2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

娯楽としての悪意2

愚行録 (創元推理文庫)作者:貫井 徳郎東京創元社Amazon ミステリ、それもいわゆる本格ミステリの犯人を精神異常者に設定するのは、作中で幼児が殺されるのと同じくらいに興ざめなものだ。かの大乱歩も「殺人などしそうもない者が犯人だというのが探偵小説の…

娯楽としての悪意 malice for pleasure

神のロジック 人間のマジック (文春文庫)作者:西澤 保彦文藝春秋Amazon 西澤作品はシリーズキャラクターものより単発長篇群のほうがずっと面白い。この『神のロジック・人間のマジック』は中でも好きで、トリックは一発勝負、かつプロットも単純なのにもかか…

平井功のポー論

噂のりきマガジン(仮)はすでに入稿済みという噂のりき氏。その氏が影のブレーンとなっているとおぼしき「日本の古本屋メールマガジン」が平井功の貴重なポー論を掲載している。(紹介文、第1回、第2回) ただこの文章は未完であるうえ、どういうわけか校…

見えるが見えない骸骨

一月ほどまえに出たレヴォカシオン最新号に「賓客」(カチュール・マンデス)という面白い短篇が載っている。訳者は頼まれた翻訳をすっぽかしてパリに逃げたという噂の(あくまで噂にすぎないけれど)T氏。齋藤磯雄のリラダンを思わせる高雅な文章は、ひとと…

『Oの物語』メモ4:幸福と快楽と

完訳Oの物語作者:ポーリーヌ・レアージュ学研プラスAmazon 前回のメモで不用意に「マゾヒズム」という言葉を使ってしまったが、実はこの言葉は『Oの物語』を語るうえで絶対に使ってはいけない言葉だった。すでにしてジャン・ポーランが序文で、マゾヒズムと…

『Oの物語』メモ3:Unio Mystica

完訳Oの物語作者: ポーリーヌ・レアージュ,高遠弘美出版社/メーカー: 学習研究社発売日: 2009/07メディア: 単行本 クリック: 44回この商品を含むブログ (10件) を見る* 『Oの物語』第二部の冒頭に序文のような形で置かれた「恋する娘」という文章の終わり近…

『Oの物語』メモ2:プラトニスム

完訳Oの物語作者:ポーリーヌ・レアージュ学研プラスAmazon ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムは自他ともに認めるウルトラ女嫌いで、最後の長篇『大失敗』(1987)はあまりの女性蔑視描写のため、英語版では文章に一部削除がされているという。自然ポルノ…

『Oの物語』メモ1:ヴァリアントマニア

完訳Oの物語作者: ポーリーヌ・レアージュ,高遠弘美出版社/メーカー: 学習研究社発売日: 2009/07メディア: 単行本 クリック: 44回この商品を含むブログ (10件) を見る* 『Oの物語』第一部は二つの書き出しがあって読者をとまどわせる。ちょうどジャズミュー…

『抒情的恐怖群』頌

抒情的恐怖群作者: 高原英理出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 2009/04/17メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 18回この商品を含むブログ (12件) を見る* 誰だか思い出せないのだが、ある高名な作家がこう書いていた。クモやゲジゲジなどの他愛ないもの…