仕事始め!

誰かが澁澤龍彦を語った文章で、「日本人っていうのは結局モーレツ主義なんだよ!」と自嘲しながら澁澤が旅先でも仕事をしていたという話を読んだ記憶がある。ひょっとしたら贋の記憶かもしれないけれど、かの澁澤にしてそうなのだから、拙豚ごときが一杯機…

仕事納め!

去年の夏あたりからずっとやっていた翻訳がようやく完成しました。一行45字一ページ19行で印刷すると1200ページを越えるという大作です。 身代金の受け渡しなんかでは上と下だけが本物のお札であとは全部白紙というのがあるみたいですが、この画像は違います…

予言大的中

マルセル・シュオッブ全集作者:マルセル・シュオッブ発売日: 2015/06/26メディア: 単行本 二か月ほど前のブログで「いつまでもあると思うな国書本」と注意を喚起したら、その言葉が讖をなしたか、なんと本当に『マルセル・シュオッブ全集』が品切増刷未定に…

あとのあとになって

「あとになって」と題したほぼ一年前の日記で、鈴木信太郎訳ヴィヨンの「疇昔の美姫の賦」の中の「疇昔」の読みがわからないという話をした。どういうわけか現行の岩波文庫『ヴィヨン全詩集』では「疇昔」にルビをふっていないのである。 ところが押し迫る年…

遍在するシャーロキアン

スペイン語大辞典発売日: 2015/09/25メディア: 単行本 訳あってスペイン語の辞書を穴の開くほど読みまくる日々が続いている。今日も土曜だというのに朝早くから白水社の『スペイン語大辞典』とにらめっこをしていたのだが、思わずわが目を疑う例文に出くわし…

汝90°以上開く勿れ

すでにあちこちで話題の『ダフォディルの花』をようやく入手した。装丁といい内容といい、帯に書いてある「うつくし、うつくし、うつくし」が素直に首肯できるような本だった。 しかし一つだけ残念なのは、綴じが網代綴じであることだ。この造本とこのページ…

暮し方を変えてしまう

『観念結晶大系』を読んだ。しかしこれは読後ただちに小賢しくあれこれ感想を述べるような本でない。ふと思い浮かんだのは「暮しの手帖」のキャッチフレーズだ。 これは あなたの手帖です いろいろのことが ここには書きつけてある この中の どれか 一つ二つ…

Prime終刊

わが陋屋のあるC市は道路陥没でだんだんと有名になりつつある。川一つ越えたところにあるお隣のK市には鋼管通りという通りがあるそうだ。いかにも頑丈そうな通りでうらやましい。 だがC市の真の名物はけして道路陥没などではない。市立図書館発行のコピー誌…

ボルヘス、噴飯文庫本を評す

『ファンタジウス・マルレア』の話が出たついでに関連した話題をひとつ。2016年に噴飯文庫の一冊として出たH.G.ウェルズ『星の児 生物学的幻想曲』(このブログでの感想はここ)を、やはり当時の新刊だった『クローケー・プレイヤー』といっしょにボルヘスが…

遠征と本の購入

今日は西荻の盛林堂書房まで遠出をして『ファンタジウス・マルレア・悪魔の王国』と『CRITICA』最新号を買ってきた。ヴェルヌ研究誌『Excelsior!』は売り切れたらしく置いていなかった。残念。 『ファンタジウス・マルレア・悪魔の王国』は訳書刊行が何度も…

Re-ClaM五号到来

定期購読してしているRe-ClaM5号が到来した。早いものでもう5号である。今回の特集は「新/ロス・マクドナルド巡礼」。巻頭に法月綸太郎氏の特別寄稿「フェアプレイの向こう側」が掲載されている。これはまたとない贈物だ! それはいいのだけど、最初のペ…

やめられない止まらない

新紀元社様より『幻想と怪奇』4号をご恵贈にあずかりました。ありがとうございます。幻想と怪奇 4 吸血鬼の系譜 スラヴの不死者から夜の貴族へ発売日: 2020/11/20メディア: 単行本(ソフトカバー) 今回のテーマは「吸血鬼の系譜」。この吸血鬼ものというの…

謎の覆面ゴールキーパー

初歩からのシャーロック・ホームズ (中公新書ラクレ, 706)作者:北原 尚彦発売日: 2020/11/06メディア: 新書 発売するやたちまち怒濤のごとく売れに売れ、わずか一週間で重版が決まったといわれる北原尚彦さんの『初歩からのシャーロック・ホームズ』。勢いに…

六分の狂気四分の熱

文豪怪奇コレクション 幻想と怪奇の夏目漱石 (双葉文庫)作者:夏目 漱石発売日: 2020/11/12メディア: 文庫 この前の三島由紀夫に続いて、金沢にあるといわれる秘密基地からまたまた驚愕の文豪アンソロジーが放たれた。 この本を開いてすぐ感じられるのは、「…

いつまでもあると思うな国書本

マルセル・シュオッブ全集作者:マルセル・シュオッブ発売日: 2015/06/26メディア: 単行本 朝日新聞夕刊で礒崎純一さんの「編集者がつくった本」の連載が昨日から始まった。漏れ聞く噂によればあの山尾悠子さんまでが宣伝に駆り出されているらしい。 その第一…

翻訳箱売れ行き好調

国書刊行会の経理から印税支払通知書が来ました。 これによると去年の六月に出した『怪奇骨董翻訳箱』は今年一年くらいで365冊売れたようです。ほぼ一日に一冊、全国のどこかの書店で売れていたことになります。 おおざっぱに計算するとこれで初版部数の七割…

中井英夫フランスに進出!

