スタニスワフ・レム

泰平ヨン最後の事件

大方の予想を裏切り快調なペースで刊行が続くスタニスワフ・レム・コレクション。早くも第二回配本として今回一番の目玉ともいえる『地球の平和』が出た! いうまでもなく泰平ヨンシリーズ唯一の未訳作品である。 この作品には『大失敗』のようなハードSF的…

科学技術大全

拙豚の住むC市では先般60歳から64歳の者にもワクチン接種券が送付された。幸い予約も取れたのでさっそく昨日第一回目を打ちにいった。ファイザーである。 副反応が出ると聞いていたが昨日の段階では何もなかった。だまされて実は食塩水か何かだったのかと思…

ライバルはバベルの図書館

ちょっと必要があってスタニスワフ・レムの『神はタオイストだろうか』を引っぱりだしてきた。これはレム自身の著作ではなく、レムの編んだ幻想小説アンソロジーである。このドイツ語版は1988年に出ているが、ポーランド語版も出ているかどうかはよくわから…

ショッギョ・ムッジョ

*短篇ベスト10 (スタニスワフ・レム・コレクション)作者: スタニスワフ・レム,沼野充義,関口時正,久山宏一,芝田文乃出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2015/05/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る* 『短篇ベスト10』は発売たちまち首…

裏Lコレクション続報

* 「エフ氏」完成。冒頭の部分をちょっとご紹介。 * 書かなかった本について語るのは難しい。なにもそうした本が多すぎるからではなく、その本がわたしにとって最も重要だからでもない。なぜ難しいのかというと、書かなかった本にはそれ固有の物語があるか…

裏Lコレクション続報

* 先に「インターネット論集」を出すと予告した裏Lコレクションですが、あまりの難しさにダウン。急遽第一回配本は「エフ氏」に変更することにしました。 * これはL氏が自分が書かなかった小説について書いたエッセイか小説かよく分からないものです。ち…

来たれ魔境へ

文フリの弊スペースまで来ていただいた方々、ありがとうございました。販売見込みを読み違えて少なめに持っていったら、売り切れ続出、せっかく来ていただいたのにご迷惑をかけ申し訳ありませんでした。増刷して冬の祭典(二日目、30日)でも売りますので、…

『Oの物語』メモ2:プラトニスム

完訳Oの物語作者:ポーリーヌ・レアージュ学研プラスAmazon ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムは自他ともに認めるウルトラ女嫌いで、最後の長篇『大失敗』(1987)はあまりの女性蔑視描写のため、英語版では文章に一部削除がされているという。自然ポルノ…

噂の真相

最近ドイツ語訳が出たレム書簡集。ぱらぱらめくっていたらP.K.ディック宛書簡があった。なんでもレムの肝いりでポーランド語訳されることになった『ユービック』が金銭関係でもめたらしい。レムは釈明にこれ努めているが、この頃のディックにはヴァリスから…

フロイト的に見たレム

Art And Science of Stanislaw LemMcGill Queens UnivAmazon レムと言えば女嫌い、女嫌いと言えばレムというくらいにその女嫌いぶりは有名で、彼の作品中に女性はめったに出てこない。たまに出てきてもどこぞの海が作った合成物だったりする。去年翻訳が出た…

Die Melancholie der Haruhi Suzumiya

* レム三周忌本としてまた何かアンソロジーを組もうと思ったけれど、あれやこれやで絶対的に時間が不足。結局、二年前に訳しかけたものの『発狂した仕立屋』には入れなかったインタビューを薄い本にしてお茶をにごすことになってしまった。これは、旧知のフ…

ヤノーメ

午前中ちょっと神保町に行って、あとは終日ヤノメの版下作り。たんたんと作業してしてると、いつものことながら、なんで俺せっかくの休日をつぶしてこんなことやってるんだろうなあとかついつい思ってしまう。当初は予算の点で日和ったが、後記を読み返して…

文学フリマ

レム追悼本は35冊売れました。意外な方も買いに来てくださり感謝感激。残部20部ほどは、非合法出版ゆえですぺらで人目を忍びつつ販売中。――文学フリマの収益は11/10のコメントで話題のドイツミステリ書誌を買ったら一瞬で消えました。よ、よく観察してる人が…

レム追悼本正誤表その他

「ですぺら」に謎の三人組があらわれて、「発狂した仕立屋」を買っていってくださったとのこと。ありがとうございました。 残念ながら正誤表が間に合いませんでした。「ですぺら」に置いておきましたので、もしもう一度お立ち寄りの節は「正誤表ください」と…

