2003-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『ヴァールブルク著作集7 蛇儀礼』

よくアメリカ文化はせいぜい200年程度の厚みしかないと言われるが、とんでもない、先住民の文化があるではないか。土地の精霊(ゲニウス・ロキ)は、200年や300年の歴史で消え去るほど甘いものではないのだ。それは今でもある種の人々の夢にあらわれ、その眠り…

『世界秘密文学選書』(清水正二郎編・訳)浪速書房 1962.9? - 1965.6?

よしだまさしさんの大丈夫日記を見て仰天。朝一番で教育会館に走り、50冊くらいあったのを根こそぎ買ってきました。やれうれしや! もうガラクタ風雲の方には足を向けて寝られません。どちらの方角かはよくわからないけれど。 この膨大な量の選書を一人で翻…

『デンマーク人の事績』(サクソ・グラマティクス 谷口幸男訳)東海大学出版会 1993.9.30 ISBN:4486012240

黒死館では「丁抹史(ヒストリア・ダニカ)」という書名で言及されている本。いつ読み終えられるかわからないので、とりあえず面白そうな部分を引用せん。(引用文中の()は、原訳文のまま) こうしてゲートヴァーラの方がまず次のように口火を切った。 あなた…

『W氏との対話―フロイトの一患者の生涯』(カーレン・オプホルツァー) みすず書房

*W氏との対話―フロイトの一患者の生涯作者: K.オプホルツァー,Karin Obholzer,馬場謙一,高砂美樹出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2001/09/21メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る* 1972年に著者がW氏=狼男を探し当てた…

『天才建築家ブルネレスキ―フィレンツェ・花のドームはいかにして建設されたか』

『謎の蔵書票』のロス・キングの二冊目の翻訳。てっきりは小説とばかり思って最後まで読んだが、解説を見るとノンフィクションだった。どうりで何か違和感があると思った! 癖のある一人の天才建築家がサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のドームを完成…

『小沼丹作品集』小澤書店 1979.12.10〜

MYSCONのオークション結果 http://www.geocities.com/myscon/myscon4/myscon4_auction.htm を見て切歯扼腕の連続。あの本がたった500円なのか! あの本が1,000円で買えるのか! あの本が5,000円以下なのか! ああ参加しておけばよかった。ああ参加して…

『北方の博士・ハーマン著作選』(川中子義勝訳)沖積舎 2002.3.1

神保町東京堂書店の二階をブラブラしてたらこの本が眼に入り驚愕したなり。こんな本が出ていたのか! この特異な思想家、あるいは荒野に呼ばわる預言者、あるいは狂言綺語を弄する奇人の翻訳が出たことを喜び、あわせて翻訳者・出版社・そしてこの売れそうも…

『遠感術は可能なりや(キャン・テレパシイ・エキスプレン)』(サヴェジ)G.P.Putnam's Sons 1902

場末の古本屋で均一本など漁っていると、まれに黒死館蔵書と同一タイトルの書を発見することあり。何たる奇縁! あるいは黒死館はかつて実在しており、今眼前にあるこの書はその流出本ではなからんか。かような妄想が湧きいずるを如何ともしがたし。 こころ…

今日の神保町

田村書店の100円均一本コーナーにフランス・ミステリのペーパーバックが山のように積んであるなり。リーヴル・ド・ポッシュとかマスク叢書とかコレクシオン・パンチなどあり。作家で言えばピエール・ヴェリ、S.A.ステーマン、クロード・アブリーヌ、ジルベー…

『アルゴノオト あおいの日記』(井亀あおい)葦書房

ということで、葦書房の一押し本に逃げるなり。葦書房から一冊を選べと言われたら、拙豚は夢野久作の本よりもこちらを選ぶ。17歳の女の子の日記なり。例えばブリジット・フォンテーヌの「ラジオのように」が好きな人ならば必ずや座右の書とならん。もう20年…

