2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『九人の偽聖者の密室』

将来自分も「奇想天外の本棚」を企画するようになったときのために(妄想)、何かの参考になるかと読んでみた。作者のバウチャーは1911生まれで、この『偽聖者』は1940年の出版だから、バウチャーが二十歳代で書いた小説になる。なるほど作家やら警部補やら…

S蔵書との照合

「プヒプヒ版・奇想天外の本棚」の中で、澁澤龍彦蔵書と共通しているものはどれくらいあるだろうと思って調べてみた。雨の降る朝にはついこういうことがしたくなる。結果は十二冊中五冊。ただしベレンの本で澁澤書庫にあったのは『サバトの女王』ではなく『…

タレコミあり

昨日のブログを読んでくださった方からさっそくタレコミがあった。国書刊行会から近々アーサー・マッケンの自伝が出るそうだ。それも南條竹則氏の訳で!おそらく今頃は南條氏のもとに不幸の手紙が矢のように届いていることだろう。『あくび猫』によれば「あ…

プヒプヒ版・奇想天外の本棚

国書刊行会パンフレットによれば山口雅也氏が「製作総指揮」という、「奇想天外の本棚」があちこちで話題を呼んでいるようです。内容に関しては三門優祐氏のブログ深海通信 はてなブログ版が整理されていて便利です。こんなふうに実現可能性無視で好き勝手に…

『烙印』

今月の宇陀児第二弾も読み応えがあった。強いて集中のベスト3を挙げるとすれば以下のようになろうか。「決闘街」——良心の呵責からおかしくなりかけている二人が決闘を望みながら果たせず、やり場に困った不完全燃焼の感情が、ふとした偶然をきっかけにとん…

『本の雑誌10月号』

『本の雑誌』十月号の特集は「あなたの知らない索引の世界」。そこに「この本の索引がすごい!」という読者アンケートがある。そこでまたもやエゴサーチの鬼と化し、「ドレドレ誰か『記憶の図書館』を挙げてくれてるかな」と淡い期待とともに読んだ。だが当…

防腐剤無添加

『アーモンドの木』における和爾さんの訳文を爽快にしているのは、たとえば、「へスパー号ネタはさんざん出尽くした感がある」の「~ネタ」とか、「祖父の資産はほぼ溶けてしまい」の「(資産が)溶ける」のような、新しめの表現の躊躇ない使用だ。古典にこ…

『アーモンドの木』

楽しみにしていた和爾桃子さん訳のデ・ラ・メアが出た。さて今回、和爾さんはデ・ラ・メアをどう料理しただろう。この「料理する」は単なる決まり文句ではなくて、和爾さんの翻訳からは文字どおり原文を包丁でさばいているような感じを受ける。この包丁さば…

同人誌丸出し

最近はDeepLも改善されてきて、すくなくとも徳井や山里が「そうですね」「そうですね」と無意味な相槌を打つことはなくなった。しかしあいかわらず珍妙な翻訳を返してくることに変わりはない。近来の傑作はこれ。 Es scheine sich um einen ganzen Klüngel g…