O嬢

『O嬢の物語』の叙述トリック

倉阪鬼一郎さんのミステリには「壮麗な館らしく描写されたものが実は〇〇だった」というのがかなりある。講談社ノベルスで出たもののうち半数以上はそうではなかろうか。いっぽうレア―ジュの『O嬢の物語』『ロワッシーへの帰還』の二冊からなるO嬢二部作も、…

『Oの物語』メモ4:幸福と快楽と

完訳Oの物語作者:ポーリーヌ・レアージュ学研プラスAmazon 前回のメモで不用意に「マゾヒズム」という言葉を使ってしまったが、実はこの言葉は『Oの物語』を語るうえで絶対に使ってはいけない言葉だった。すでにしてジャン・ポーランが序文で、マゾヒズムと…

『Oの物語』メモ3:Unio Mystica

完訳Oの物語作者: ポーリーヌ・レアージュ,高遠弘美出版社/メーカー: 学習研究社発売日: 2009/07メディア: 単行本 クリック: 44回この商品を含むブログ (10件) を見る* 『Oの物語』第二部の冒頭に序文のような形で置かれた「恋する娘」という文章の終わり近…

『Oの物語』メモ2:プラトニスム

完訳Oの物語作者:ポーリーヌ・レアージュ学研プラスAmazon ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムは自他ともに認めるウルトラ女嫌いで、最後の長篇『大失敗』(1987)はあまりの女性蔑視描写のため、英語版では文章に一部削除がされているという。自然ポルノ…

『Oの物語』メモ1:ヴァリアントマニア

完訳Oの物語作者: ポーリーヌ・レアージュ,高遠弘美出版社/メーカー: 学習研究社発売日: 2009/07メディア: 単行本 クリック: 44回この商品を含むブログ (10件) を見る* 『Oの物語』第一部は二つの書き出しがあって読者をとまどわせる。ちょうどジャズミュー…

文豪怪談・三島集を巡って2(現人神の巻)

三島由紀夫集 雛の宿―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)作者:三島 由紀夫筑摩書房Amazon 「家畜人ヤプー」「O嬢の物語」そして「英霊の聲」。これら三作を読むに耐えない書として、まとめて屑篭に放り込むのはまあいいだろう。態度が一貫しているから。しかしどれ…

レム追悼本

地下室の手記 (新潮文庫)作者:ドストエフスキー新潮社Amazon SFマガジンの特集でこれまでの既訳作品も判明したので、だいたいの目次構成が固まりました。ポーランド語は一字も読めないのでもちろん全部重訳(最後のインタビューだけ例外)。 *「『薔薇の名…

レム、「O嬢の物語」を語る

O嬢の物語 (河出文庫 レ 1-1)作者:ポーリーヌ・レアージュ,澁澤 龍彦河出書房新社Amazon 理論的な話がえんえん続いたかと思うと、突如SF作家総まくり罵倒大会がはじまる「SFと未来学」も不思議な本だったが、「偶然の哲学」も当方の知識不足および語学力不足…