毒は作品より早く

本の雑誌396号

本の雑誌396号


むかし雀*1仲間だった花笠海月さんから『「詩世紀」における長谷川敬(赤江瀑)』をいただきました。ありがとうございます。花笠さんと彩古さんと共著のかたちで書肆いろどりから出されたものです。また「本の雑誌」の6月号にも長谷川敬に関する彩古さんの記事が載っているようです。
長谷川敬というのは赤江瀑の本名で、高校三年以来「詩世紀」という雑誌に詩を発表するときにはこの名が使われていました。わたしは赤江瀑のよい読者とはとてもいえないけれど、中井英夫の文庫解説の次のくだりだけは心に残ってます。なんと氷沼紅司のモデルだったんですね。

……経歴のうち早稲田系の詩誌「詩世紀」の同人であったという一行からその関係者に訊いてみると、果して二十年ほど前の雑誌でいつも感服していた二人のうちの一人の名が返ってきた。かつて私が氷沼紅司という作中人物を「詩世紀」の同人に擬したのは、実にこの名に魅かれてのことだった。その若く優れた詩人が、いま小説の世界に新しい境地を開こうとするとき、毒はいわば作品より早く作家に充ちたのであろうか。


だからこうしてプレ赤江瀑である長谷川敬の詩業がまとまって紹介されるのはとても嬉しいです。しかも博捜の結果見つかった五十篇余りの詩のひとつひとつに対談形式で短評を付すという大労作です。「悪を沈めてますます輝く海みたいなイメージで読みました」「大学三年生の書く詩じゃないですね」「「うみ」「ちくび」「少年」という三つの単語が象徴的です」「選択された語句は猥雑で退廃度がすさまじい」などなど。どうです、実に食指が動くではありませんか。入手方法などは古書いろどりに問い合わせればわかると思います。

*1:牛込櫻会館管理人がある種の人びとを指して呼んだ言葉。詳細は略。