『新編 怪奇幻想の文学2 吸血鬼』

かつての名アンソロジーを今に蘇らせるシリーズの第二弾『吸血鬼』がもうすぐ出ます。不肖わたくしも巻頭の中篇「謎の男」の訳で参戦しております。 この「謎の男」を書いたK. A. フォン・ヴァクスマン(1787-1862) は当時は人気作家だったみたいですが今はほ…

新刊断念

久しぶりに起動したプリンターが不調*1で文学フリマ新刊は断念。いずれ盛林堂さんにお願いして通販しようと思っています。というわけで代わり映えしない頒布物で申し訳ありませんが、よろしければ明日は会場でお会いしましょう。 *1:スジが出る。たぶんイメ…

文学フリマ入場証が来る

文学フリマ事務局から入場証が送られてきた。久しぶりだから新刊を出したいがハテどうなることか。

『私が選ぶ国書刊行会の3冊』

国書刊行会の創業50周年記念小冊子『私が選ぶ国書刊行会の3冊』が届いた。ありがとうございます。さっそくエゴサーチの鬼と化し、ドレドレ自分の訳書を選んでくれた人はいるかなと鵜の目鷹の目でさがした、だがどこにもない。やはり自分は国書的には新参者…

叙述トリックの隠された動機

松山俊太郎翁は『綺想礼讃』のなかで「『密室殺人』の何割かは作者のエディプス・コンプレックスを隠された動機とするだろう」と述べている。つまり密室は母胎のシンボルであって、被害者に擬された父をそこで殺すことで、作者はひそかな願望を満たすという…

あのタイプライターは売れたのか

きのうは久しぶりにぽかぽかといい陽気になったので国立まで足を延ばした。まずは三日月書店に寄って豊島與志雄の『秦の憂愁』『山吹の花』他何冊かを買った。勘定のついでにあのアラビア語タイプライターは売れましたかと聞いてみると売れなかったそうだ(…

検閲を歓迎(?)するボルヘス

小鷹信光氏といえばハードボイルドの名翻訳者・研究家として有名だが「ポルノ」という略称を日本語に定着させた人でもある(どこかの出版社が週刊新潮の氏の長期連載「めりけんポルノ」の完全版集成を出さないものだろうか)。その背景にはかのオリンピア・…

ふたたびタレコミあり

金沢から戻ってきた人からふたたびタレコミあり。昨日孫引きで引用したラルボーの書評は、その全文が国書刊行会『ボルヘスの世界』に高遠弘美氏の訳で載っているという。どれどれと見てみると本当にあった。 この『ボルヘスの世界』という本は、二十年以上前…

ボルヘス『審問』に驚くラルボー

先週の洋書まつりで買った本の中にヴァレリー・ラルボーの伝記があった。謎のダブリ本の群れの中の一冊である。著者はベアトリス・ムスリという人で1998年にフラマリオンから出ている。この本によればボルヘスはラルボーに『審問』を献呈したらしい。『続審…

川野芽生選書フェア

紀伊国屋書店で開催中の「『月面文字翻刻一例』刊行記念川野芽生選書フェア」、その中の一冊に『夜毎に石の橋の下で』を選んでいただきました。川野芽生さん、ありがとうございます。もう十年も前に出した本ですが、こんなふうに若い世代にも受け入れられて…

『本の幽霊』

先週洋書まつりに行ったついでに東京堂書店をのぞいたら西崎憲さんの新刊『本の幽霊』があった。奥付によれば9月30日の発行だったそうだが、不覚にも全然知らなかった! 冒頭の短篇「本の幽霊」の語り手はむかしロンドンの幻想文学専門古書店から届くカタロ…

『O嬢の物語』の叙述トリック

倉阪鬼一郎さんのミステリには「壮麗な館らしく描写されたものが実は〇〇だった」というのがかなりある。講談社ノベルスで出たもののうち半数以上はそうではなかろうか。いっぽうレア―ジュの『O嬢の物語』『ロワッシーへの帰還』の二冊からなるO嬢二部作も、…

田村書店の不思議な出品物

昨日と今日は洋書まつり。今回は三日月書店さんがアラビア語のタイプライターを出品している。もしかしてウケ狙い? それとも誰か買うのだろうか。例によって田村書店さんの本が奥の壁面のかなりの部分を占めている。今回は新品同様といった感じのフランス書…

同じウダルでも大違い

またボルヘスが訳せるといいな、今度は伝記を訳したいなと思いながら未練がましく西和大辞典をぱらぱらめくっているとcapicuaなる変な単語に出くわした。 ようするに岡嶋二人の山本山コンビみたいに、逆から読んでも同じになる単語や数字のことを言うらしい…

『九人の偽聖者の密室』

将来自分も「奇想天外の本棚」を企画するようになったときのために(妄想)、何かの参考になるかと読んでみた。作者のバウチャーは1911生まれで、この『偽聖者』は1940年の出版だから、バウチャーが二十歳代で書いた小説になる。なるほど作家やら警部補やら…