「発狂した仕立屋」正誤表

ということでコミケで販売いたしましたレム追悼本の正誤表です。実は今年の夏はクーラーが壊れまして、頭がウニ状になったまま翻訳を進めたのでございます、と言っても何の弁解にもなりませんが。下記以外にもいろいろ直したいところはありますが、とりあえ…

コミケ販売本と周辺事情

コミケもいよいよ明日に迫りました。販売予定本は以下の通りです。 *スタニスワフ・レム追悼本『発狂した仕立屋』 内容はこんな感じです。値段はできあがった本を見てから決めます。1000円くらい? *平井功譯詩集 1500円 東雅夫さんが幻妖ブックブログで紹…

Lたん追悼本入稿

わがエディション・プヒプヒもコピー本段階を脱し、印刷所で印刷してもらうことになりました。その第一弾、「ビブリオテカ・プヒプヒ6」として出すスタニスワフ・レム追悼本は限定100部番号入り。8月12日(土)コミケにて東ぺ58a「エディション・プヒプヒ」…

『書評 2238年6月』

装幀のヒントになるような本はないかと書棚を漁っていたらインゼル年鑑のレム特集号が出てきた。三十年くらい前に発行された本だ。フランツ・ロッテンシュタイナーやダルコ・スーヴィンなどいかにものメンバーに混ざってジークフリート・レンツなんて人も寄…

レム追悼本表紙案

ちょっと作ってみた。これはさすがにまずいでせうね。まずいやうな気がヒシヒシとする。

ミステリは『枯草熱』でおしまいか

殊能将之の刺激的な断言*1を読んでちょっと考えてみた。 おしまいということはないように思う。例えばランダムネスの濃度自体がプロットに絡む『奇偶 (講談社ノベルス)』、あるいはランダムネスの影響が因果律にまで及ぶ『ウロボロスの偽書 (講談社ノベルス)…

L氏と乱歩

「……ポオの短篇の内で、前々から是非使って見たいと思っていた筋が二つある。一つは『ホップ・フロッグ』もう一つは『スフィンクス』である」と乱歩は『踊る一寸法師』の自作解説で述べている。『ホップ・フロッグ』からは『踊る一寸法師』が生まれたが、乱…

レム追悼本

地下室の手記 (新潮文庫)作者:ドストエフスキー新潮社Amazon SFマガジンの特集でこれまでの既訳作品も判明したので、だいたいの目次構成が固まりました。ポーランド語は一字も読めないのでもちろん全部重訳(最後のインタビューだけ例外)。 *「『薔薇の名…

L氏・言葉遊び・翻訳

L氏の言葉遊び癖のはげしさは、泰平ヨンものや、「ロボット物語 (ハヤカワ文庫SF)」や、なかんずく「宇宙創世記ロボットの旅 (ハヤカワ文庫 SF 203)」の読者には周知のことであろう。下に書影をアップした本は、そういったL氏の言葉遊びがいかに翻訳に反映さ…

L氏とマイクル・カンデル

キャプテン・ジャック・ゾディアック (ハヤカワ文庫SF)作者: マイクルカンデル,Michael Kandel,大森望出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1994/02メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る クヴァルバー・メルクールをぱらぱらめくっていたら、ロッテ…

レム、「O嬢の物語」を語る

O嬢の物語 (河出文庫 レ 1-1)作者:ポーリーヌ・レアージュ,澁澤 龍彦河出書房新社Amazon 理論的な話がえんえん続いたかと思うと、突如SF作家総まくり罵倒大会がはじまる「SFと未来学」も不思議な本だったが、「偶然の哲学」も当方の知識不足および語学力不足…

レム再説

レムにしてもサドにしても、彼らの本を読むときのポイントは、その怪物性をそのまま受け入れることではないのか。これは何も盲目的に崇拝せよとか畏れ入れとか言うことではなく、「もしかしたら人間以外の存在が人間の皮をかむって、これらの本を書いている…

SFマガジン2004年1月号

こことかここで話題になってるので久しぶりにSFマガジンを買ってみました。 この雑誌読むのはもう何年かぶりだが、うおう「おまかせ!レスキュー」の連載がまだ続いてる! 特集はレムだし、草上仁の短編が載ってるし、某石堂さんはあいかわらずだし、なんか…