日ごろから愛読している『銀髪伯爵バードス島綺譚』によると、杉山淳さんの『怪奇探偵小説家 西村賢太』がヤフオクで59,000円で落札されたそうです。すごいですね。大好評を博していることがうかがわれます。ちょっとこの本に興味がわいてきましたが、肝心の…
カラーページが16pもついた超椀飯振舞・大豪華冊子『国書刊行会50年の歩み』を送っていただきました。どうもありがとうございます。 表紙からして眼とかドクロとかバラバラの手足とか気色の悪いゴシック趣味が横溢してますが実は中身はもっとすごい。「用…
『本の雑誌』3月号の特集はどんでん返しである。ついにどんでんが来たか!——と言うと違う意味になってしまうが、ともかく表紙にはでかでかと「どんでん返しが気持ちいい!」とうたわれている。さっそく特集の驥尾にふし、読後あぜんとしたどんでん返し七傑…
腿太郎伝説(人呼んで、腿伝)作者:深堀骨左右社Amazon あの深掘骨氏の新作が今月24日に出るというので世間は騒然としている。しかも岸本佐知子氏の推薦つきで。きっと「他の誰にも絶対に書けない小説を書こう」という固い決意があるのだろう。あるいは最初…
あるアンソロジーのために怪談の短篇を一つ訳した。そのとき少し悩んだのは怪談に訳註はどうあるべきかということだ。訳したのはストレートな怪談で、おそらくポーの影響をたっぷり受けている。すなわちあらかじめ計算された展開のなかで雰囲気をジワジワと…
『都筑道夫の読ホリデイ』にこんな ↑ 一節がある。「やたらに本が消える」とはおだやかでない。大変失礼な想像で恐縮なのだけれど、大胆な想像をあえてすれば、もしかしたら都筑夫人は、都筑氏の留守中に本が届くと「ああまた本が増えた。片付かないったらあ…
『みすず』の読書アンケート特集を見ていたら、宮下志朗氏が『高丘親王航海記』の仏訳をあげておられました。仏訳が去年出てたんですね。全然知らなかったので驚きました。ちなみに訳者は先に『ドグラ・マグラ』を訳されたパトリック・オノレ氏です。検索し…
国書刊行会史上初の発売前増刷を達成したという『迷宮遊覧飛行』。前に『アフター・クロード』でアマゾン順位三ケタは初めて見たとこの日記で書いたら、『三ケタなんてしょっちゅうだ!』と版元からお叱りをいただきましたが、さすがに発売前から三ケタとい…
全国のクラシックミステリファンが首を長くして待ったであろう怪作家 J.T.ロジャーズの中短篇集がついに出た。しかも夏来健次氏の訳で。さっそく一読したが、期待を裏切らない響きと怒り——じゃなくて笑いと驚愕に大満足の一冊だった。集中の作品の多くは三文…
(これまでのお話)『本の雑誌』2月号を読んだプヒ氏は、年が明けてまだ一冊も本を買っていないことを反省した。そこでさっそく本屋に出かけた。そこで買ったのが去年買い逃していたこの本 ↓ である。 買った本を積読にしないコツ。それは「一度に一冊しか…
遅くなりましたが 1/15 文学フリマ京都に来てくださった皆様、ありがとうございました。おかげさまで売り上げも上々でした。今回の京都行きの目的は三つありました。1.文学フリマに出店する。 2.文学フリマで『蒼鴉城』を買う。 3.烏丸御池駅構内の大…
思いがけぬプリンタ不調のため、昨年11月の文学フリマ東京で新刊を断念せざるを得なかったプヒ氏。雪辱戦とばかりに、明日に迫る文学フリマ京都のためにプリンタ新調という暴挙に出た。さいわいブラザーから二万円ちょっとでカラーレーザープリンターが出て…
本の雑誌476号2023年2月号本の雑誌社Amazon 『本の雑誌』2月号で喧伝された怪異買書教。その教義はただ一つ——「本を買え。天に届くまで積み上げろ」。そうすれば30年後か40年後に御利益があるという。それから信者の間ではこんまりは人心を惑わす悪魔の使い…
『本の雑誌』2月号の特集は「本を買う!」。特集ページを開くといきなり中野善夫さんが「本を買え。天に届くまで積み上げろ。」と号令している。おそろしく気合が入った特集である。池澤春菜さんの『SFのSはステキのS』に付されたCOCOさんの挿絵をほうふつ…
新年早々、うれしいニュースが流れてきた。あの伝説の彼方に消えたと思われた工藤幸雄訳『サラゴサ手稿』がついに出版されるという(情報ソースは昨年末の「読んでいいとも年末特別篇」での東京創元社の発表)。「今二十一世紀に入って最初の訳書がフランス…