これは本多正一さんから教えてもらったのですが、中井英夫の短篇「鏡に棲む男」の仏訳が”La Nouvelles du Japon.com”というサイトに掲載されています。ちゃんと契約を交わした上の訳出といいますから、本格進出といっていいでしょう。 この「鏡に棲む男」と…

在野の底力

片山廣子幻想翻訳集 ケルティック・ファンタジー (銀河叢書)作者:廣子, 片山発売日: 2020/10/26メディア: 単行本 これはすばらしい本が出た、といってもこのブログを読んでいる皆さんは片山廣子(=松村みね子)のすばらしさについては先刻ご承知であろうから…

洋書まつり初日

一昨日と昨日行われた洋書まつりに行ってきた。コロナ禍のおかげで一時は開催が危ぶまれていたようだが、無事開催されたのはめでたい。河野書店のブログによれば、三軒の古書店が「本年の開催を強く希望した」ということだ。ありがたいことである。この三店…

また佐野洋を読んだ

また佐野洋を読んだ。今度は『同名異人の四人が死んだ』。 人気作家名原信一郎がある地味な地方紙に『囁く達磨』という中篇小説を連載した。それからかなりたって、不思議な事件が起こる。その中篇では四人の人物が死ぬのだが、その作中の四人と同姓同名の四…

『アエネーイス』の三種の訳

ラウィーニア (河出文庫)作者:ル=グウィン,アーシュラ・K.発売日: 2020/09/08メディア: 文庫 ル=グウィンの『ラウィーニア』が文庫になった! 拙豚はル=グウィンはほとんど読んでいないのだが、読んだ中で一番好きなのはこれだ。訳者あとがきにはウェルギリ…

早稲田古書街散策

ひさしぶりに高田馬場駅でおりて早稲田古書街へ行く。まずは駅前の芳林堂書店。なんと海外文学の棚がひどく縮小され、片隅に追いやられている。あたかも「銀の仮面」に出てくる老婦人のごとし。それでもきっと書店員の方の矜持があるのだろう、厳選されたい…

本の雑誌10月号

「すごい机の写真が載っている!」と巷で話題騒然の「本の雑誌」10月号を買ってきた。 たしかにすごい! 机の写真にも驚いたが、もっと驚いたことがある。突撃インタビューのトップバッターに、特に名を秘す版元の、特に名を秘す編集者の方が登場している。…

得体の知れないインタビュアー

Q&A作者:恩田 陸発売日: 2004/06/11メディア: 単行本 以前宮部みゆきの『理由』をこのブログでとりあげたとき、何者ともわからないインタビュアーによるインタビュー形式がこの作品を成功させていると書いた。同じく「何者ともわからないインタビュアー」が…

まだ佐野洋を読んでいる

まだ佐野洋を読んでいる。佐野洋というのはなにしろ読んだとたんにキノコの惑星のごとくスカーと忘れられるので、何度でも読み返しがきく。 でも何度読んでも面白い。土屋隆夫や天藤真の作品集成を出すという偉業を成し遂げたS元S理文庫はなぜ佐野洋に目をつ…

不思議な印刷ミス

手持ちの辞書に不思議な印刷ミスがあるのに気づいた。買ったのは何年も前だが、印刷ミスに気付いたのはつい最近のことだ。 下の画像を見てほしい。"demetritorio" の "de" のところが破れているのが見えると思う。拙豚が破ったわけではない。最初から破れて…

チャンドラーのベストとワースト

レイモンド・チャンドラーの残した七つの長篇のうちのベストといえば、『長いお別れ』であるのは衆目の一致するところだと思う。数年前の日記に書いたような、いくつもの解釈ができる余韻あるラストもいい。それから文章もいい。片岡義男氏と鴻巣友季子氏の…

「深い健康」

怪談入門 (平凡社ライブラリー)作者:乱歩, 江戸川発売日: 2016/07/08メディア: 文庫 9月2日の日記で触れた「人間性という地獄の劫火」と、ペアのように思い出される乱歩の言葉がある。「石子責め、鋸引き、車裂きなどの現実を享楽し得るものは、神か無心の…

『短編ミステリの二百年 3』

小森収氏編纂の『短編ミステリの二百年』(創元推理文庫) は早いものでもう第三巻が出た。しかも巻を重ねるごとに分厚くなっていく。あまりのボリュームに圧倒されて一巻からずっと積んだままにしてある。 ずっとペースを乱さずに着々と(読むのが追いつかな…

『つわものども』

第一級の天才を持つ、小説を書くために生まれてきたような作家が書いた小説を読むのはなんと楽しいことだろう。ウォーもまさしくそうした作家のひとりで、読む前から面白さは保証されているようなものである。 主人公ガイ・クラウチバックは由緒ある旧家の末…