桜庭一樹

『名探偵の有害性』

桜庭一樹さんが『紙魚の手帖』の4月号から『名探偵の有害性』の連載をはじめた。これがめっぽう面白い。名探偵の有害性とは何ぞや。もちろん中にはメルカトル鮎みたいに、有害といってもいい名探偵はいるけれど……舞台はパラレルワールド風の現代日本。この…

尻の火は消えず

12日に文庫解説を送稿し、14日に雑誌小特集のゲラを戻したので、あとは短篇をひとつ訳せば今月の締め切りはオールクリアである。それが終われば夏の終わりまでに長篇をひとつ訳して、漠然としたプランを固めて、それからもうひとつ別の訳書の注と解説がある…

最後の姑

地獄 英国怪談中篇傑作集 (幽クラシックス)メディアファクトリーAmazon 「走って!帰ってきた!桜庭ほんぽっ!」。五人目の姑はあんまり知らない人だった。知っているのは国籍と性別くらい。この姑の本を読むことは一生ないんじゃないかな……というのもまずい…

姑とロールキャベツ

東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)作者:石井 好子河出書房新社Amazon 先週の土曜は松山翁の講義の日だった。ねじの回転にも行きたかったが、惑星直列のごとく日が重なっては仕方がない。後髪を引かれる思いで消人栓を通り過ぎた。だがしかし…

姑の視点は天使

紀伊国屋書店の桜庭ほんぽっ! 「姑にしたくない女」の第二弾はヴァージニア・ウルフ。おお、なかなかに鋭い選択! 小説作法上の用語に「視点」というものがある。中島梓の『小説道場』でも口を酸っぱくして語られていたが、ことにミステリではこの問題はな…

桜庭ほんぽっ!の怪いろいろ

*本のおかわりもう一冊 (桜庭一樹読書日記)作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/09/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (16件) を見る* 数日前から開催されていると言われる桜庭ほんぽっ!に行ってきた(紀伊国屋のほう) 。クリ…

砂糖菓子の弾丸

*傷痕作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/01/12メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログを見る* これもまたすばらしい作品だ。スーパースターが亡くなったあとの真空地帯にたたずむ少女とその周囲の大人の物語。直木賞を取っ…

ドリル頭の誘惑

*GOSICK VII ゴシック・薔薇色の人生 (角川文庫)作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2011/03/25メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 61回この商品を含むブログ (53件) を見る* スベスベマンジュウガニの人の日記…

帰ってきた桜庭一樹。

*小説すばる 2010年 10月号 [雑誌]出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/09/17メディア: 雑誌 クリック: 36回この商品を含むブログ (3件) を見る* 桜庭一樹がミステリの世界に帰ってきた! * 男は、資産家に婿入りした翻訳家。女は、古本屋の2階に間借り…

「私の男」をめぐって5(σ加法族の巻) 

私の男作者:桜庭 一樹発売日: 2007/10/30メディア: 単行本 ここらで「私の男」で使われている技巧に話をもっていこう。 まず、時間が流れる、というのはどういうことか。それは情報量が増えるということだ。(時間は流れないと言ってる人も広い世の中にはい…

「私の男」をめぐって4(遅刻魔の巻)

私の男作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/10/30メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 442回この商品を含むブログ (447件) を見る とここまで来れば、ヒロインが遅刻魔であることも、意味のない設定ではないことに気づくはずだ。 おっ今日…

「私の男」をめぐって3(カメラオブスキュラの巻)

私の男作者:桜庭 一樹文藝春秋Amazon ことほどさように時間の仕掛に技巧がめぐらされているこの作品であるが、ここにもうひとつの仕掛がある。いうまでもなくそれは、昔のカメラ・オブスキュラ(幻灯)の発展形であるところのカメラと、それから、真正のカメ…

「私の男」をめぐって2(マイナス・ゼロの巻)

私の男作者:桜庭 一樹文藝春秋Amazon 「私の男」では時間は逆行するばかりではない。どうやら循環もしている。第一章でのヒロインの年齢が24歳、そして最終章での「私の男」の年齢が25歳なのは偶然ではあるまい。人によってはドン引きする「おかあさぁん」も…

「私の男」をめぐって1(種への旅の巻)

私の男作者:桜庭 一樹文藝春秋Amazon 時系列の扱いとテーマからは夢野久作の「瓶詰の地獄」を連想させる。しかしそれはもちろん外見上の類似にすぎない。より本質的に通底しているのはカルペンティエールの「種への旅」だろう。時系列に沿ってストーリーをた…

サムワンをもとめて

青年のための読書クラブ作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/06メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 86回この商品を含むブログ (254件) を見る ダンテが地獄・煉獄・天国からなる一大架空伽藍をつくりげたのは、もとはといえば二十四歳で亡…

物語のない今

赤朽葉家の伝説作者:桜庭 一樹東京創元社Amazon 個性豊かな登場人物たちが綾なす、物語らしい物語を久しぶりに読んだ。第一部から第三部まで一冊ずつで全三巻、とまでは行かないまでも「楡家の人々」の長さくらいにはこの世界に浸っていたかった。しかし「時…

赤朽葉家発売!

赤朽葉家の伝説作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2006/12/28メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 148回この商品を含むブログ (506件) を見る『赤朽葉家の伝説』のサインを整理番号1番でゲットするため、夜行バスで出てきて、シャッターが…

職業カラテカ

別冊 文藝春秋 2006年 09月号 [雑誌]文藝春秋Amazon 桜庭一樹の連載「私の男」がはじまった。舞台は2008年、主人公は結婚したばかりの25歳の女性。連載一回目から物語は急速に展開し作者の意気込みをうかがわせる。傑作の予感。「少女七竈〜」のときも思った…

プラハのカー

ということで池袋ジュンク堂B1「ドドド書店――桜庭一樹&桜坂洋が贈るこの一冊!」まで確認しに行ってきました。おおやはり、そこに鎮座ましますのは、ふともも町の角屋敷/こんもり茂った植込に、じゃなくて、まごうかたなき我が訳書! ありがとう桜庭さん!…

地下に驚くべきものあり

12月24日から池袋ジュンク堂B1で「桜庭一樹&桜坂洋が贈るこの一冊!(仮)」というフェアがあるらしい。 桜庭一樹さんのオフィシャルサイト Scheherzade12月20日のところに棚の写真が。三冊くらいは書名が分かる気が …… カーはないのかな …… 文庫の束らしき…

非セカイ系「せかい」

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2005/10/07メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 57回この商品を含むブログ (265件) を見るきょう神保町に行ったら、「日本箱庭療法学会第19回大会」というプラカードを持っ…

神西清効果

野性時代 vol.23 (2005 10) (23) KADOKAWA文芸MOOK 23出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2005/09メディア: ムックこの商品を含むブログ (2件) を見る桜庭一樹「辻斬りのように」の冒頭に近い部分に、前後の文脈から離れて突然謎のような一行が挿入されている…

逆転世界

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2005/09/22メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 37回この商品を含むブログ (313件) を見る抜群にうまいストーリーテリング*1に乗せられ一…

おじさんには向かないサイン会

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2005/09/22メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 37回この商品を含むブログ (313件) を見る意を決して池袋ジュンク堂に電話。桜庭一樹さん…

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)作者:桜庭 一樹富士見書房Amazon 滅・こぉるさんの気合の入った感想に興味をひかれて読んだ。・・・うわーやられた!! かわいい女の子のイラストにだまされた〜「『砂糖菓子〜』そのものはミステリでは…