わが家には『箱の中のあなた 山川方夫ショートショート集成』が二冊ある。別に読書用と保存用とかそういうものではない。痛恨のダブリ買いなのである。昨日、書店で「堂々完成」と帯に書いてある『箱の中のあなた』を見て、「堂々完成」を「堂々完結」と空目…
叙述トリックとフーダニットの両立という点で見逃せないのが、依井貴裕のある長篇である。ここではA,B,Cと三つの事件が語られる。ところがそれが叙述トリックで、実際はC,B,Aの順に事件は起こっている。そしてフーダニットの面からいえば、叙述に騙された人…
ロナルド・A・ノックス大司教いわく、 支那人を登場させてはならない。——なぜならないのか、その理由を説明するのはむずかしい。われわれ西洋人には支那人を目(もく)して、頭脳においておそろしく秀でており、道徳方面では冷酷単純である、という風に考える…
超動く家にて (創元SF文庫)作者:宮内 悠介東京創元社Amazon 本格ミステリには『毒入りチョコレート事件』に(おそらく)はじまる「多重解決もの」というジャンルがある。たとえば貫井徳郎のある作品では、ある解決での探偵役が、次の解決では犯人にされる…
神のロジック 次は誰の番ですか? (コスミック文庫)作者:西澤保彦コスミック出版Amazon 本格ミステリと叙述トリックの役割分担という点で興味深いのは西澤保彦の『神のロジック 人間 (ひと) のマジック』である。これは西澤保彦の数多い作品のなかでも屈指の…
まだまだ続くミステリの話。誰も読んでないような気もするけれど、年寄りというのは物覚えが悪く、いったん思いついたことでも次の瞬間には忘れてしまう。だから忘備のためにここにメモしておくのである。さて、19日の日記で『聖女の救済』の叙述トリックに…
またまた昨日の続きである。どうもミステリの話をはじめると、わが身は山本リンダと化して、どうにもとまらなくて困る。それはともかく、昨日は、『聖女の救済』と『容疑者Xの献身』はほとんど同じ構造をしているのに、前者には「純粋本格」を感じ、後者は本…
(これは一昨日の日記の続きです)『容疑者Xの献身』のトリックは途中で見当がついた。といっても推理でわかったわけではない。似たトリックを使った某長篇を前に読んでいたので「ああ、あの手か」と思ったにすぎない。ご存知の方も多いと思うが、この某長篇…
(昨日の続き)日が暮れる頃にはやや回復したので、『CRITICA』のバックナンバーを読んで過ごした。これは『「新青年」趣味』『Re-Clam』『CRITICA』というミステリ評論同人誌御三家のなかでは、もっとも「熱い」雑誌だと思う。評される対象と評する人の距離…
先日コロナワクチンの四回目を打った。この前モデルナを打ったときは副反応が少し重かったので、今度はファイザー(オミクロン株対応)にした。だが副反応は来た。当日は腕が痛いくらいで他は大丈夫だったが、夜中にガタガタと震えが来て、朝目が覚めても床…
かつての名アンソロジーを今に蘇らせるシリーズの第二弾『吸血鬼』がもうすぐ出ます。不肖わたくしも巻頭の中篇「謎の男」の訳で参戦しております。 この「謎の男」を書いたK. A. フォン・ヴァクスマン(1787-1862) は当時は人気作家だったみたいですが今はほ…
久しぶりに起動したプリンターが不調*1で文学フリマ新刊は断念。いずれ盛林堂さんにお願いして通販しようと思っています。というわけで代わり映えしない頒布物で申し訳ありませんが、よろしければ明日は会場でお会いしましょう。 *1:スジが出る。たぶんイメ…
文学フリマ事務局から入場証が送られてきた。久しぶりだから新刊を出したいがハテどうなることか。
国書刊行会の創業50周年記念小冊子『私が選ぶ国書刊行会の3冊』が届いた。ありがとうございます。さっそくエゴサーチの鬼と化し、ドレドレ自分の訳書を選んでくれた人はいるかなと鵜の目鷹の目でさがした、だがどこにもない。やはり自分は国書的には新参者…
松山俊太郎翁は『綺想礼讃』のなかで「『密室殺人』の何割かは作者のエディプス・コンプレックスを隠された動機とするだろう」と述べている。つまり密室は母胎のシンボルであって、被害者に擬された父をそこで殺すことで、作者はひそかな願望を満たすという…