足穂

断念棄却遮断

「書くことは断念することであり、編集は捨てることであり、出版は閉じ込めること」この言葉がピンとこない人は、ぜひ『足穂拾遺物語』を開いてみてほしい。いかにこの言葉が血肉化されているかがわかるはずだ。足穂拾遺物語作者: 稲垣足穂出版社/メーカー: …

新青年堀辰雄

羽ばたき 堀辰雄 初期ファンタジー傑作集作者:辰雄, 堀彩流社Amazon この本は堀辰雄の初期作品からファンタシー味のある小品を二十二篇集めたものです。今「肺病病みの軽井沢文学なんか読んでられるかいな」と思ったそこのミステリファンのあなた、あなたに…

Casket de moire, / Quéquette d'ivoire,

* きょうは銀座の画廊まで行ってきた。とある閨秀同性愛詩人にちなんだ、すみれ色の小さな容器(Casket)が450箱限定で売りだされると聞いて。 * 余ガ容器ヲ註文シタノデ、御身ハ気ニ病ンデイルト云ウノダネ。然シ、若し容器ガ既ニ出来上ッテイルノナラ、御…

Comme à la Taroupho

*ポータブル文学小史作者: エンリーケ・ビラ=マタス,木村榮一出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2011/02/15メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 9回この商品を含むブログ (22件) を見る* ポータブル文学とは何か。真偽さだかならぬ噂によれば、前世紀にはそ…

新しい宇宙論

*フェヒナー博士の死後の世界は実在します作者: グスタフフェヒナー,服部千佳子出版社/メーカー: 成甲書房発売日: 2008/09/02メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (10件) を見る* 袋小路に陥り沈滞の極にあった未来派運動…

近況

田村書店二階ではここ最近ずっとドイツ語の面白そうな本が出続けている。深田甫旧蔵書がまだ底をついていないのだろうか、それとも他のどなたかが処分されたのか―― 今日はルドルフ・アレクザンダー・シュレーダー作品集の端本を500円で見つけてすごくうれし…

タルホ前夜祭への誘い

ダンセイニとくれば当然(?)つぎはタルホですが、2008年1月20日(日)西荻にて怪しげな祭があるようです。詳細はここやここで告知されています。「タルホ祭り」と聞いたときには、みんなフンドシ一丁になってひたすらビールを呑む催しかな? とも思いまし…

ジョン・コリアは難しい7(引越し魔の巻)

コリアと足穂の共通点はいくつかあるが、そのひとつはその風来坊性だ。 足穂の場合は『東京遁走曲』他の自伝的作品が大量にあるためにその足取りはわりと細かいところまで追えるが、コリアは自分のことは作品に直接書かず、いったいどうなっているのかもうひ…

タルホマニア拾遺録(5) 十六歳の三島、足穂を読む

三島由紀夫 十代書簡集 (新潮文庫)作者: 三島由紀夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (6件) を見る 何を血迷ったか、「三島由紀夫 十代書簡集」なるものをぱらぱらめくってたら足穂が出てきた。 稲垣足穂の「山風…

タルホマニア拾遺録(4) 親殺しのパラドックスの巻

マイナス・ゼロ (集英社文庫 141-A)作者:広瀬 正集英社Amazon タイムマシンで未来(あるいは過去)へ行った先で出会った人が、実は自分自身の将来(あるいは過去)の姿であった。これはタイムトラベルもののSFでよくある筋だが、タルホ作品にも、これと似た…

タルホマニア拾遺録(3) マキノ・ツバキ・タルホ聖三角形の巻

牧野信一全集〈第3巻〉大正15年9月~昭和5年5月作者: 牧野信一出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2002/05メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (3件) を見る 筑摩の全集に入っているタルホ作品のなかで、一篇だけ尻切れとんぼ(未完)のまま収…

タルホマニア拾遺録(2) 栴檀は双葉より爆発の巻

牧野信一全集〈第6巻〉昭和10年4月~昭和11年7月作者: 牧野信一出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2003/05メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 昭和十三年、困窮の極にあったタルホに突然Saintの啓示がやってくる。 石鹸を使う…

タルホマニア拾遺録(番外・ツンデレの巻)

「別冊新評 稲垣足穂の世界」が見たくなり神保町に行く。羊頭書店で見つけたがパッキングされてて中は覗けず。やむなく買う。思ったより高くはない。 ついでに局所的に有名なツンデレさんのいる珈琲店に寄ってみた。今日は別にツンでもデレでもなかった。

元祖バブルクンド

ダンセイニの「バブルクンドの陥落」は、その凝った構成と文章によって一読忘れがたい作品だ。伝説の市バブルクンドを一目見んものと、「私」は友とともに沙漠を南へ向う。途上で行き交った、南から来た第一の旅客は、「私」たちにバブルクンドとその王ネヘ…

三日月を求めて

去年の冬コミで出たPEGANA LOST Vol.11には石野重道の作品が二編復刻されている。稲垣足穂の関西学院時代からの友人であり、ともに佐藤春夫門下であった彼の名は、タルホファンには先刻お馴染みであろう。石野の名が出てくるタルホ作品は、二、三には留まら…

"The Turn of the Screw"と金玉の謎 

ねじの回転 -心霊小説傑作選- (創元推理文庫)作者:ヘンリー・ジェイムズ東京創元社Amazon 「蒸気にはスコロクというもんが付いておる。それがないと船は走らんのや」 私に云い聞かせながら、彼は私が描いた汽船のおしりに、即ち水面下に隠れているはずの部分…

『稲生モノノケ大全 陰ノ巻』を読む前に(1) ISBN:4620316490

「稲生モノノケ大全」が待ちどおし。本来ならばこの手の感想は読後に書くのが普通なれど、待ちきれなさのあまり、出版前に書いてしまうなり。マー賑やかし、前夜祭のたぐいと思ってくださればよし ところで拙豚が「稲生物怪録」を知ったのは稲垣足穂経由であ…