2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『エルクマン-シャトリアン 怪奇幻想短編集』

昨日は久しぶりに盛林堂書房まで出向いて『エルクマン-シャトリアン 怪奇幻想短編集』を買ってきた。ウェブ上で販売されるやまたたくまに売り切れてしまい、そのまま幻となった本である。でも幸い店舗にはまだ残っていた。「挿絵が入っているだけで本文はむ…

『手招く美女』

世間ではとうに『マゼラン雲』とか『ホフマン小説集成上』とかが出ているというのに、今日ようやく『手招く美女』のページを開いた。最近の国書の刊行ペースについていくのは老残の身にはなかなかハードである。巻頭の「手招く美女」はむかしむかし牧神社の…

一度ならず二度までも

ナイトランド・クォータリーvol.20 バベルの図書館アトリエサードAmazon SFファン交流会のアンケートには「二度と訳したくありません」と書いてしまったキャベル。実はそのあともう一度訳しているのを思い出しました。『ナイトランド・クォータリー vol.20 …

パぺの表紙

SFファン交流会も盛況のうちに終了したようで何よりです。わたしは残念ながら外せない用があって参加できませんでした。あらためてお詫びします。その代わり、といっては何ですがパぺ関連の小ネタをひとつ。2006年にエディション・プヒプヒからスタニスワフ…

共感性

テュルリュパン ――ある運命の話 (ちくま文庫)作者:レオ・ペルッツ筑摩書房Amazon 『テュルリュパン』を読んでくださった方の感想がツィッターにぽつぽつ現われてきました。ありがたく読んでいます。今までのところいちばん「うんうんそうだよね」と思ったの…

『悪魔を見た処女 吉良運平翻訳セレクション』

学魔の新刊『鎮魂譜 アリス狩りVII』を買おうと思って雨の中を東京堂書店まで行った。お目当ての本は新刊平台ですぐ見つかったが、そのすぐ近くに目を疑うような本が並べてあった。すなわち本書である。吉良運平の名は乱歩『幻影城』の愛読者にはおなじみだ…

最古の叙述トリック作品は?

夏来健次・平戸懐古というすばらしいタッグによる英米古典吸血鬼小説傑作集『吸血鬼ラスヴァン』が来月末に東京創元社から出るらしい。おお、これはものすごいものになりそうで今から楽しみだ。平戸懐古氏といえば、話は急に変わるが、氏が私家版「懐古文庫…

我が尻よ

浅暮三文さん(通称グレさん)が久しぶりにファンタジーを出すらしい。ゴールデンウィーク明けに河出文庫から、題して『我が尻よ、高らかに謳え、愛の唄を』。表紙絵は今をときめくYOUCHAN。それにしてもあまりに不穏なタイトルである。中井英夫とか、須永朝…

本代は支払われたのだろうか

昨日書影をあげたヴェデキント仏訳本は、十数年前に洋書まつりで生田旧蔵書が大放出されたときに手にいれた。あのときは生田が晩年にいたるまで豪快に本を買い続けていたことがわかってびっくりしたものだった。現にあのヴェデキント仏訳の刊行年一九九〇年…

金玉を噛まれる

ちょっと必要があってフランク・ヴェデキントの日記を拾い読みしていたらこんな一節にぶつかった。 「彼女は[…]をちょん切ろうとしたが[…]、僕の金玉を噛んだので僕は痛さで悲鳴をあげた」。ここだけは本人も恥ずかしかったのかフランス語で書かれてある。噛…

『テュルリュパン』販売開始

テュルリュパン ――ある運命の話 (ちくま文庫)作者:レオ・ペルッツ筑摩書房Amazon レオ・ペルッツ『テュルリュパン』がアマゾンで販売開始になりました。丸善・ジュンク堂でも、たとえば都内なら丸の内本店・日本橋店・池袋本店に在庫があるようです。皆様な…

『サラゴサ手稿』ついに完訳

岩波書店のツイッターによれば、『サラゴサ手稿』が畑浩一郎氏の訳で九月から刊行されるという。これはめでたい。千夜一夜物語にならって何重もの入れ子構造をもったこの作品は、そのテキストもガラン版、マルドリュス版、バートン版などが並立する先輩並み…

リキジ……

ひさびさにコトリの宮殿出ますよーとツイートしようとしたら地面が揺れましたね。今回はリキジ……いや、コント特集です。 pic.twitter.com/2Fkb6z7pXg — タカスギシンタロ (@kotorigun) 2022年4月4日 リキジン(りきマガジン)が復活するそうな。いや、なには…

『テュルリュパン』来週発売

ツイッターの世界ではバズったら(というのはつまりアクセス数が増えたら)宣伝してもいい、という不文律があるようです。当ブログは一向にバズらないけれど宣伝はします。ということで来週あたりに久方ぶりのレオ・ペルッツ新刊『テュルリュパン ある運命の…

裏表紙の叙述トリック

日本では本の帯によく「〇〇氏絶讃!」などという宣伝文が書かれてある。英米のペーパーバックでそれにあたるのが裏表紙の引用文である。たとえば「驚天動地の傑作!(ニューヨークタイムズ)」とかそんな感じで書評の一部が引用されている。しかしこれが実…

巨大アヒルの正体

ここ最近の日記でしきりに登場する巨大アヒルは府中の古書店「夢の絵本堂」で買ったものだ。価格は三百円 (税込) だった。「夢の絵本堂」はこのようにときどき面白いものを売っているので、府中図書館に用があって行くときには必ず立ち寄る。ただし週のうち…

古老の昔話:イラストレーターの「あと描き」

今のライトノベルの巻末には、当たり前のように、作者のあと書きといっしょにイラストレーターの「あと描き」もついている。だがこれを一番最初にやった本は何だろう?文献によればそれは菊川涼音+夢路行のコンビによる『妄想自然科学入門』であるらしい。…

続・古老が語るモダーン・ディテクティヴ・ストーリイ

(これは昨日のツヅキです) モダーン・ディテクティヴ・ストーリイ(以下MDS)という言葉は、高校生のころ、新潮文庫に入っていた福永武彦『加田伶太郎全集』に付された都筑道夫の解説で知ったのだったと思う。 しかし『加田伶太郎全集』を読んだ当時の生意…