三島由紀夫

「ボーイ・ミーツ・ミシマ」

三島由紀夫最後の言葉 (〈知〉のフロントラインへ-「図書新聞」セクション 1)作者:三島 由紀夫,古林 尚,高原 英理,樺山 三英,井上 隆史,柳瀬 善治,鳥居 万由実,松原 俊太郎武久出版ぶQ出版センターAmazon 「ボーイ・ミーツ・ミシマ」……そうか、ボーイがミシ…

「深い健康」

怪談入門 (平凡社ライブラリー)作者:乱歩, 江戸川平凡社Amazon 9月2日の日記で触れた「人間性という地獄の劫火」と、ペアのように思い出される乱歩の言葉がある。「石子責め、鋸引き、車裂きなどの現実を享楽し得るものは、神か無心の小児か超人の王者かで…

ひたむきな三島由紀夫(2)

幻想小説とは何か: 三島由紀夫怪異小品集 (906;906) (平凡社ライブラリー)作者:由紀夫, 三島平凡社Amazon ……『幻想小説とは何か』の東さんによる解説を読んだら、本来は評論の部が巻頭に来るはずが、版元のアドバイスで今の形になったという。小説篇か戯曲篇…

ひたむきな三島由紀夫(1)

「折ふし夕べにシャーロック・ホームズを思う/これはわれわれに残されたよい習しだ (Pensar de tarde en tarde en Sherlock Holmes es una / de las buenas costumbres que nos quedan.)」とボルヘスは歌った。ならば折ふし夕べに三島を思うことも、われわ…

ボルヘスとパンデミック

殉教 (新潮文庫)作者:由紀夫, 三島メディア: 文庫三島由紀夫の中篇『三熊野詣』に自分の周りをアルコールで丹念に拭きまくる老歌人が出てくる。巷の噂では折口信夫がモデルらしい。むかし読んだときには「えらい神経質な人だな」としか思わず、変な人を見る…

奥様は火星人

遅くなりましたが文フリ弊スペースに来てくださいました皆さま、どうもありがとうございました。これから何回か、文フリで手に入れた本について書いてみようと思います。その第一弾はご存じ噴飯文庫の最新刊H.G.ウェルズ『星の児 生物学的幻想曲』。昭和13年…

アヒルの影ありて

まごまごしているうちにブラックスワンのキャンペーンは終わってしまった模様。残念。それにしてもアフラックといえばアヒルのはずなのになぜブラックスワンなのだろう。中井英夫が何かのエッセイで、 わが面にすこしアヒルの影ありて呑気すぎたる子を魅する…

都知事選に寄せて

宴のあと (新潮文庫)作者:由紀夫, 三島発売日: 1969/07/22メディア: 文庫世は都知事選のまっただなかで、Twitterリアルタイム検索で「都知事」と打つと、怒涛のようにいろんな情報が流れていく。日頃世間と没交渉の生活を送っている拙豚も、つい感化を受けて…

夢と怪談

*夢魔は蠢く 文豪怪談傑作選明治篇 (ちくま文庫)作者: 東雅夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/07/08メディア: 文庫 クリック: 7回この商品を含むブログ (6件) を見る* すっかり夏の風物詩として定着した感のある文豪怪談。気の狂いそうな暑さのさな…

「ポエティック・クラッシュ」

*文学界 2010年 09月号 [雑誌]出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2010/08/07メディア: 雑誌 クリック: 4回この商品を含むブログ (3件) を見る* 文学界九月号に「ポエティック・クラッシュ」という巧緻な短篇が載っている。沢渡と漣という二人の詩人による…

娯楽としての悪意2

愚行録 (創元推理文庫)作者:貫井 徳郎東京創元社Amazon ミステリ、それもいわゆる本格ミステリの犯人を精神異常者に設定するのは、作中で幼児が殺されるのと同じくらいに興ざめなものだ。かの大乱歩も「殺人などしそうもない者が犯人だというのが探偵小説の…

どんな鞄? (番外:ユッキーご乱行の巻)

Yesterday Came Suddenly (Biography & Memoirs)作者:King, FrancisConstableAmazon フランシス・キングの回想録"Yesterday came suddenly"(1993)の発掘に成功。横島昇氏(郡虎彦の英文戯曲集を翻訳された方)の流麗な訳文による『家畜』が最近出たこの特異…

文豪怪談・三島集を巡って4 (回る炭取の巻)

三島由紀夫集 雛の宿―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)作者: 三島由紀夫,東雅夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/09/10メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (16件) を見る 昔むかし、理科の時間には蛙の解剖というものがあった。(今でもあ…

文豪怪談・三島集を巡って3(怪談文体の巻)

三島由紀夫集 雛の宿―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)作者: 三島由紀夫,東雅夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/09/10メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (16件) を見る この話題をいつまでも引っ張るつもりはないけれどもう少し。 とはい…

文豪怪談・三島集を巡って2(現人神の巻)

三島由紀夫集 雛の宿―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)作者:三島 由紀夫筑摩書房Amazon 「家畜人ヤプー」「O嬢の物語」そして「英霊の聲」。これら三作を読むに耐えない書として、まとめて屑篭に放り込むのはまあいいだろう。態度が一貫しているから。しかしどれ…

文豪怪談・三島集を巡って1(言霊の巻)

三島由紀夫集 雛の宿―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)作者: 三島由紀夫,東雅夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/09/10メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (16件) を見る 人の書いた言葉は、その人が死んだ後も残る。運がよければ千年経と…

「それも心々ですさかい」

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)作者: 野村美月,竹岡美穂出版社/メーカー: エンターブレイン発売日: 2007/08/30メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 137回この商品を含むブログ (277件) を見る 浦賀和宏やユヤタンにも劣らぬ鬱展開サーガで読者を愉…

物語のない今

赤朽葉家の伝説作者:桜庭 一樹東京創元社Amazon 個性豊かな登場人物たちが綾なす、物語らしい物語を久しぶりに読んだ。第一部から第三部まで一冊ずつで全三巻、とまでは行かないまでも「楡家の人々」の長さくらいにはこの世界に浸っていたかった。しかし「時…

タルホマニア拾遺録(5) 十六歳の三島、足穂を読む

三島由紀夫 十代書簡集 (新潮文庫)作者: 三島由紀夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (6件) を見る 何を血迷ったか、「三島由紀夫 十代書簡集」なるものをぱらぱらめくってたら足穂が出てきた。 稲垣足穂の「山風…