2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

アンソロジーの終わりかた

怪奇小説傑作集4<フランス編>【新版】 (創元推理文庫)作者:G・アポリネール 他東京創元社Amazon 澁澤龍彦の編纂による『怪奇小説傑作集4』はアンソロジー史に残る名アンソロジーだと思う。と言うと一知半解の徒は「あれはカステックスのアンソロジーが種本…

ボルヘスとフォークランド紛争

年配の方はご存じだろうが、今から四十年ほど前、フォークランド紛争というものがあった。アルゼンチンの沖合にフォークランド諸島というちっぽけな島々があり、ここは昔から領有権がはっきりしていなかったようだ。というか、イギリスとアルゼンチン双方と…

紙ペーパー

拙豚が小学生のころ、図工の時間に「紙ペーパー」なるものを使っていた。と言うと、えっなにそれ? 紙ペーパーって要するにただの紙じゃないの? と皆さん疑問に思われるだろうが、当時はサンドペーパーのことをそう呼んでいた。「砂ペーパー」とも呼ばれて…

ポーと乱歩

日本探偵小説全集〈2〉江戸川乱歩集 (創元推理文庫)作者:江戸川 乱歩発売日: 1984/10/19メディア: 文庫 ポーといえば乱歩である。少なくとも日本では。その乱歩が、ポーのストーリーを自己流に料理してみたいと思っていたということが、たしか『探偵小説四十…

過去未来の文学

ラテン系の人たちは時間にルーズだというイメージがある。でもなぜかスペイン語やイタリア語の時制はやたらに複雑である。天下の奇観といっていい。むかしはラテン系の人たちも時間にきちょうめんだったのだろうか。それとも文法が煩雑なおかげでその反動が…

文学フリマ岩手開催なるか?

第五回文学フリマ岩手は6/21に予定されている。先日その事務局から出店料の支払案内が来た。サテこれは順調に開催されるだろうか。6月には自粛ブームもさすがに落ち着いていると思いたいが……。出店料の締め切りは3/30ということだ。ぎりぎりまで様子を見て危…

文学フリマ東京開催なるか?

ザ・ナイト・ウォッチアーティスト:キング・クリムゾン発売日: 2019/03/27メディア: CD パンデミック騒動のおかげで、5月6日に予定されている第三十回文学フリマ東京も雲行きが怪しくなってきた。おそらくキーとなるのはこれに先立って5月2~5日に予定されて…

ネクロノミコンはなかった

マドリッドのパリぺブックスなる版元が『ボルヘスの書棚』なる本を出したことをたまたま知り、すかさず注文した。 届いたのはかなりの大型本だ。どのくらい大きいかがわかるように隣に荒俣御大の『世界幻想作家事典』を置いてみた。『書物の宇宙誌―澁澤龍彦…

ぬか漬けのきゅうり

少女地獄 (夢野久作傑作集) (創元推理文庫)作者:夢野 久作東京創元社Amazon 吾妻ひでおの『アル中病棟』によると、アル中になった人の脳は、ぬか漬けのきゅうりが生のきゅうりに戻らないように、もとに戻ることはないのだという。アル中ならぬミステリ中毒の…

みえすいた嘘

ボルヘス『伝奇集』:迷宮の夢見る虎 (世界を読み解く一冊の本)作者:今福 龍太発売日: 2019/12/13メディア: 単行本今福氏のボルヘス本のどこがいいのか。今まで必ずしも十分に論じられていなかった詩作品が俎上にあげられているのも嬉しいし、「読書家ボルヘ…

ボルヘスとパンデミック

殉教 (新潮文庫)作者:由紀夫, 三島メディア: 文庫三島由紀夫の中篇『三熊野詣』に自分の周りをアルコールで丹念に拭きまくる老歌人が出てくる。巷の噂では折口信夫がモデルらしい。むかし読んだときには「えらい神経質な人だな」としか思わず、変な人を見る…

続続吉田訳ポー

吉田健一訳ポーの特徴を見るためには、おそらく「アモンティラドの樽」の最後の一文が最適ではと思う。これの原文は For the half of a century no mortal has disturbed them. In pace requiescat! これを田中西二郎はこう訳した。 あれから半世紀、何者も…

文学フリマ広島の超収穫

遅くなりましたが二週間ほど前に行われた第二回文学フリマで遭遇した恐るべき本を紹介したいと思います。組糸座(くみとざ)という謎のサークルが頒布する十夜木文麦という方の三冊です。下の画像の左から「いろはなとり」「にしのことりことつきのよる/きた…

時間からのポー

ポーといえば気にかかることが一つある。ツイッター界隈を流れる噂によれば、ラヴクラフトの "Colour out of Space" を「宇宙からの色」とか、"Shadow out of Time" を「時間からの影」と訳している本があるらしい。ツイッターというのはデマ生成装置みたい…

続松山翁とポー

モーセと一神教 (光文社古典新訳文庫)作者:フロイト光文社Amazon 松山俊太郎翁のポー解釈は、マリー・ボナパルトの『エドガー・ポー』の影響を受けていたように思う。ここでいきなり脱線すると、この『エドガー・ポー』といい、プシルスキーの『大女神』とい…

続吉田訳ポー

ポーの文章は重い石を積み重ねて城壁を作っていくような感じで、内容はともかくその文体が好きか嫌いかと問われると、まああれだね、ちょっと答えにくいところがある。 むかしむかし、松山俊太郎翁の講義、というか放談がまだ美学校で行われていたころ、佐々…