2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

いかに終わるか 山野浩一発掘小説集

山野浩一の作品を読むと小説とは何なのかがわからなくなる。小説に対して漠然と持っていたモノサシが通用しなくなる。これは天城一の推理小説を読むと推理小説とは何かがわからなくなるのと好一対かもしれない。堅苦しい言葉で言うならそれほど強烈な異化作…

ヴァージニア・ウルフを讃えて(2)

少し前に白水uブックスから出た『フラッシュ』は、『青と緑』とは全然違う作品で、カフカには逆立ちしても書けまいと思われるイギリス流ユーモアに満ちている。『オーランド―』のこだまのような才気のきらめきがあちこちに輝いていてまぶしい。 後半で舞台は…

ヴァージニア・ウルフを讃えて(1)

むかしちくま文庫で出た『ヴァージニア・ウルフ短篇集』が大幅増量されて帰ってきた。嬉しいことではないか。ウルフの短篇世界にどっぷり浸かれる機会がまた巡ってきたとは。 ボルヘスや澁澤には何らかの偏愛の対象がある。その対象は物すなわちオブジェであ…

積読本のない家

書棚の整理をしていたら以前買った『ヨコジュンの読書ノート』(書肆盛林堂, 2019) が出てきた。ヨコジュンこと横田順彌氏が高校三年から大学生時代にかけて書いた読書記録である。 本文も興味深いが巻末の北原尚彦さんによる解説にはさらに驚いた。冒頭いき…

氷沼紅司の書斎にて

『游牧記』といえば、『虚無への供物』に出てくる氷沼紅司の書斎には、五冊揃いの『游牧記』が秘蔵されているそうだ。ヴァン・キュイは出てくる気配はなかったが、こういう青い薔薇級の珍品があらわれるのだからやはり氷沼邸は一味違う。最終号が一種の合併…

日夏といえば

日夏といえば『游牧記』四冊揃いが今は三割引きで売っている。神保町の田村書店が「ほとんど全品三割引きあるいは五割引きセール」を開催中のためだ。このセールは今月十一日からやっているのだが、おととい行ってみたら、『游牧記』はまだ売れていなかった…

日夏の響きをなつかしむ

最近のランボー訳の中で出色のものは二〇一〇年に河出文庫から出た鈴木創士氏の『ランボー全詩集』であると思う。とりわけ『ある地獄の季節』『イリュミナシオン』の二詩集に関しては。 「酔いどれ船」はそれらより前、まだ十七歳のときに書かれたものだ。鈴…

ニコといえば堀口大学

昨日の日記ではニコの名を引き合いに出したが、日本でニコといえば何はともあれ堀口大学であろう。このあだ名はコクトーがつけたという説もある。堀口の翻訳書から無理やり一冊選ぶとするなら、たぶん『酔ひどれ船』(伸展社 昭和11年)になると思う。次点は…

侃侃房より左川ちか全集発刊

サラマーゴの『象の旅』やビラ・マタスの『永遠の家』など、最近は海外文学の分野でも意欲的出版を続けている書肆侃侃房が、本年左川ちか全集を刊行するそうだ。遅まきながら編者島田龍氏のツイッターではじめて知った。 版元宣伝文句の「詩の極北に屹立する…

文学フリマ京都参加断念

いろいろ考えたすえ、参戦する予定だった1/16の文学フリマ京都をキャンセルしました。万一楽しみにしていた方がいらしたら謝罪します。オミクロン株の恐ろしい感染力を前にしての苦渋の決断であります。 以前のものほど重症化リスクはないという噂もあります…

フィッシャーマン 漁り人の伝説

『幻想と怪奇』叢書第三回配本『フィッシャーマン 漁り人の伝説』を新紀元社から恵贈賜りました。ありがとうございます。さっそく新年最初の読書として堪能しました。 二〇一六年に発表されたにもかかわらず、まるで昔の小説を読んでいるような悠々とした筆…