平井呈一

『手招く美女』

世間ではとうに『マゼラン雲』とか『ホフマン小説集成上』とかが出ているというのに、今日ようやく『手招く美女』のページを開いた。最近の国書の刊行ペースについていくのは老残の身にはなかなかハードである。巻頭の「手招く美女」はむかしむかし牧神社の…

恐怖の到来

『恐怖 アーサー・マッケン傑作選』を贈っていただきました。どうもありがとうございます。 さっそくぱらぱらとめくってみると、のっけから「よく来られたね、クラーク。ほんとによかった。じつは、時間のつごうがつくかどうか、心配してたんだが。」 「仕事…

トコという男

平井訳アーサー・マッケン傑作選の創元推理文庫化にわきかえるホラー界であるが、それにちなんで平井ネタをもう一つ。 山川方夫が死の直前までEQMMに連載していた「トコという男」は、一見軽妙な談話風エッセイでありながら、搦め手から攻めた推理小説論であ…

マッケンの事

藤原編集室のツイートによれば、平井呈一訳マッケン短篇集が近々創元推理文庫から出るという。やれうれしや。同文庫『怪奇小説傑作集1』で「パンの大神」を読んだときの衝撃は今でも忘れがたい。「恐怖は人類最古の感情である」というラヴクラフトの言葉を…

『幻想と怪奇』3号

各所で話題騒然の『幻想と怪奇』3号を買ってきた。 巻頭80ページあまりの平井呈一特集は圧巻で、これだけでも十分にもとはとれるが、さらに圧巻なのはそれに続く短篇群である。実にみごとなアンソロジー(精華集)になっている。アンソロジーのテーマはいわ…

幻想と怪奇来たる

縁あって『幻想と怪奇1』のご恵送にあずかりました。 どうもありがとうございます。 紀田・荒俣両巨頭による創刊の辞、北原尚彦氏のイントロダクションに続いて、いきなりアーサー・マッケンの短篇登場! やはりアーサー・マッケンは不滅です。牧神社版の作…

『幽霊島』の刊行に寄せて

幽霊島 (平井呈一怪談翻訳集成) (創元推理文庫)作者:A・ブラックウッド他東京創元社Amazon あなたが一流のレストランに行ったとしよう。コースを一通り堪能し、コーヒーを啜りながら、「ああ美味かった」と味を反芻しているとしよう。そんなときシェフが不意…

まだある、まだある

昨日と今日は古書会館で洋書まつりがあった。いつぞやの日記で記した、加齢とともに本買いが加速する人たちが一堂に集まってわれがちに段ボール箱に何箱も、という感じで本を買っていっている。恐ろしい。恐ろしすぎる眺めではないか。昨日六十冊近く買った…

平井蔵書の午後

昨日は東雅夫・下楠昌哉両氏のトークイベント「幻想と怪奇の匠・平井呈一――その足跡と旧蔵書をめぐって」に行ってきました。平井翁の蔵書を追って中越地方のある市を訪れた下楠氏。そこで氏が見たものは、いたるところに屹立する佶屈とした石碑や石像、そし…

ゴシックよもやま話(3) オトラント城綺譚(現代語訳)

ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語 伝奇ノ匣7 (学研M文庫)学研プラスAmazon 平井呈一翁の名訳と言えば十指に――いや二十指にさえ余ろうけれど、その中でもひときわ異彩を放つのがこの「オトラント城綺譚」である。不勉強にして擬古文訳の方は通読さえしていない…