2003-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『恐怖』(モーリス・ルヴェル)

「ルヴェル未訳長編を読む」シリーズ第一弾は1908年に発表された「恐怖(L'epouvante)」。それにしてもこれは、長い間埋もれていたのも無理はないと思わせるほどの変な話だ。この長編を正当に評価できるのは、もしかしたら異形のミステリが軒を競うように次々…

『田舎の事件』

田舎の事件作者:倉阪鬼一郎幻冬舎Amazon なんと言うか悪性腫瘍の摘出手術をライブで見ているような感じ。身につまされすぎてとても笑うどころではない。ああ自分はこんな風にならずに今まで生きてこれてよかったなあとつくづく思う。

『死が招く』(ポール・アルテ)ISBN:4150017328

「この小説を読み終わったら、どんな人でも絶対にアルテ・ファンになっているだろう」と本書の帯に書いてあった。では拙豚も、これを読んだらアルテファンになるのだろうか、と思って読んでみました。ちなみに先に出た「第四の扉」ISBN:4150017166。 結論か…

『夜の冒険』 (S.A.ドゥーゼ 小酒井不木訳)

西の古本女王と呼ばれる人の処分本である。毎度のことながら「いったいどこでこんな珍しい本をこんなに安く見つけてくるんだ〜」と感嘆することしきり。 この長編は「スミルノ博士の日記」である種(というか日本でのみ)有名なスウェーデンの作家サミュエル…

ジルベール・ルリィの詩集

ですぺら通信http://hpmboard1.nifty.com/cgi-bin/bbs_by_date.cgi?user_id=NBG01107の6月20日の書き込みで、渡邊一考氏は「人に本を貸すときはなくなるものと覚悟しています。ジルベール・ルリィの詩集も戻りませんでしたし、数十冊の書冊が消えました。」…

『スペイン黄金世紀演劇集』(牛島信明編訳) ISBN:4815804648

恥ずかしながら某巨大掲示板に首までドップリと漬かっている毎日である。病膏肓に入り、とうとう古典演劇のセリフまでが2ちゃんのレスの応酬に見えてきた。たとえば以下のようなくだりとか(ドン・アロンソ(アロ)はスペインの貴族、モスカテル(モス)はそ…

『無言劇』

無言劇作者:倉阪 鬼一郎アドレナライズAmazon 内田百閒にルイス・キャロルが憑依して書いたようなミステリである。作中延々と続く「片付かない会話」は百閒ファンにはたまらぬと思う。Weird World6月6日によると、この作品は もう一つ、「2003本格ミステリ・…

『聖ペテロの雪』(レオ・ペルッツ) ISBN:1559700831

ペルッツの現代ものの最高傑作。この作品は天衣無縫というか、とにかく縫い目が見えない。そして恐ろしい緊迫感で物語が前へ前へと進んでいき、途中で本を置くことは難しい。 物語は内科医アムベルクが病院で目覚めるところから始まる。最初、彼の記憶はうま…

『ホラー・ジャパネスクを語る』(東雅夫・編) ISBN:4575234699

津原泰水氏との対談での、東雅夫氏の次の指摘には目から鱗が落ちた。 『妖都』における日本神話やマライ=ポリネシア神話のバックグラウンドに関しては、文庫版に山内秀朗さんが素晴らしい解説を寄せていらっしゃいましたよね。そういう汎アジア的に拡がって…

モーリス・ルヴェル重版を寿ぐ

…創元推理文庫が重版したのが目出たいというのは、世も末という感じもするが、そこはそれ。重版を記念して拙豚日記も、ペルッツが一段落したら、『モールス・ルヴェル未訳作品を読む』シリーズをやる予定。乞御期待。ところで、これを読んでいる読者諸賢は「…

『どこへ転がっていくの、林檎ちゃん?』

この奇妙なタイトルはロシアの流行歌(?)から取られているらしい。1931年1月、この本を読んで感動した、当時若干22歳のイアン・フレミングは作者ペルッツにあてて次のようなファンレターを書いている。007シリーズで脚光を浴びる20年ほどまえの話である。 …