これは前にも書いたかもしれないけれど、連載小説をリアルタイムで読んでいく楽しさはまた格別である。というのは、次の号が出るまで、これからストーリーがどう展開していくかをノンビリ考える時間があるから。
たとえばほら、「読者への挑戦」がある推理小説ってあるじゃないですか。でもいくら挑戦されても一か月考えることはありえない。しかしこれが連載だといやでも一か月待たされる。ましてや『紙魚の手帖』は隔月刊である。これからどうなるのかな……と楽しみに待つ時間はたっぷりある。
思い起こせばもう何十年か前、『幻影城』に泡坂妻夫の『湖底のまつり』が連載されていたころ、次の号が出るまでのあいだに「ああかなこうかな」といろいろ考えて作者のたくらみを見破れたことがあった。もし単行本で一気に読んでいたらそんなことはとうてい不可能だったことだろう。