内田百閒

六分の狂気四分の熱

文豪怪奇コレクション 幻想と怪奇の夏目漱石 (双葉文庫)作者:夏目 漱石双葉社Amazon この前の三島由紀夫に続いて、金沢にあるといわれる秘密基地からまたまた驚愕の文豪アンソロジーが放たれた。この本を開いてすぐ感じられるのは、「馥郁」という言葉を使い…

片付かない気持ち

深泥丘奇談 (MF文庫ダ・ヴィンチ)作者:綾辻行人メディアファクトリーAmazon ミステリ愛好家の端くれとしてはちょっと恥ずかしいことかもしれないのだが、綾辻行人氏の作品のなかで一番好きなのはこの『深泥丘奇談』だ。少し前に『百鬼園百物語』のことを書い…

半睡の百物語

百鬼園百物語: 百けん怪異小品集 (平凡社ライブラリー (789))作者:内田百けん平凡社Amazon Telephoneの最初のTが欠けてelephoneになっている。おお、elephone=erehwon! このnowhereの逆つづりほど、百間を端的に示すものがあるだろうか。東京駅の食堂、有…

ガントレットやあい

オルガンの文化史 (復刊選書)作者:赤井 励青弓社Amazon 内田百閒の愛読者ならばきっと、「エドワード、ガントレット、エドワード、ガントレット、ガントレットやあい」と悪童どもの囃したてる声が耳のどこかに残っていることだろう。ところがこのガントレッ…

The Great Return

下町の迷宮、昭和の幻作者:倉阪 鬼一郎実業之日本社Amazon 「いやあクラニーはやはり初期作品が一番良かったねえ!」「本邦唯一の怪奇小説家はどこへ行ったのだ」などと言う人に一番読んでもらいたい短編集だ。ここには大いなる来復がある。クラニー作品系列…

マッケンの失われた草稿

火星の運河 (角川ホラー文庫)作者:江戸川 乱歩角川書店Amazon 乱歩の一側面をうまく切り取ったアンソロジーである。この本で見られる乱歩は「理知的探偵小説」を目指した偉大な先駆者ではないし、巷間誤解されたところのエログロ三昧親父でもない。それでは…

『無言劇』

無言劇作者:倉阪 鬼一郎アドレナライズAmazon 内田百閒にルイス・キャロルが憑依して書いたようなミステリである。作中延々と続く「片付かない会話」は百閒ファンにはたまらぬと思う。Weird World6月6日によると、この作品は もう一つ、「2003本格ミステリ・…