星新一

セルビアの星新一

盛林堂ミステリアス文庫から渦巻栗氏の訳でゾラン・ジヴコヴィチ『図書館』が出ました。こいつはすばらしい! ゾラン、ゾラン、ゾラ~ン、はるかな宇宙か~ら~——いやなんでもありません。一読して驚くのは星新一そっくりなことです。それも後期星新一、つま…

星とハートリー

かぼちゃの馬車(新潮文庫)作者:星 新一新潮社Amazon まだ星新一を読んでいる。星新一もまた夏の読み物だと思う。扇風機と蚊取り線香がよく似合う。『かぼちゃの馬車』の最終話はL.P.ハートリーのある短篇と発想が同じなので驚いた。共通の願望でもあったの…

『星新一の思想』再説

星新一の思想 ――予見・冷笑・賢慮のひと (筑摩選書)作者:浅羽 通明筑摩書房Amazon 浅羽さんといえば、『星新一の思想』は実に面白い本で折に触れて読み返している。もちろんそこには浅羽節ともいうべき独特の文体を読む快感もある。そのあるページであるショ…

無神論者の聖書

もう三十年以上も昔の話になるけれど、ある日曜日の朝、クリスチャンの友人に誘われて教会に説教を聞きに行ったことがある。教会で説教を聞いたというのは後にも先にもそのときだけである。説教壇に立った牧師さんが聖書の一節を引用しそれに元に講話を述べ…

午後の恐龍

*アルファ作者: イェンス・ハルダー,菅谷暁出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2016/05/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る* 特殊版元として名高い国書刊行会がまたまた面妖な本を出した。拙宅から一番近い大型書店(コーチャンフォー…

蒐集と喪失と

12人の蒐集家/ティーショップ (海外文学セレクション)作者:ゾラン・ジヴコヴィッチ東京創元社Amazonこの本はいい。まず訳文がいい。重訳というのは非難されがちだけれど、本書にかぎっては大成功していると思う。というのも、本書の文体のまれに見る清澄さは…

存在しないものよ、御身が讃えられますように

私の書かなかった本作者:ジョージ・スタイナーみすず書房Amazon『私の書かなかった本』という題から、捨てられたアイデアやメモが雑然とまとめられた書物が連想されるかもかもしれない。たとえば星新一の『気まぐれ博物館』のような。だがそれは間違いだ。『…