2003-04-01から1ヶ月間の記事一覧
小鳥たち (新潮文庫)作者:アナイス ニン新潮社Amazon この本に収められている短編群は、もともと公表を目的としたものではない。作者アナイス・ニンはシェエラザードとしてこれらの作品を綴ったのだった。つまり、これらの元原稿は、シャーリアル王(あるエ…
…私はボソリとそう呟くと、部屋を出ようとした。そして……そいつに気がついたのだ。"クトゥルフ"だ。 織子の死を悼むため、"クトゥルフ"がこの世につかの間姿を見せたのだ。 "クトゥルフ"の形を見ることはできない。無定形な存在なのだ。ある種の霊気に似てい…
よい機会なのでこれからペルッツの未読作品をつぶしていこうと思った。なにしろ外国語の本というのは、少しでも気の向いたときに読んでおかないと、一生本棚の肥やしとなってしまうから。 その第一弾として、『九時から九時まで』をLily Loreによる英訳で読…
倉阪氏の第三句集。俳句にはまったくの門外漢の拙豚は、これを評するなんておこがましい真似はとてもできないので、代わりに好きな句を書き出してみるなり 皿見れば皿思い出す薄暑かな 竹夫人いつしか玉となりにけり 春の果て紐一本のいのちかな 大海を知ら…
(以下は、素天堂氏の下記コメントに応えたものです) 貴重なご指摘ありがとうございました。虫太郎がクインシーの書からヒントを得てオッチリーエ暗殺説を構想したことは大いに有り得ることだと思います。国書の「ド・クィンシイ著作集」自体は手元にないので…
原題は、The History of Gustavus Adolphus, King of Sweden, Surnamed the Great. by the Rev. Walter Harte, M.A. 拙豚の所持しているのは1807年刊行の第三版である。 この本は虫太郎の座右の書だったらしく、黒死館の数箇所に登場している。最も効果的に…
Web上である種評判のようなので、尻馬に乗って読んでみた。おそらく、このミステリはこの一冊では完結していない。続編があるのではないかと思う。ちょうど乱歩賞応募時の「虚無への供物」のように。なぜなら「犯人はいつ部屋に入っていつ出たか」という肝…
副題は「実例を基にした、実務家のための、治療-および教育-暗示療法施術入門」。その書き出しは「催眠および暗示は殊に近年、教養ある人士ならば皆話題にしており、ほとんどスローガンと化していると言ってもいいほどだ(p.8)」となっており、催眠術に関する…
副題は「歴史および心理学における統計学的研究」。黒死館ではタイトルだけ登場する。 「いや、却って欲しいのはマーローの『ファウスト博士の悲史献』なんですよ」と法水が挙げたその一冊の名は、呪文の本質を知らない相手の冷笑を弾き返すに十分だったが、…
正式なタイトルは『ギリシアの文学および宗教の中のデモンの研究』。黒死館では第三篇第二部の図書室の場面に出てくる。 然し、魔法本では、キイゼヴェターの『スフィンクス』、ウェルナー大僧正の『イングルハイム呪術』など七十余りに及ぶけれども、大部分…
ヴェネツィアからの誘惑―コルヴォー男爵少年愛書簡作者: セシルウルフ,Cecil Woolf,河村錠一郎出版社/メーカー: 白水社発売日: 1994/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る まえがきで訳者は言う。 コルヴォーを広く世に紹介したシモンズが、…
かくて黒死館は、エルンスト『百頭女』ISBN:4309461476と同質なコラージュ・ロマンと見ることもできよう。即ち他から採集してきた素材の切り貼りによって一篇の暗黒小説を作り上げようとする試みである。序文でこの小説を「夥しい素材の羅列」と喝破した乱歩…
この奇書について語るべきことは多い。しかし夜もだいぶ更けたことだし、今夜は虫太郎との関わりを少し触れるだけにとどめようと思う。黒死館では、この書は次のように引用されている。 次に、死後脈動及び高熱に就いては、絞首――廻転――墜落と続く日本刑死記…