マリオ・プラーツ

キャベツのようなもの

生の館作者:マリオ・プラーツみすず書房Amazon もしあなたの奥さんが薔薇の花の刺繍をしていて、しかしできあがったものが薔薇よりキャベツに似ていたとしたら、あなたはどうしますか。たぶん何も言わないのが家庭の平和のためにはベストだと思いますが、わ…

クラサカ風の館

生の館作者:マリオ・プラーツみすず書房Amazon 倉阪鬼一郎さん、日本歴史時代作家協会賞受賞おめでとうございます! 今日はそれを祝してクラサカ風の館の話をしましょう。 倉阪さんのミステリの中には「立派な館かと思ったら実は〇〇だった」というのが何冊…

優雅な下品

カニバリストの告白作者:デヴィッド・マドセン角川グループパブリッシングAmazon サドの小説とサドの書簡のあいだには少しばかりへだたりがある。――凄惨と退屈とがまだらに混じる小説は通読が苦痛だが、書簡は読んでたのしい。なぜならそこには彼の小説に乏…

大家にのみ許されたワザ

ローマ百景〈2〉―建築と美術と文学と作者:マリオ プラーツありな書房Amazon ありな書房はマリオ・プラーツの「ローマ百景」という本を1999年に出した。そして今回、同著者の「ローマ百景Ⅱ」が出た。「ははあ続編が出たのだな」と、誰しも思うことだろう。百…

七竈なかったあった

うつし世の乱歩 父・江戸川乱歩の憶い出作者:平井 隆太郎発売日: 2006/06/16メディア: 単行本 今日は七竈の発売日のはずだがどこの書店にもない。おかしい、もうエイプリルフールから何か月もたっているのに。三省堂本店の検索機械で調べてみようとしたら、…

鏡と父性は怖ろしい。それから蓮画像も。

大掃除はまだ終わらない。マリオ・プラーツがスペイン旅行記の中でこんなことを書いていた。舞台はアルハンブラ。ハンス・ハインツ・エーヴェルスがポーのグロテスクについて瞑想に耽ったのと同じ場所である*1。 (アルハンブラの)世界が込み入っているのは…

ヴィクトリア朝小説におけるヒーローの凋落(マリオ・プラーツ)

いや読ませます。「安いから買った」なんて失礼なことを書いて悪かった。ディケンズの章をちょっとめくって見ただけでも、「ディケンズはサドの読みすぎで登場人物の性格が歪んだ(p.137)」とか「『エドウィン・ドルード』はマックス・エルンストのコラージュ…