ハンチバック


 

今回の芥川賞は市川沙央氏の『ハンチバック』という作品に決まったという。おめでとうございます。

それとはまったく関係ない話だが、このハンチバック (ドイツ語のBucklige) という言葉ほど翻訳するときに困る言葉はない。このことは『イヴのことを少し』を翻訳していたときに一度書いたが、今翻訳している小説にもまた出てきた。どう訳せはいいだろう。それにしてもなぜ自分の訳す小説にはハンチバックの人がよく出てくるのか。これも前に一度書いたかもしれないが、単なる怪奇趣味だけで出すのは本当にやめてほしいと思う。悪趣味ではないか。

そういえばむかし、池田満寿夫が澁澤龍彦のことをこのハンチバックの印象があるとどこかに書いたあと、澁澤が気を悪くしたら困ると思って電話で謝ったら、澁澤は「精神のことじゃなくて肉体のことだから気にするなよ(大意)」と答えてカラカラと笑い飛ばしたという。

それはそうと、最近翻訳されたある小説を読んでいたら、このハンチバックの人が「〇〇〇」というひらがな三文字で出てきたのでちょっと驚いた。それも一人ではない。730人も出てくる。ノートルダムの鐘つき男もびっくりである。