アンソロジー

本邦初訳じゃないでしょ

ツイッター情報によれば綺想社というところからキラ=クーチの短篇集が出るらしい。「よしとに on Twitter: "アーサー・キラ=クーチ幻想綺譚集 壱『黒い鏡』 発行 : 綺想社 価格 : 5,000円 販売開始日:2022年7月3日 平井呈一も、愛した名匠 "Q"「魔法の影法…

ヴァージニア・ウルフを讃えて(1)

むかしちくま文庫で出た『ヴァージニア・ウルフ短篇集』が大幅増量されて帰ってきた。嬉しいことではないか。ウルフの短篇世界にどっぷり浸かれる機会がまた巡ってきたとは。 ボルヘスや澁澤には何らかの偏愛の対象がある。その対象は物すなわちオブジェであ…

ボーイ・ミーツ・タネムラ!

澁澤龍彦に女性ファンが群れをなしているのに比べると、種村季弘には、池田香代子氏などの貴重な例外をのぞいては、野郎どもばかり群がっているような印象がある。 なぜだろう? やはりペニスケースをつけて踊ったり、湯上りのセミヌード写真を著者近影に用…

『短編ミステリの二百年 3』

小森収氏編纂の『短編ミステリの二百年』(創元推理文庫) は早いものでもう第三巻が出た。しかも巻を重ねるごとに分厚くなっていく。あまりのボリュームに圧倒されて一巻からずっと積んだままにしてある。ずっとペースを乱さずに着々と(読むのが追いつかない…

『幻想と怪奇』3号

各所で話題騒然の『幻想と怪奇』3号を買ってきた。 巻頭80ページあまりの平井呈一特集は圧巻で、これだけでも十分にもとはとれるが、さらに圧巻なのはそれに続く短篇群である。実にみごとなアンソロジー(精華集)になっている。アンソロジーのテーマはいわ…

アンソロジーの終わりかた

怪奇小説傑作集4<フランス編>【新版】 (創元推理文庫)作者:G・アポリネール 他東京創元社Amazon 澁澤龍彦の編纂による『怪奇小説傑作集4』はアンソロジー史に残る名アンソロジーだと思う。と言うと一知半解の徒は「あれはカステックスのアンソロジーが種本…

情報解禁!

『怪奇骨董翻訳箱』の詳細が国書刊行会のサイトにアップされました。収録作品一覧も載っています。いずれ劣らぬ変な作品ばかりですから楽しみにしていただければと思います。アマゾンの予約ももうすぐはじまるのではないでしょうか。サイトには書影も出てま…

わが創元推理文庫神7(その4)

創元推理文庫はアンソロジーの宝庫でもある。永遠のロングセラー(たぶん)『世界推理短篇傑作集』『怪奇小説傑作集』を除けても『恐怖の愉しみ』とか『怪談の悦び』とか『淑やかな悪夢』とか『日本怪奇小説傑作集』とか『秘神界』とか、あるいは七年前の「…

ライバルはバベルの図書館

ちょっと必要があってスタニスワフ・レムの『神はタオイストだろうか』を引っぱりだしてきた。これはレム自身の著作ではなく、レムの編んだ幻想小説アンソロジーである。このドイツ語版は1988年に出ているが、ポーランド語版も出ているかどうかはよくわから…

松山俊太郎 『蓮の宇宙』によせて

松山俊太郎 蓮の宇宙作者:松山俊太郎太田出版Amazon 翁の講義は美学校に何度か潜り込んで謹聴したことがある。言葉もおそらくトータルで十語くらいは交わしていると思う。人は会わなければわからないということもないし、会えばわかるというものでもない。だ…

猫の力

ファイン/キュート 素敵かわいい作品選 (ちくま文庫)筑摩書房Amazon 猫のチカラ - 佐竹 茉莉子さんの『道ばた猫日記』にこんな話が紹介されている。あるところに86歳のおばあさんがいた。認知症が進行して周囲に無反応になり、「首をうなだれて座っているだ…

奇妙な痕

怪奇文学大山脈 (2) (西洋近代名作選 20世紀革新篇)発売日: 2014/08/29メディア: 単行本 待ちに待った『怪奇文学大山脈II』が出た。西崎憲氏大活躍の巻である。翻訳者の末席を汚したため一足先に送ってもらったのだが、届いたその日に読み上げて、それはも…

不穏の書

*リテラリーゴシック・イン・ジャパン: 文学的ゴシック作品選 (ちくま文庫)作者: 高原英理出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/01/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (7件) を見る* 『虚無』へ捧ぐる供物へと 美酒すこし 海に流しぬ いと少しを * …

バカホラーの週末

独逸怪奇小説集成発売日: 2001/09/01メディア: 単行本土日はバカホラーばかり読んで頭が痛くなりました。でもなんとかして荒俣先生編の伝説的アンソロジー『慄然の書』のドイツ版を作ってみたい。作ってみせるぞ。昨日読んだカール・ハンス・シュトローブル…

140字で語る

3.11 心に残る140字の物語作者:内藤みか学研プラスAmazon 東日本大震災を契機として書かれたTwitter小説のアンソロジー。Twitterというと140字だから、数百字を基準とする超短編よりもさらに短い。昔偉い文豪二人が「筋のない小説」をめぐって意見を…

ナンセンスの風船の束

エソルド座の怪人 アンソロジー/世界篇 (異色作家短篇集)作者:G・カブレラ=インファンテ・他,レイモン・クノー,ナギーブ・マフフーズ早川書房Amazon 遅まきながら読みましたが、いやはやこれはすばらしいね! しかし拙豚のまわりの本好きの間では、この本は…

独身者の機械

雪が止まない。今日はAin Soph/KBBのライブに行くべきか、ですぺらに行くべきか、それとも家でおとなしくしてるべきだろうか。どんがらがん (奇想コレクション)作者:アヴラム・デイヴィッドスン河出書房新社Amazon 「どんがらがん」収録短篇のなかでは、…

空虚な虚(うろ)

日本怪奇小説傑作集1 (創元推理文庫)作者: 紀田順一郎,東雅夫出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2005/07/08メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 18回この商品を含むブログ (40件) を見る まだ最初の数編しか読んでいないが、巻頭にハーンの「茶碗の底」を持…

『怪奇礼讃』

相変らずポツポツと読み続けています。こういう本を一時に読むのはもったいなさすぎる。先に同じ版元から出た『怪談の悦び』が燦めくマスターピースばかりを集めた宝石箱だとすれば、この「怪奇礼賛」は、どこかの修道院からでも発掘された古文書の抜書きの…