2021-01-01から1年間の記事一覧
「ことばのたび社」というところがチェコ語の講座を始めたらしい。価格も手ごろだ。ちょっと心が動くではないか。だが己の記憶力にいまひとつ自信が持てずなかなか踏み切れない。 そういうとき思い出すのはボルヘスである。ボルヘスが日本語を習い始めたのは…
平井訳アーサー・マッケン傑作選の創元推理文庫化にわきかえるホラー界であるが、それにちなんで平井ネタをもう一つ。 山川方夫が死の直前までEQMMに連載していた「トコという男」は、一見軽妙な談話風エッセイでありながら、搦め手から攻めた推理小説論であ…
J.G.バラード『燃える世界』が『旱魃世界』というタイトルで山田和子氏の新訳で出た。なんと嬉しいことであろう。しかも今回はイギリス版のテキストが元になっていて、旧訳とは底本の段階で相当に異なる。 わたしは山田氏の「ついてこれない人は無理について…
たまには宣伝を。 今月末に出る『ナイトランド・クォータリー vol.24』にアルヴィン・グリーンバーグ「ホルヘ・ルイス・ボルヘスによる『フランツ・カフカ』」が拙訳で載ります。この短篇はむかしむかしハリー・ハリスン、ブライアン・W・オールディス共編の…
「鏡に棲む男」に続いて「火星植物園」が "Nouvelles du Japon" に掲載された。このサイトには他に太宰治の「走れメロス」や野坂昭如の「戦争童話集」も訳載されている。訳者たちが真に共感する作品を選りすぐって掲載しているのがうかがえる好サイトだと思…
メフィスト 2019 VOL.3発売日: 2019/12/04メディア: Kindle版 『火星ラストソング』ダウンロード成功により電書購入の味をしめたプヒ氏は、勇躍二冊目の購入にとりかかった。タイトルは『メフィスト』2019年 vol.3 。何を隠そう、あの伝説の『麻倉…
種村季弘の『ビンゲンのヒルデガルトの世界』を読んでいたら、またもや「なんなら」の新用法にぶつかった。こちらは1994年の刊行だから、先日とりあげた『畸形の神』よりさらに早い。 ここでは「なんなら」は「場合によっては(ドイツ語でいうと unter Umstä…
『火星ラストソング』を読んだら今度はゴセシケが読みたくてたまらなくなり、近所の図書館から借りてきた。 この『合成怪物』(半田倹一訳・岩崎書店SFこども図書館25)は「1976年第一刷発行」と書いてあるからわたしの読んだ版ではない。まあともかく半世紀…
火星ラストソング作者:倉阪 鬼一郎アドレナライズAmazon 電子書籍限定作品というからさぞ難解で前衛的な作品なんだろうなと思ったけれど、まったくそんなことはなかった。普通の形で出ても全然おかしくない作品である。物語はまるきりSF調で、最初のうちはP.…
火星ラストソング作者:倉阪 鬼一郎発売日: 2019/11/27メディア: Kindle版 必ずしも道は平坦ではなかったが、特にアドレナライズの本がkindle cloud readerに対応していないのが痛かったが、いやそもそもアマゾンはあまり利用しないので使い慣れていなかった…
昨日書いた特に名を秘す某社の方が連絡をくださった。こんな辺境のブログなんか誰も見てないだろうと思っていたが案外そうでもないようだ。すみませんでした。これからは人様の会社の備品を驚愕噴水とか鎌倉ハムとかいうのはやめます。
藤原編集室のツイートによれば、平井呈一訳マッケン短篇集が近々創元推理文庫から出るという。やれうれしや。同文庫『怪奇小説傑作集1』で「パンの大神」を読んだときの衝撃は今でも忘れがたい。「恐怖は人類最古の感情である」というラヴクラフトの言葉を…
夏冬のシーズンになると、女性たちがファッション雑誌をぱらぱらめくって流行を確かめるように、わたしはコミケのカタログをめくって流行を確かめる。旬のジャンルはサークル数が激増するのではやりすたりが一目でわかる。これは世間の流行りとは必ずしも関…
悪漢と密偵さんのツイート(正確にいえば藤原編集室のリツイート)で、吉田健一訳ポーが中公文庫の一冊として出ることを知る。これは近来にない快事だ。世間もようやく吉田訳ポーの凄さに気づいたかムハハハハという感じである。ポー一流の沈鬱かつ淀みない…
小栗虫太郎の未発表小説が発見されたというので、さる界隈は蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。NHKの「おはよう日本」でとりあげられることは事前に本多正一さんに教えてもらっていたのだが、あいにくわが陋屋にはテレビがない。正確にはテレビを置く…
知的生活の方法 (講談社現代新書)作者:渡部 昇一発売日: 1976/04/23メディア: 新書 渡部昇一は好きか嫌いかと言われればまあ大嫌いなのだが、高校生の頃この人の『知的生活の方法』を読んだことがある。筒井康隆がたしか『奇想天外』の連載書評で誉めていた…
これはどなただったか忘れたのだが、その方は一冊の本の翻訳が終わるとその原書を人にあげてしまうのだという。これは実感として何となくわかる気がする。気がするだけかもしれないが。 翻訳に苦労したので原書はもう見たくもない、ということではもちろんな…
今日はひさしぶりに遠出をした。これを贖うために。 漏れ聞く噂によればランボーの『イリュミナシオン』に匹敵する書だという。期待はいやがうえにも高まるではないか。 ところでこの本については某巨大匿名掲示板で次のような興味深いリークがなされている…
今日は目先を変えて基本日本語シリーズ第一弾(第二弾はたぶんない)。前にも一度取りあげた「なんなら」新用法の話である。 まずは旧来の用法をおさらいしておこう。 「なんなら」は伝統的には、「明日は雨だ。なんなら賭けてもいい」「俺は潔白だ。なんな…
基本英単語シリーズ第二回は "return"。 ホームズの短篇集のタイトルでも、adverntures (冒険)とか memoirs (回想)などはいかにも適当かつ安直で、ことさら冒険なり回想なりにする必然性は乏しい。だが第三短篇集の return には「これでなくては!」という感…
こういう本のタイトルをどう訳すべきだろう。「変なレディ」「変わったレディ」「奇妙なレディ」「風変わりなレディ」「異様なレディ」……どれも英文和訳としては満点なのかもしれない。だが意味はもう今一つ伝えきれてないのではあるまいか。この "strange" …
火星ラストソング作者:倉阪 鬼一郎発売日: 2019/11/27メディア: Kindle版 倉阪鬼一郎さんの『火星ラストソング』を読みたくてたまらない。二年前に出た本らしいのだが、今まで全然知らなかった! 電子書籍でしか売っていないからだ。電子書籍は今まで避けて…
「篠田真由美お仕事日誌」の2月25日のところを興味深く読んだ。この日記では小栗が『グリーン家』のどういう部分に不満を持ち、それを『黒死館』でどう変えていったかを推測しているのだが、実作者でなければ気づかないであろう点がいろいろあって面白い。と…
誰かが澁澤龍彦を語った文章で、「日本人っていうのは結局モーレツ主義なんだよ!」と自嘲しながら澁澤が旅先でも仕事をしていたという話を読んだ記憶がある。ひょっとしたら贋の記憶かもしれないけれど、かの澁澤にしてそうなのだから、拙豚ごときが一杯機…