吉田健一

『近代スピリチュアリズムの歴史』

新版 近代スピリチュアリズムの歴史 心霊研究から超心理学へ作者:三浦清宏国書刊行会Amazon 皆さんは「酷暑商法」というのを御存知だろうか。猛暑が続いて人々の脳みそがいい按配に溶けはじめるころ、特に名を秘す某版元は、それを狙ったように変な本をババ…

吉田訳ポーふたたび

悪漢と密偵さんのツイート(正確にいえば藤原編集室のリツイート)で、吉田健一訳ポーが中公文庫の一冊として出ることを知る。これは近来にない快事だ。世間もようやく吉田訳ポーの凄さに気づいたかムハハハハという感じである。ポー一流の沈鬱かつ淀みない…

続続吉田訳ポー

吉田健一訳ポーの特徴を見るためには、おそらく「アモンティラドの樽」の最後の一文が最適ではと思う。これの原文は For the half of a century no mortal has disturbed them. In pace requiescat! これを田中西二郎はこう訳した。 あれから半世紀、何者も…

続吉田訳ポー

ポーの文章は重い石を積み重ねて城壁を作っていくような感じで、内容はともかくその文体が好きか嫌いかと問われると、まああれだね、ちょっと答えにくいところがある。 むかしむかし、松山俊太郎翁の講義、というか放談がまだ美学校で行われていたころ、佐々…

史上最強

東雅夫さんのこのツイートにはわが意を得た思いがする。「史上最強」というのはまったく同感。「中学時代、これでポーにハマりました」というのもまったく同じ。「赤き死の仮面」がにわかに注目をあつめるポオには、戦前から多くの訳書がありますが、一巻本…

水のなかの水のように

失われた時を求めて 4 第二篇「花咲く乙女たちのかげにII」 (古典新訳文庫)作者:プルースト光文社Amazon 待望の光文社古典新訳文庫版『失われた時を求めて』の新刊が出た。高遠弘美氏の訳はプルーストの〈理屈っぽさ〉が前面に出ているのがうれしい。ミステ…

河童をこえて狐のふもとまで

奇談異聞辞典 (ちくま学芸文庫)筑摩書房Amazon 「お」の部がはじまってまもなく、鸚鵡石を越えたあたりで、「大あわび」「大蚊柱」「大亀」「大鯉」「大鳥」「大鳥人を掴む」「大入道」「大猫の怪」「大鼠」「大むかで」「大山伏」とやたらに大きなものが続…