オリンピックに勝つために

1964年の東京オリンピックの前年1963年に雑誌『マンハント』で野坂昭如が「オリンピックに勝つために」という連載エッセイを書いていた。日本が金メダルをとるにはどうすればいいかという趣旨のエッセイだが、これが60年後の今読むとおそろしく先見的なのだ…

中井英夫「鏡に棲む男」フランス語朗読

本多正一さんから、フランス語版「鏡に棲む男」の朗読がYouTubeにアップされたことを教えてもらいました。これはなかなかのものですよ。 www.youtube.com ちなみにテキストはここにあります。「これがこの人間世界にあっていいことなのか……」という藤木田老…

大辞典への感謝

ここ一年くらい、毎日のように白水社の『スペイン語大辞典』のお世話になっていた。本体25,000円という国書刊行会もビックリの価格だがそれでも割安という感じしかしない。この辞書の特色はなんといっても中南米で使われる意味を丹念に記述していることだ。…

ジャリ全集いよいよ刊行!

『骸骨』、『人狼ヴァグナー』、『「探偵小説」の考古学』、『マルペルチュイ』、『高原英理恐怖譚集成』と、最近の国書刊行会は重量級の本ばかり立て続けに刊行している。「誰が一番分厚い本を出すか」という社内コンクールでもやっているのだろうか。東野…

不幸の手紙異聞

翻訳が滞る訳者に不幸の手紙を送りつけるという、社名は厳秘のとある出版社であるが、先日さらにおそろしい話を聞いた。本当か嘘かわからないのだが、拙豚が高校生のときに社長だった方が、拙豚が還暦をこえた今も社長をされているという。すると不老不死で…

現代科学で解明できない念波

『まねき猫』には不幸の手紙のことばかり書いてあるわけではない。「本は積んでおくだけで勉強になる」とも書いてある。 この怪現象の説明として、積んだ本からは現代科学では解明できない念波が出ていて、それを受信することで脳細胞が活性化されるのだと一…

さらに一日たつと

さらに一日たつと、倦怠感はなくなり、熱も平熱に戻り、筋肉痛も触れば痛い程度まで和らいできた。すると現金なもので、なんとなくあと20年は生きられそうな気がしてきた。ということは、運がよければレムコレクション第二期の完結をこの目で見られるかもし…

科学技術大全

拙豚の住むC市では先般60歳から64歳の者にもワクチン接種券が送付された。幸い予約も取れたのでさっそく昨日第一回目を打ちにいった。ファイザーである。 副反応が出ると聞いていたが昨日の段階では何もなかった。だまされて実は食塩水か何かだったのかと思…

神崎繁旧蔵書

数年前惜しまれながら早すぎる死を迎えた神崎繁の旧蔵書がヤフオクにどちゃっと出るという噂を聞いて及ばずながら参戦した。 当日はあんのじょう壮絶な争奪戦が繰り広げられたのだが、拙豚はあんまり目立たない一山ものに的を絞り、おかげで「51冊一括」とい…

発売即重版!

『裏切りの塔』(創元推理文庫)の重版が決定したそうです。実にめでたい! なぜわたしが知っているかというと、畏れ多くもこの本の解説を書いているからなのですよ。 これが出たのが先月末だから、二週間足らずで重版が決定したことになります。かなり猛烈…

訳詩ことはじめ

何の因果か訳詩を大量にするはめになった。長く生きているといろいろ珍しい経験をするものである。 まず思い知ったのは訳詩というのは不可能な企てだということだ。意味だけ訳しても何にもならない。古代ギリシアである哲学者が「人間とは二本足の羽のない生…

ストルルソンの怪

ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』を読んだ人なら、冒頭近くに「スノッリ・ストルルソン」という「十二世紀アイスランドの有名な著者」の名が出てくるのを覚えておられるかもしれない。ところが岩波の世界人名大事典には、この名が「スノッリ・ストゥルトル…

ボーイ・ミーツ・タネムラ!

澁澤龍彦に女性ファンが群れをなしているのに比べると、種村季弘には、池田香代子氏などの貴重な例外をのぞいては、野郎どもばかり群がっているような印象がある。 なぜだろう? やはりペニスケースをつけて踊ったり、湯上りのセミヌード写真を著者近影に用…

本邦退屈派

調べもののためF図書館に行ったついでに問題の『死火山系』を借りてきた。 この図書館はこの手の本を廃棄処分もせずにわりと残してあるので頼もしい。何年か前に北村薫氏が講演に来ていたので、中の人がミステリ好きなのかもしれない。緊急事態宣言の中にあ…

恐怖の到来

『恐怖 アーサー・マッケン傑作選』を贈っていただきました。どうもありがとうございます。 さっそくぱらぱらとめくってみると、のっけから「よく来られたね、クラーク。ほんとによかった。じつは、時間のつごうがつくかどうか、心配してたんだが。」 「仕事…

