2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『幻想と怪奇』の思い出

メディア: この商品を含むブログを見る 半世紀前の雑誌『幻想と怪奇』の傑作選が出るという。なんという素晴らしい企画ではないか! 今の人には『幻想と怪奇』は、われわれにとって『新青年』がそうだったような、名のみ聞く伝説の雑誌と化しているのではと…

外国語内外国語

ギリシャ棺の謎【新訳版】 (創元推理文庫)作者: エラリー・クイーン,中村有希出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2014/07/30メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る 外国語で書かれた小説の中に、別の外国語が入っていることがある。たとえばエラ…

篠沢教授のチンチンチン

今回の『イヴ』の翻訳で一番の難関だったのが冒頭のソネットの翻訳である。「だった」とつい過去形を使ってしまったが、初校ゲラ時点ではあまり決定稿という感じはしない。とはいえ『ジャーゲン』冒頭にある謎の五行詩ほどは難しくはないと思うから、ここで…

最後的対話

中国の本もずいぶん手に入れやすくなった。なにしろアマゾンでぽちっとするだけでいいので止められない止まらないである。装丁もひところにくらべればずいぶんと垢ぬけてきたと思う。で、最近買ったのがこの『最後的対話』の二冊。この本は英独仏西版がすで…

全部買ってもいい

東京創元社さんから60周年記念ブックケースをいただきました。どうもありがとうございます。売り上げに全然貢献していない、それどころかきっと足を引っ張っているであろうわたしにまで下さるとは恐縮です。カシオの電子辞書がちょうど入る大きさなので重宝…

なのめに書き流したる

下の画像は特に名を秘す版元の、昔の本に挟まれていた愛読者カードだ。ここを見ている方なら「あああれね」とピンとくる方も多いと思う。 ごらんのとおり斜めになっている。印刷ミスではないようだ。意図的に傾けているらしい。古老の話によればこの本の新聞…

くとぅるーちゃんも驚愕

ただいま『イヴ』の初校ゲラと格闘中である。鉛筆で丹念に書き込まれた藤原さんの疑問出しを見ていると、こんなに手間をかけさせて申し訳ない、と思うと同時に、「オレってこれほど英語ができなかったんだなあ」という感慨めいたものも湧いてくる。還暦を越…

いわゆる差別語

翻訳をする上で、特に古い作品を翻訳する上で、いわゆる差別語の問題は避けて通れない。わたし自身はそういうものが出てきたときは、原則として穏当な語に言い換えることにしている。すなわち大勢順応主義である。スッタニパータというありがたいお経にも書…