百合今昔


 

夏冬のシーズンになると、女性たちがファッション雑誌をぱらぱらめくって流行を確かめるように、わたしはコミケのカタログをめくって流行を確かめる。旬のジャンルはサークル数が激増するのではやりすたりが一目でわかる。これは世間の流行りとは必ずしも関係なくて、たとえば過去にはサイボーグ009の同人誌(いわゆる数字の掛け算)がよくわからない理由で増えたりしたこともあった。

ところが去年の夏以来コミケの開催がストップしていて、当然ながらカタログも出ない。なんとも歯がゆいことである。漏れ聞く噂によれば最近は百合がはやっているらしくて、SFマガジンが二度も特集を組んだり、某氏などは胆嚢炎の手術の前日まで『裏世界ピクニック』を見ていたという。もしこの夏にコミケがあったら『裏世界~』のサークルがずらり並ぶのだろうか。

ところでわからないのが昔とのつながりである。これがBLなら前世紀から連綿と伝統がつながっていることが、わたしのような門外漢にもなんとなく感知できる。錯覚かもしれないが、滔々と流れる大河のほとりに立っているような気もする。もちろんその中に入って泳ごうとまでは思わないけれど。

でも百合はどうなのか? 「ラッキーホラーショー」に宝塚のナマモノなどの投稿があった時代と、いやそこまで遡らなくても、「マリみて(マリア様がみてる)」が大人気だった時代と今とでは、一旦伝統が途切れているのだろうか。それとも見えにくい血筋が何かつながっているのだろうか。同じく門外漢ながらも、こちらはつながりがぜんぜん見えない。