ロナルド・ファーバンク

防腐剤無添加

『アーモンドの木』における和爾さんの訳文を爽快にしているのは、たとえば、「へスパー号ネタはさんざん出尽くした感がある」の「~ネタ」とか、「祖父の資産はほぼ溶けてしまい」の「(資産が)溶ける」のような、新しめの表現の躊躇ない使用だ。古典にこ…

黄色の研究

外国語の色の名は、訳すのが簡単なようで案外難しい。たとえば"purple"。「紫でしょ。ディープ・パープルっていうじゃない」と言われる方もいるだろう。ところがディープでないただのパープルは、日本語でいう紫よりもっと赤みがかった色らしい。とりわけ古…

フィレンツェへ逃れる同性愛者たち

フィレンツェ 繊細にして悩ましき街 (Writer & Cityシリーズ)作者:デイヴィッド レーヴィットDHCAmazon イタリアつながりでもう一冊。わずか180ページの瀟洒な本だが、中身は外見とウラハラにどろどろに濃い。こういうのは先入感なしに読んだほうが確実に楽…

ロナルド・ファーバンク見参!

オデット作者:ロナルド・ファーバンク,山本 容子発売日: 2005/12/14メディア: 単行本柳瀬尚紀の素晴らしい翻訳でロナルド・ファーバンク(=「人工皇女」を書いた人)が出た! これを快挙と言わずして何と言おう。しかも全ページに山本容子のカラーイラスト…

ロナルド・ファーバンク「人工皇女」

単行本で60ページあまりの短い長篇。なんだか中絶作のような感じもする。 「未来のイブ」みたいな、機械人形が活躍する話をタイトルから想像したがそうではなかった。たぶん「アーティフィシャル(人工的)」という言葉は、例えば三島由紀夫を指して「人工的」…