『文化ファシズム 緊急Liveレポート』(久本福子) エディター・ショップ 2001.6.8

絶望書店主人が、熱烈推薦している本。つい煽りに乗って拙豚も読んでしまった。昨日読んだモリスの社会主義の本の後だと、また独特の感慨あり。本というのはやはりウィリアム・モリス的に(日本の場合、それは「コミケ的に」というのとほとんど同義だが)作…

『ジョン・ボールの夢』

ジョン・ボールの夢 (ウィリアム・モリス・コレクション)作者:ウィリアム モリス晶文社Amazon 昨日に引き続きモリスを読む。本書解説によるとジョン・ボールは中世イングランドの農民蜂起を指導した実在の人物。社会主義に凝っていた当時のモリスにとっては…

『輝く平原の物語』

3月6日の日記ではエラソーに書いたが、実は拙豚はウィリアム・モリスはあまり読んだことがないのであった。せめてもの罪滅ぼしに、今日は「輝く平原の物語」を読むなり。 平和な国クリーヴランドに突如現れた海賊船は、一人の美しい乙女をさらっていった。婚…

ドイツにおける日本マンガ

黒書刊行会(泡沫の日々)3月10日によると、日本のマンガがドイツで大人気の由。でも発行点数からいうと、たぶんフランスの方が多いと思う(Amazon.frとAmazon.deを比較したときの印象)。ちなみにこれが2003年2月のドイツにおける売り上げチャートなり。拙…

『この私、クラウディウス』

急逝された多田智満子氏の最後の訳業、ローマ帝国第四代皇帝クラウディウスがおのれの一生を語る、という体裁の歴史小説なり。しかれど血湧き肉踊る歴史小説を期待せし者は肩透かしをくらうならん。小説らしき作為はまるでなし。時に異常なる出来事を描写し…

『不死鳥の剣 剣と魔法の物語傑作選』

この手の物語にはあまり馴染がない。集中の作品はすべて初読。集中のベストは『ヘルズガルド城』だろう。C.L.ムーアのストーリーテリングが鮮やかなり。小道具の「皮の小箱」がラストで光る、その使い方のうまさには、一瞬の沈黙の後、思わず拍手したくなる…

『時間は実在するか』

マクタガートの時間非実在論を懇切丁寧に解説し、それを論破しようとした本。中島義道の本でこの怪論を知って以来、いったいどう考えれば「時間は存在しない」なんて結論に達することができるのか不思議でたまらず、常に頭の隅にひっかかっていたが、この本…

『神の植物・神の動物』(ユイスマンス・野村喜和夫訳)

神の植物・神の動物―J.K.ユイスマンス『大伽藍』より作者:ジョリ=カルル ユイスマン八坂書房Amazon この本はユイスマンスの大長編「大伽藍」から第10章(神の植物)と第14章(神の動物)を抜粋して一冊にまとめたもの。ちなみに、これらの章は出口裕弘訳の「…

『ビリッヒ博士の最期』

ビリッヒ博士の最期作者:リヒャルト ヒュルゼンベック未知谷Amazon チューリッヒ・ダダの立役者ヒュルゼンベックが1920年に発表した、ちょっとクラニー小説を思わせる自己処罰物語。ラップのようにせわしなく言葉が紡がれていき、まるで死に際のパノラマ視現…

『評伝ピエール・ルイス エロスの祭司』

エロスの祭司―評伝ピエール・ルイス作者:沓掛 良彦水声社Amazon 数年前、曽根元吉氏が逝去されたすぐ後、蔵書の一部が古本屋に流れたことがあった。懐の許す限り買いあさったが、その中にピエール・ルイス関連書が結構あって、以来この作家には一方ならぬ親…

幻想文学 66号

まだパラパラめくってみた程度。中島晶也氏の「超自然的恐怖原理主義」を読めば、氏がなぜ「紙葉の家」を高く買わないのかなんとなく分かる。氏の論考からラブクラフトの言を孫引きすると「恐怖小説は…その作品の一番世俗を脱した部分に書かれている感情の度…