わがエディション・プヒプヒもコピー本段階を脱し、印刷所で印刷してもらうことになりました。
その第一弾、「ビブリオテカ・プヒプヒ6」として出すスタニスワフ・レム追悼本は限定100部番号入り。8月12日(土)コミケにて東ぺ58a「エディション・プヒプヒ」で頒布します。お隣では素天堂さんが黒死館本を売っているはずです*1。
今回は事情により即売会以外での頒布はしないつもりです。寄贈本とですぺら置き分を除いた売れ残りはゴミ箱に投げて帰る予定(宅急便の列に並ぶのがしんどいので)ですので、皆さま是非是非お越しの上購入してくださいませ。
内容はこんな感じです。
*発狂した仕立屋
『技術大全』(1964)第五部「全能序説」の一節。全体の一パーセント程度のほんの断片ではあるが、チェスタトンのある種の評論を思わせる奇想と逆説とに満ちた、しかし本人は大真面目で書いているらしいこの大著の好サンプルだと思う。
*『薔薇の名前』をめぐって
独訳二巻本で総計九百ページ近くの大著『偶然の哲学』の第二部第十一章から、文芸批評家レムの辣腕が堪能できる部分として抜粋。「ホルヘたんは悪くないんだ! 偉大な予言者なんだ!」と切々と訴えている。彼によると『薔薇の名前』と『泰平ヨンの現場検証』のテーマは同一で、ただ正反対の時間軸(つまり過去と未来)からアプローチしているだけなんだそうな。そうかなあ……
*第六対話
人間の脳を一つの「ネットワーク」とみなすサイバネティクスの師匠フィロヌスと弟子ヒュラスとの間の八つの対話をおさめた『対話』(1957)から、第六対話を全訳した。ドストエフスキー「地下室の手記」のサイバネティクス的解釈から始まり、他人の脳の結合、人工頭脳への意識移植による不死性の実現、全体主義体制への警鐘と話題はめまぐるしく変わる。正直ムッチャ難しかった。今では少し後悔しているがここが一番面白いところだから……
*言葉遊びと翻訳
ここで紹介したZygmunt Tęczaによる言語学の研究書『翻訳における言葉遊び――言語間移転の対象としてのスタニスワフ・レムの言葉遊び』(1997)の巻末に収められた著者のレムへのインタビューの全訳。重訳されてアメリカで出た「ソラリス」がまだ売られてるのはけしからんとか、「宇宙創世記ロボットの旅」のフランス語訳は原書と何の関わりもないウワゴトみたいな文章*2だとか、ポーランドでは俺は児童本の作者としか思われてないとか、言いたい放題言っている。
マイクル・カンデルの遠未来書評やフランツ・ロッテンシュタイナーのレム罵倒文とかクヴァルバー・メルクールでの放談も入れようと思いましたが時間切れで見送り。