種村主犯説

 種村季弘の『ビンゲンのヒルデガルトの世界』を読んでいたら、またもや「なんなら」の新用法にぶつかった。こちらは1994年の刊行だから、先日とりあげた『畸形の神』よりさらに早い。
  
 
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 ここでは「なんなら」は「場合によっては(ドイツ語でいうと unter Umständen)」あるいは「あえて言えば」の意味で使われている。つまりこれはNHK放送文化研究所のサイトで槍玉にあがっている「カレーがほんとに好きで、なんなら毎日食べてます」という「新用法」と同一である。

 「すべからく」唐十郎起源説と並んで、「なんなら」種村季弘起源説がますます濃厚になってきた。澁澤サークルというのがいかに風俗を紊乱する怪団体であったかは、この一事をもってしても明白ではなかろうか。未確認情報ではあるが、その親玉も国禁の書を訳して風俗紊乱のかどで前科一犯くらっているらしい。


 
 話変わってこちらは『合成怪物(合成脳のはんらん)』で政府御用機関が関連団体に便宜をはかっている場面。
  
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 とても70年前の作品とは思えません。おりから新訳ブームにのって、なんならこの作品も新訳したらどうでしょう。もちろん「ゴセシケ」の略称はそのままにして。きっとオールドSFファンは大喜びするとと思いますよ。