英国怪奇党

デ・ラ・メアの目

デ・ラ・メアの『トランペット』を訳者の和爾桃子さんからいただいた。どうもありがとうございます。マラルメの「メ」はマナコなり、と誰かが言ったそうだが、デ・ラ・メアもやはり目の人である。その小説にはストーリーを統御しようとする作者の手があまり…

『迷いの谷 平井呈一怪談翻訳集成』

藤原編集室の『本棚の中の骸骨』ですでに公表されているとおり、『迷いの谷 平井呈一怪談翻訳集成』の解説を書きました。これは『幽霊島』『恐怖』に続く平井呈一怪談翻訳集成の第三弾です。少し前に東雅夫さんの解説による『世界怪奇実話集 屍衣の花嫁』も…

『アーモンドの木』

楽しみにしていた和爾桃子さん訳のデ・ラ・メアが出た。さて今回、和爾さんはデ・ラ・メアをどう料理しただろう。この「料理する」は単なる決まり文句ではなくて、和爾さんの翻訳からは文字どおり原文を包丁でさばいているような感じを受ける。この包丁さば…

星とハートリー

かぼちゃの馬車(新潮文庫)作者:星 新一新潮社Amazon まだ星新一を読んでいる。星新一もまた夏の読み物だと思う。扇風機と蚊取り線香がよく似合う。『かぼちゃの馬車』の最終話はL.P.ハートリーのある短篇と発想が同じなので驚いた。共通の願望でもあったの…

『幻想と怪奇』の思い出

メディア: この商品を含むブログを見る 半世紀前の雑誌『幻想と怪奇』の傑作選が出るという。なんという素晴らしい企画ではないか! 今の人には『幻想と怪奇』は、われわれにとって『新青年』がそうだったような、名のみ聞く伝説の雑誌と化しているのではと…

『幽霊島』の刊行に寄せて

幽霊島 (平井呈一怪談翻訳集成) (創元推理文庫)作者:A・ブラックウッド他東京創元社Amazon あなたが一流のレストランに行ったとしよう。コースを一通り堪能し、コーヒーを啜りながら、「ああ美味かった」と味を反芻しているとしよう。そんなときシェフが不意…

エイクマン?

カオスノート作者:吾妻ひでおイースト・プレスAmazon吾妻ひでおを読み始めたのは人より遅れていて、積極的に注目しだしたのは『陽射し』がハードカバーで出たあたりからではないかと思う。これまで読んだうち一番よかったのは『宇宙放浪』。シェクリーに代表…

Lyrical Ballads

*郵便局と蛇: A・E・コッパード短篇集 (ちくま文庫)作者: A.E.コッパード,Alfred Edgar Coppard,西崎憲出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/09/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (10件) を見る* コッパードはラブクラフトのように神話を創るわけで…

行ったきりにならぬために

人間和声 (光文社古典新訳文庫)作者:アルジャーノン ブラックウッド光文社Amazon おお、気がつけば『ダゴベルト』発売からもう一月近くも経っている! だが今宵は「ダゴベルトいろいろ」の続きはおいといて、光文社古典新訳文庫の新刊『人間和声』のことを語…

ポドロ島初版完売?

*ポドロ島 (KAWADE MYSTERY)作者: レズリー・ポールズハートリー,L.P. Hartley,今本渉出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2008/06メディア: 単行本 クリック: 29回この商品を含むブログ (25件) を見る* 現在アマゾンで購入不能。すごい売れ行きですね。…

LPHの耽美な生活(2) 白鳥虐殺者の巻

ポドロ島 (KAWADE MYSTERY)作者:レズリー・ポールズ ハートリー河出書房新社Amazon 「ポドロ島」には理由らしい理由もなく動物を殺す人が出てくるが、その登場人物に似た行動をとるハートリー自身のエピソードがフランシス・キングの回想記に出てくる。 他の…

L.P.ハートリーの耽美な生活(1)

ポドロ島 (KAWADE MYSTERY)作者:レズリー・ポールズ ハートリー河出書房新社Amazon すでに相当むかしの話になるが、ロバート・エイクマンの本邦初短編集が今本渉氏の手により翻訳されたのは、この手の小説の愛好者にとっては稀に見る幸運ではなかったかと思…

エイクマンの未発表短編

今日届いたWormwood最新号の巻頭は、ロバート・エイクマンの未発表短編The Fully-Conducted Tourだ。やでうでしや。 物語は一人称で書かれ、エッセイとも小説ともつかないこんなノンシャランな調子ではじまる。「わたしはこれまでとてもたくさんの奇妙な出来…

『怪奇礼讃 』

なおもポツポツ読んでいます。ホッグ「地獄への旅」・・・この人の作品は(「悪の誘惑」もそうだったが)、屋外が舞台であっても、なんとなくそこが屋外という感じがしない。外界の描写が芝居の書割みたいなのだ。この、ある種閉塞感というか、ちょっと不思…