ラヴクラフト

裏表紙の叙述トリック

日本では本の帯によく「〇〇氏絶讃!」などという宣伝文が書かれてある。英米のペーパーバックでそれにあたるのが裏表紙の引用文である。たとえば「驚天動地の傑作!(ニューヨークタイムズ)」とかそんな感じで書評の一部が引用されている。しかしこれが実…

マッケンの事

藤原編集室のツイートによれば、平井呈一訳マッケン短篇集が近々創元推理文庫から出るという。やれうれしや。同文庫『怪奇小説傑作集1』で「パンの大神」を読んだときの衝撃は今でも忘れがたい。「恐怖は人類最古の感情である」というラヴクラフトの言葉を…

時間からのポー

ポーといえば気にかかることが一つある。ツイッター界隈を流れる噂によれば、ラヴクラフトの "Colour out of Space" を「宇宙からの色」とか、"Shadow out of Time" を「時間からの影」と訳している本があるらしい。ツイッターというのはデマ生成装置みたい…

わが創元推理文庫神7(その5)

創元推理文庫は全集の宝庫でもある。とくに和物探偵小説の分野でそれは顕著で、『土屋隆夫推理小説集成』とか、『中村雅楽探偵全集』とか、『天藤真推理小説全集』とか、『渡辺温全集』とか、『大坪砂男全集』とか、はては『高城高全集』とか、正気の沙汰と…

ラヴクラフトより異形

不機嫌な姫とブルックナー団作者:高原 英理講談社Amazon 面白かった。一気に読んだ。一般的にいって、「生前は一握りの崇拝者にしか理解されなかったが、死後に評価が高まり、今では古典とみなされている」といったパターンは、文学史や他の芸術の歴史にあま…

待望の書

*文学における超自然の恐怖作者: 大瀧啓裕,H.P.ラヴクラフト出版社/メーカー: 学習研究社発売日: 2009/09メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 562回この商品を含むブログ (16件) を見る* かつてわが稚き頃、『怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫 501-3)』と…

あるLegitimist(正統主義者)のこと

文学における超自然の恐怖作者:大瀧 啓裕学研プラスAmazon 「人類の最も古く最も強烈な感情は恐怖であり、恐怖のなかで最も古く最も強烈なものは未知なるものの恐怖である」――「文学における超自然の恐怖」冒頭の有名な一節だが、こういう物言いはどんなもの…

『ヴァールブルク著作集7 蛇儀礼』

よくアメリカ文化はせいぜい200年程度の厚みしかないと言われるが、とんでもない、先住民の文化があるではないか。土地の精霊(ゲニウス・ロキ)は、200年や300年の歴史で消え去るほど甘いものではないのだ。それは今でもある種の人々の夢にあらわれ、その眠り…