S蔵書との照合

「プヒプヒ版・奇想天外の本棚」の中で、澁澤龍彦蔵書と共通しているものはどれくらいあるだろうと思って調べてみた。雨の降る朝にはついこういうことがしたくなる。結果は十二冊中五冊。ただしベレンの本で澁澤書庫にあったのは『サバトの女王』ではなく『…

タレコミあり

昨日のブログを読んでくださった方からさっそくタレコミがあった。国書刊行会から近々アーサー・マッケンの自伝が出るそうだ。それも南條竹則氏の訳で!おそらく今頃は南條氏のもとに不幸の手紙が矢のように届いていることだろう。『あくび猫』によれば「あ…

プヒプヒ版・奇想天外の本棚

国書刊行会パンフレットによれば山口雅也氏が「製作総指揮」という、「奇想天外の本棚」があちこちで話題を呼んでいるようです。内容に関しては三門優祐氏のブログ深海通信 はてなブログ版が整理されていて便利です。こんなふうに実現可能性無視で好き勝手に…

『烙印』

今月の宇陀児第二弾も読み応えがあった。強いて集中のベスト3を挙げるとすれば以下のようになろうか。「決闘街」——良心の呵責からおかしくなりかけている二人が決闘を望みながら果たせず、やり場に困った不完全燃焼の感情が、ふとした偶然をきっかけにとん…

『本の雑誌10月号』

『本の雑誌』十月号の特集は「あなたの知らない索引の世界」。そこに「この本の索引がすごい!」という読者アンケートがある。そこでまたもやエゴサーチの鬼と化し、「ドレドレ誰か『記憶の図書館』を挙げてくれてるかな」と淡い期待とともに読んだ。だが当…

防腐剤無添加

『アーモンドの木』における和爾さんの訳文を爽快にしているのは、たとえば、「へスパー号ネタはさんざん出尽くした感がある」の「~ネタ」とか、「祖父の資産はほぼ溶けてしまい」の「(資産が)溶ける」のような、新しめの表現の躊躇ない使用だ。古典にこ…

『アーモンドの木』

楽しみにしていた和爾桃子さん訳のデ・ラ・メアが出た。さて今回、和爾さんはデ・ラ・メアをどう料理しただろう。この「料理する」は単なる決まり文句ではなくて、和爾さんの翻訳からは文字どおり原文を包丁でさばいているような感じを受ける。この包丁さば…

同人誌丸出し

最近はDeepLも改善されてきて、すくなくとも徳井や山里が「そうですね」「そうですね」と無意味な相槌を打つことはなくなった。しかしあいかわらず珍妙な翻訳を返してくることに変わりはない。近来の傑作はこれ。 Es scheine sich um einen ganzen Klüngel g…

フラクトゥール

今読んでいるのはドイツで1951年に出た稲生平太郎ばりの神秘小説。しみじみした佳作なので、コロナがいい塩梅に収まれば秋の文学フリマに出そうかなとも思っている。 上の画像はこの本の一部だが、ごらんのとおり、フラクトゥールというドイツ特有の字体で書…

『偽悪病患者』

少し前の角田喜久雄に続いて今度は大下宇陀児の短篇集が創元推理文庫で出た。全二巻の傑作選になるらしく、その前篇にあたる『偽悪病患者』は初期の名作を集めている……とつい書いてしまったが、名作というよりはむしろ怪作奇作実験作と呼んだほうが適切かも…

コトリの宮殿

小野塚力さんから超短編フリーぺーパー「コトリの宮殿」35号を送っていただきました。ありがとうございます。関根朝子さんの挿絵が点綴されたオールカラーの瀟洒な小冊子です。これが無料とは! 校正がずさんなのにバカ高い値をつけるどこかの同人出版とは大…

「北の橋の舞踏会」

北の橋の舞踏会・世界を駆けるヴィーナス (マッコルラン・コレクション 2)作者:ピエール・マッコルラン国書刊行会Amazon 『黄色い笑い/悪意』の感想ではついうっかりマッコルランの作風を「出たとこ任せ」などと書いてしまった。これはまったくの濡れ衣だっ…

マッコルラン・コレクション2

待ちに待ったマッコルラン・コレクションの第二巻が出た。今度の表紙は赤天鵞絨である。もしかしたら『黄色い笑い』が黄天鵞絨だったように、集中の「薔薇王」にちなんだ赤なのかもしれない。すると第三巻はどうなるんだろう。タイトルからすれば黒天鵞絨に…

叙述トリックとストリック

『狩場の悲劇』の解説を読んだら、これは叙述トリックの一種である、というようなことが書いてあった。いや、それはいくらなんでも違うでしょう、と自分のようなオールドファンは思うのだが、ネットで検索してみると、「叙述トリック」を「語り手=犯人」の…

『お住の霊』

お住の霊: 岡本綺堂怪異小品集 (932;932) (平凡社ライブラリー 932)作者:岡本 綺堂平凡社Amazon 湯田伸子のマンガに「ラジオ・ダルニー」というのがある。この作品では日本が第二次大戦で勝利していて、主人公の女性は大連(ダルニー)の放送局でディスクジョ…