森鷗外

ひたむきな三島由紀夫(1)

「折ふし夕べにシャーロック・ホームズを思う/これはわれわれに残されたよい習しだ (Pensar de tarde en tarde en Sherlock Holmes es una / de las buenas costumbres que nos quedan.)」とボルヘスは歌った。ならば折ふし夕べに三島を思うことも、われわ…

よくわからない冗談

ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件作者:ボルヘス,ホルヘ・ルイス,ビオイ=カサーレス,アドルフォ岩波書店Amazon 「伊沢蘭軒」は大正5年6月から大正6年9月にかけて東京日日新聞などに連載された。もちろん大多数の新聞購読者は「毎朝毎朝鷗外先生の麗文が…

縞に関する疑問 (Question de la Strie)

村山槐多耽美怪奇全集―伝奇ノ匣〈4〉 (学研M文庫)作者:村山 槐多学研プラスAmazon 疑問といっても別に縞パンツは縦縞であるべきかそれとも横縞かといったようなことではない。だいいち縦縞パンツなど想像することさえできないという御仁もおられよう。そうで…

その人の名は「るん」

年末だから大掃除(らしきこと)をやらねばならぬと、床に散乱した本を整理中。しかし整理を試みるほど、かえって乱雑になるのはなぜだろう。あちこちの本を拾い読みしているうちに、いろいろつまらないことに気付く。たとえば、森鴎外の某作品に、「るん」…

ヴァテックのこと

「ヴァテック」を読んだときのことはまだ覚えている。国立の道化書房で牧神社版を買い、斜め向かいの音楽喫茶「ジュピター」で一気に読んだのだった。二十年くらい前のことである。今はどちらの店もたぶん存在していないだろう。驚いたのはその近代性だった…

鮎川哲也は、なぜ我々をハッピーにするのか? (その2)

同様のことを中村真一郎も彼の著書『文章読本』のなかで述べている。文章読本という、いわば文章のお手本集の中に鮎川哲也の文章を入れるというのも相当な見識ではあるが、そこで彼は鮎川は鷗外に学んでいるのではないか、とまで言っているのだ。鮎川が引用…