高原英理

高原英理『祝福』

高原英理さんから近著『祝福』を贈っていただいた。ありがとうございます。もらったから言うわけではないが、これは傑作だと思う。少なくとも近来になく刺激的な読書体験であった。十年以上前にこの日記で三日にわたってとりあげた「記憶の暮方」(1, 2, …

高原英理『精霊の語彙』

高原英理さんの短篇ひとつだけを収めた小冊子を作者の好意により落掌した。なんたる僥倖。この「精霊の語彙」は来月末に出る連作長篇『祝福』の中の一篇なのだそうだ。『祝福』というとなんだかめでたい感じがするが、本のカバー上部に下半分だけ見える漢字…

「ボーイ・ミーツ・ミシマ」

三島由紀夫最後の言葉 (〈知〉のフロントラインへ-「図書新聞」セクション 1)作者:三島 由紀夫,古林 尚,高原 英理,樺山 三英,井上 隆史,柳瀬 善治,鳥居 万由実,松原 俊太郎武久出版ぶQ出版センターAmazon 「ボーイ・ミーツ・ミシマ」……そうか、ボーイがミシ…

高原英理 日々のきのこ

これは文章・内容ともに高原英理さんの現時点での最高傑作ではないか(もっとも全作読んでいるわけではないので確言はできないが)。最初のほうののんびりして滋味のある文章は鏡花を思わせる。そういえば昔の『小説幻妖』に鏡花の茸の小説が載っていたなあ…

夏のクラシック怪奇小説フェア

三省堂書店神保町本店二階では今「夏のクラシック怪奇小説フェア」が開催中です。これを選書した人はきっとかなりのマニアだな……日本作家では高原英理さんの本だけがあるのが渋いではないか……と思いながら並んでいる本を見ていたら、版元品切増刷未定になっ…

ゲラが紛失する話

エイリア綺譚集作者:英理, 高原国書刊行会Amazon もうすぐ『イヴ』の再校ゲラが来るはずだ。来たら赤字を入れて送り返すのだけれど、こんなときいつも思うのは「これ途中で紛失したらどうしよう」ということだ。わがゲラはたいてい赤字が死ぬほどたくさん入…

大予言

書物の宇宙誌―澁澤龍彦蔵書目録国書刊行会Amazon 澁澤の(乱歩みたいな)魅力が、今後も若い人のあいだに読み継がれるあろうと昨日書いた。でもそれは2006年、『澁澤龍彦 書物の宇宙誌』ですでに予言されていたことだった。昨日の日記は実に十二年間の後塵を…

怪談生活

*怪談生活 江戸から現代まで、日常に潜む暗い影 (立東舎)作者: 高原英理出版社/メーカー: 立東舎発売日: 2017/03/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る* 「どうしてツイッターやらないんですか」とたまに聞かれる。この日…

ラヴクラフトより異形

不機嫌な姫とブルックナー団作者:高原 英理講談社Amazon 面白かった。一気に読んだ。一般的にいって、「生前は一握りの崇拝者にしか理解されなかったが、死後に評価が高まり、今では古典とみなされている」といったパターンは、文学史や他の芸術の歴史にあま…

猫の力

ファイン/キュート 素敵かわいい作品選 (ちくま文庫)筑摩書房Amazon 猫のチカラ - 佐竹 茉莉子さんの『道ばた猫日記』にこんな話が紹介されている。あるところに86歳のおばあさんがいた。認知症が進行して周囲に無反応になり、「首をうなだれて座っているだ…

不穏の書

*リテラリーゴシック・イン・ジャパン: 文学的ゴシック作品選 (ちくま文庫)作者: 高原英理出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/01/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (7件) を見る* 『虚無』へ捧ぐる供物へと 美酒すこし 海に流しぬ いと少しを * …

息子帰る

本日予定されていた魔造酒の会(仮称)が急遽中止に。醸造が間に合わなかったのだろうか、それともついに官憲の手が伸びたのか。代わりにずいぶんご無沙汰していた百日咳の会(仮称)のほうに出席。「『猿の手』の菊池寛訳が発見されるのがもう少し早かった…

「記憶の暮方」について(3)

アムネジア作者:稲生 平太郎角川書店Amazon(承前) 「記憶の暮方」と「アムネジア」とはどちらも物語の消失、そして墜落のイメージで幕を閉じる。 一枚の紙、一冊の手帳、一冊の本。 必死になって手を伸ばしても、届かない。つかめない。 記されている文字や…

「記憶の暮方」について(2)

十字街―久生十蘭コレクション (朝日文芸文庫)作者:久生 十蘭朝日新聞社Amazon 「記憶の暮方」からいやおうなしに連想されるのが橋本治の久生十蘭論「遁走詞章」だ。この評論では記憶違いというものに対して、そしてそれと歌(リズムを持つ文章)との関係につ…

『記憶の暮方』

群像 2011年 03月号 [雑誌]講談社Amazon 独特の文体によって、どことも知れぬ空の彼方から手繰られるように物語がゆるゆると語りほどかれてゆく。「手繰られるように」というのは単なるレトリックではなく本当にそうなのだ。なにしろこの二百枚を越えるであ…

『抒情的恐怖群』頌

抒情的恐怖群作者: 高原英理出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 2009/04/17メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 18回この商品を含むブログ (12件) を見る* 誰だか思い出せないのだが、ある高名な作家がこう書いていた。クモやゲジゲジなどの他愛ないもの…

グレー・グレー

文学界 2008年 10月号 [雑誌]Amazon ゴセシケがトラウマになってますという話はSF系サイトをたどればあちこちで目にするが、ほんとうにあの小説はすごかった。県立図書館で立ち読みをはじめたら止められなくなり、おしまいまで読みきってボッーっとなって家…

ゴシックの魂を持つ者たちよ、西荻に集え!

ゴシックスピリット作者:高原 英理朝日新聞社Amazon 唐突に宣伝などしてみる。 高原英理氏×小谷真理氏によるトークイベント 『ゴシックの夢、ゴシックのリアル』 2007年11月11日(日)、今野スタジオMAREにて、 16:30開場/17:00開演、料金1,500円 只今予約受付…

いろいろ8

ゴシックハート作者: 高原英理出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/09/14メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 51回この商品を含むブログ (65件) を見る まだ推理クイズをやっている。くそーやめられん。誰か止めてくれ(笑) いまのところ一番感心した問題…