るでしょうか? 法…

中井愛の美学

*中井英夫―虚実の間に生きた作家 (KAWADE道の手帖)作者: 本多正一出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/06/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 19回この商品を含むブログ (15件) を見る* 昨日に引き続き帯の話。 『両シチリア連隊』の帯の惹句は…

中井三景

レルネット=ホレーニア『両シチリア連隊』の刊行が9月12日に決まったらしいです。なにとぞよろしくお願いします。装丁もカッチョイイです。この本の解説を書くために、久しぶりに中井英夫関連文献をザザザザと読んだ。むかし『中井英夫 虚実の間に生きた作家…

音叉小説

飛行士と東京の雨の森作者:西崎 憲筑摩書房Amazon 雨の日にしか読んではならぬ本だそうだ。晴れた日にページを繰ると、名状しがたい災厄が起こるという。幸いにもここ数日の天気の崩れのおかげで、ようやく手にとれるようになった。巻頭は詩的な「理想的な月…

P氏も南山壽

引き続きビオイ=カサーレスの日記を読んでいる。今日は1962年2月26日の記述。人の日記を紹介していると毎日の更新が実に楽でいい。 ボルヘスが合衆国から電話してきた。「……ロサンゼルスでアントニイ・バウチャーとテクニックの話をした。彼はとても生き生…

口ひげを生やした中井英夫

アンドロギュノスの裔 (渡辺温全集) (創元推理文庫)作者:渡辺 温発売日: 2011/08/31メディア: 文庫 ギャラリーオキュルスの渡辺温オマージュ展に行ってきました。えーと見所としてはですね、1. 入ってすぐ左にかけてある温ちゃんのシルクハットに触り放題!*…

土屋君の新刊を祝して

10ぴきのペンギンくん作者:ジャン=リュック フロマンタル学研プラスAmazon 「レヴォカシオン」ですばらしい訳――達意の文章であり、かつそれがそのまま日本語の富ともなるような翻訳を披露してくれる土屋和之君には、漏れ聞くところによると、今後何冊かの…

中井英夫を読みつくしたあとは

* * すべからくブルーノ・シュルツを読むべし。(もちろん、まだ創元版中井全集を読破していない人はそちらが優先だろうけれども) 七月、父は決まって湯治場に出かけていき、私と母と兄とは暑熱に白いめくるめく夏の日々のなかに置き去られた。光に放心し…

十蘭対猛之進

久生十蘭「従軍日記」作者: 久生十蘭,小林真二出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/10/11メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 11回この商品を含むブログ (22件) を見る たいへんに貴重な本が出た。十蘭が昭和十八年に、海軍報道班員として…

アリスから幸福の王子へ

中井英夫―虚実の間に生きた作家 (KAWADE道の手帖)作者:本多正一河出書房新社Amazon 本多正一氏入魂の編集による『中井英夫 虚実の間に生きた作家』が出ました。拙豚も氏の厚意により「中井英夫作品案内」なる文章を寄せています。しかし中井英夫と言われても…

続報いろいろ

彗星との日々―中井英夫との四年半 (BeeBooks)作者: 本多正一出版社/メーカー: 光村印刷発売日: 1996/03メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 4日ほど前ここに「翻訳の仕事がどこからか来ないものか」と書いたら本当に依頼が来ました(ビック…

ゲラがまた来た

こんどのお題は中井英夫。後頭部疑惑のことなど書くわけにもいかないので、いちおうまじめに作品紹介に徹しました。拙文を載っけてやってもいいよという度量の広い出版社が増えてきたのは嬉しいことです。(あえて欲を言えば、翻訳の仕事がどこからか来ない…

中井英夫河童疑惑

……それは季刊「月光」が中井英夫を特集した頃だから今から十五年前にさかのぼる。不用意に撮られたとおぼしい下の写真を見て、 「もしかして中井英夫の頭頂部には、もはや毛が存在していないのではあるまいか」という深刻な疑念にとらえられた。しかしあまり…

いろいろ3

サーカス―起源・発展・展望作者:エヴゲニィ クズネツォフありな書房Amazon 小宮山書店の三冊500円ショップで中井猛之進『東亜植物』という本を拾ったよ。一読文章のうまさにビックリ。中井英夫の文才については従来母の血のみが語られてきたが、ちと片手落ち…

幻視の恩寵

ペトラルカ=ボッカッチョ往復書簡 (岩波文庫)作者: 近藤恒一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/12/15メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (4件) を見る アーサー・マッケンはウェールズの片田舎で牧神パーンの跳梁するのをまざまざと見た…

よそびとの夢・時間の獄

中井英夫戦中日記 彼方より 完全版作者: 中井英夫,本多正一出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2005/06/18メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (22件) を見るこれは素晴らしい本だ! 単なる深夜叢書版(潮出版社版)の完全版というだけでは…