2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『アエネーイス』の三種の訳

ラウィーニア (河出文庫)作者:ル=グウィン,アーシュラ・K.発売日: 2020/09/08メディア: 文庫 ル=グウィンの『ラウィーニア』が文庫になった! 拙豚はル=グウィンはほとんど読んでいないのだが、読んだ中で一番好きなのはこれだ。訳者あとがきにはウェルギリ…

早稲田古書街散策

ひさしぶりに高田馬場駅でおりて早稲田古書街へ行く。まずは駅前の芳林堂書店。なんと海外文学の棚がひどく縮小され、片隅に追いやられている。あたかも「銀の仮面」に出てくる老婦人のごとし。それでもきっと書店員の方の矜持があるのだろう、厳選されたい…

本の雑誌10月号

「すごい机の写真が載っている!」と巷で話題騒然の「本の雑誌」10月号を買ってきた。 たしかにすごい! 机の写真にも驚いたが、もっと驚いたことがある。突撃インタビューのトップバッターに、特に名を秘す版元の、特に名を秘す編集者の方が登場している。…

得体の知れないインタビュアー

Q&A作者:恩田 陸幻冬舎Amazon 以前宮部みゆきの『理由』をこのブログでとりあげたとき、何者ともわからないインタビュアーによるインタビュー形式がこの作品を成功させていると書いた。同じく「何者ともわからないインタビュアー」が出てくる小説では、恩田…

まだ佐野洋を読んでいる

まだ佐野洋を読んでいる。佐野洋というのはなにしろ読んだとたんにキノコの惑星のごとくスカーと忘れられるので、何度でも読み返しがきく。でも何度読んでも面白い。土屋隆夫や天藤真の作品集成を出すという偉業を成し遂げたS元S理文庫はなぜ佐野洋に目をつ…

不思議な印刷ミス

手持ちの辞書に不思議な印刷ミスがあるのに気づいた。買ったのは何年も前だが、印刷ミスに気付いたのはつい最近のことだ。下の画像を見てほしい。"demetritorio" の "de" のところが破れているのが見えると思う。拙豚が破ったわけではない。最初から破れてい…

チャンドラーのベストとワースト

レイモンド・チャンドラーの残した七つの長篇のうちのベストといえば、『長いお別れ』であるのは衆目の一致するところだと思う。数年前の日記に書いたような、いくつもの解釈ができる余韻あるラストもいい。それから文章もいい。片岡義男氏と鴻巣友季子氏の…

「深い健康」

怪談入門 (平凡社ライブラリー)作者:乱歩, 江戸川平凡社Amazon 9月2日の日記で触れた「人間性という地獄の劫火」と、ペアのように思い出される乱歩の言葉がある。「石子責め、鋸引き、車裂きなどの現実を享楽し得るものは、神か無心の小児か超人の王者かで…

『短編ミステリの二百年 3』

小森収氏編纂の『短編ミステリの二百年』(創元推理文庫) は早いものでもう第三巻が出た。しかも巻を重ねるごとに分厚くなっていく。あまりのボリュームに圧倒されて一巻からずっと積んだままにしてある。ずっとペースを乱さずに着々と(読むのが追いつかない…

『つわものども』

第一級の天才を持つ、小説を書くために生まれてきたような作家が書いた小説を読むのはなんと楽しいことだろう。ウォーもまさしくそうした作家のひとりで、読む前から面白さは保証されているようなものである。 主人公ガイ・クラウチバックは由緒ある旧家の末…

ひたむきな三島由紀夫(2)

幻想小説とは何か: 三島由紀夫怪異小品集 (906;906) (平凡社ライブラリー)作者:由紀夫, 三島平凡社Amazon ……『幻想小説とは何か』の東さんによる解説を読んだら、本来は評論の部が巻頭に来るはずが、版元のアドバイスで今の形になったという。小説篇か戯曲篇…