久生十蘭

『真夜中の伝統』と『金狼』

数人の男女に文面が同じ手紙が届く。「これこれの時間にどこそこに来てください」と書いてある。そして行かざるをえなくなるようなことも書いてある。たとえば「あなたは遺産の相続人になりました」とか、あるいはある種の恐喝であるとか。そのように集めら…

怪作コレクション堂々開幕

まずは帯に目をみはる。どなたが編集を担当されたかは存じあげないが、「天下のシブサワが敬意を表しているのだからお前らも皆こぞって敬意を表するがよい!」と言わんばかりの帯ではないか。もちろん不肖わたくしも敬意を表するにやぶさかではない。はるか…

失われた『魔都』断片

ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた作者:鏡 明フリースタイルAmazon 鏡明の『ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた』を読んでいたら、十蘭の『魔都』の話題が出てきた。この本の中には「マンハント」の編集長だった中田雅久へのインタビューが入…

「記憶の暮方」について(2)

十字街―久生十蘭コレクション (朝日文芸文庫)作者:久生 十蘭朝日新聞社Amazon 「記憶の暮方」からいやおうなしに連想されるのが橋本治の久生十蘭論「遁走詞章」だ。この評論では記憶違いというものに対して、そしてそれと歌(リズムを持つ文章)との関係につ…

栄地四囲

パリ点描 (講談社学術文庫)作者:ジャネット フラナー講談社Amazon ジャネット・フラナー(1892-1978)は生涯のほとんどをパリですごしたアメリカ人の作家。『ニューヨーカー』誌のパリ在住特派員として、1925年から1939年にかけて文壇・画壇・劇壇その他もろ…

近況その他

某同人誌は法王が実権を握り編集長はヨーロッパに亡命との噂。権力闘争テラオソロシス。はたして団長の運命やいかに。どちらかというと団長の味方だ。鮎川哲也未収録推理小説集 『夜の演出』が届きました。表紙は喜国画伯。開巻いきなり妙齢の美女が縛られ鞭…

十蘭対猛之進

久生十蘭「従軍日記」作者: 久生十蘭,小林真二出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/10/11メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 11回この商品を含むブログ (22件) を見る たいへんに貴重な本が出た。十蘭が昭和十八年に、海軍報道班員として…