腿太郎の誕生

 

あの深掘骨氏の新作が今月24日に出るというので世間は騒然としている。しかも岸本佐知子氏の推薦つきで。

きっと「他の誰にも絶対に書けない小説を書こう」という固い決意があるのだろう。あるいは最初期の都筑道夫のように、ミステリその他の本をあまりに読み過ぎて変な小説しか書けなくなったのか。いずれにせよ深堀氏はおそるべき寡作である。この前(といっても何年も前)に読んだのは郷田三郎が出てくる短篇で、その何年か前にはお岩さんとかお菊さんとか小平次とかが容疑者になる本格ミステリ短篇、そのまた何年か前は「キーポッポ」と、ほとんど何年周期かで地球に近づく彗星みたいなものだ。

「腿太郎」というからには美脚フェチなのだろうか。それとも鳥モモ肉が大好きなのか、それとも腿太郎電鉄という路線が日本のどこかにあるのか。いやいやそんなありきたりの設定であるわけはない。かならずや人類の手がまだ触れていない恐ろしい世界が開けているはずだ。