悪魔はここに

Re-Clam第六号が到着した。発行者三門優祐氏のエディトリアル・ワークはますます冴えわたり、隅々まで読んで楽しい雑誌になっている。これほどマニアックでありながら、同人誌特有の閉塞感を感じさせず、「ミステリっていいもんだな」と素直に思わせるのは、…

上げ底のヨナス・リー

ヤフオクに出品されているディスプレイ用洋書を見るのが楽しい。もともと本の背表紙を読んでるだけでハッピーになる性格ではあるのだが、ニ十冊千円程度の束の中に貴重な本が混じっているとますます嬉しくなる。 もっとも同好の士は多いとみえて、そんな束は…

尻の火は消えず

12日に文庫解説を送稿し、14日に雑誌小特集のゲラを戻したので、あとは短篇をひとつ訳せば今月の締め切りはオールクリアである。それが終われば夏の終わりまでに長篇をひとつ訳して、漠然としたプランを固めて、それからもうひとつ別の訳書の注と解説がある…

八十歳からの外国語

「ことばのたび社」というところがチェコ語の講座を始めたらしい。価格も手ごろだ。ちょっと心が動くではないか。だが己の記憶力にいまひとつ自信が持てずなかなか踏み切れない。 そういうとき思い出すのはボルヘスである。ボルヘスが日本語を習い始めたのは…

トコという男

平井訳アーサー・マッケン傑作選の創元推理文庫化にわきかえるホラー界であるが、それにちなんで平井ネタをもう一つ。 山川方夫が死の直前までEQMMに連載していた「トコという男」は、一見軽妙な談話風エッセイでありながら、搦め手から攻めた推理小説論であ…

旱魃世界

J.G.バラード『燃える世界』が『旱魃世界』というタイトルで山田和子氏の新訳で出た。なんと嬉しいことであろう。しかも今回はイギリス版のテキストが元になっていて、旧訳とは底本の段階で相当に異なる。 わたしは山田氏の「ついてこれない人は無理について…

単に掌の上で

たまには宣伝を。 今月末に出る『ナイトランド・クォータリー vol.24』にアルヴィン・グリーンバーグ「ホルヘ・ルイス・ボルヘスによる『フランツ・カフカ』」が拙訳で載ります。この短篇はむかしむかしハリー・ハリスン、ブライアン・W・オールディス共編の…

空がとっても低い

「鏡に棲む男」に続いて「火星植物園」が "Nouvelles du Japon" に掲載された。このサイトには他に太宰治の「走れメロス」や野坂昭如の「戦争童話集」も訳載されている。訳者たちが真に共感する作品を選りすぐって掲載しているのがうかがえる好サイトだと思…

「麻倉玲一は信頼できない語り手」

メフィスト 2019 VOL.3発売日: 2019/12/04メディア: Kindle版 『火星ラストソング』ダウンロード成功により電書購入の味をしめたプヒ氏は、勇躍二冊目の購入にとりかかった。タイトルは『メフィスト』2019年 vol.3 。何を隠そう、あの伝説の『麻倉…

種村主犯説

種村季弘の『ビンゲンのヒルデガルトの世界』を読んでいたら、またもや「なんなら」の新用法にぶつかった。こちらは1994年の刊行だから、先日とりあげた『畸形の神』よりさらに早い。 ここでは「なんなら」は「場合によっては(ドイツ語でいうと unter Umstä…

ゴセシケ再訪

『火星ラストソング』を読んだら今度はゴセシケが読みたくてたまらなくなり、近所の図書館から借りてきた。 この『合成怪物』(半田倹一訳・岩崎書店SFこども図書館25)は「1976年第一刷発行」と書いてあるからわたしの読んだ版ではない。まあともかく半世紀…

火星ラストソング読了!

火星ラストソング作者:倉阪 鬼一郎発売日: 2019/11/27メディア: Kindle版 電子書籍限定作品というからさぞ難解で前衛的な作品なんだろうなと思ったけれど、まったくそんなことはなかった。普通の形で出ても全然おかしくない作品である。 物語はまるきりSF調…

火星ラストソングを読み始める

火星ラストソング作者:倉阪 鬼一郎発売日: 2019/11/27メディア: Kindle版 必ずしも道は平坦ではなかったが、特にアドレナライズの本がkindle cloud readerに対応していないのが痛かったが、いやそもそもアマゾンはあまり利用しないので使い慣れていなかった…

陳謝

昨日書いた特に名を秘す某社の方が連絡をくださった。こんな辺境のブログなんか誰も見てないだろうと思っていたが案外そうでもないようだ。すみませんでした。これからは人様の会社の備品を驚愕噴水とか鎌倉ハムとかいうのはやめます。

マッケンの事

藤原編集室のツイートによれば、平井呈一訳マッケン短篇集が近々創元推理文庫から出るという。やれうれしや。同文庫『怪奇小説傑作集1』で「パンの大神」を読んだときの衝撃は今でも忘れがたい。「恐怖は人類最古の感情である」というラヴクラフトの言葉を…