2022-01-01から1年間の記事一覧

これが百合か2

『安達としまむら』の六巻以降は結局多摩センターの丸善で買えた。こちらにもやはり「2020年10月8日(木)から放送開始!」という、すでに放映終了したTVアニメの帯がついている。これが何を意味するかというと……もしかすると多摩センターはうどん県と同じくら…

これが百合か

すこし日記の間が空いてしまったけれど、そのあいだ何をしていたかというと『安達としまむら』を読んでいた。『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』で衝撃的なデビューを飾った入間人間の二〇一五年の作品である。 これを読んで百合というものがわかったよう…

『地獄の門』

訳者解説によれば、作者モーリス・ルヴェルは何百もの短篇を書きながら、多くは新聞に掲載されたきりで、生前は二冊しか短篇集が出なかったという。なんだかジャック・リッチーみたいですね、作風は大違いだけれど。ともあれ読み捨てられたはずだったそんな…

『左川ちか全集』と『郊外のフェアリーテール』

ようやく『左川ちか全集』と『郊外のフェアリーテール』を買えた。両方ともかなりの売れ行きらしくて、なかなか書店の棚に見つけられなかった。連休中に読めるだろうか。

『ちくま』と『本の雑誌』

筑摩書房のPR誌『ちくま』5月号に「ペルッツの世界」を寄稿しました。この雑誌はヒグチユウコさんの絵がすばらしく、失礼な言い方になるかもしれませんが、この表紙絵は印刷も含めてPR誌にはもったいないくらいのクオリティです。ヒグチさんは表紙裏のマン…

『長い別れ』

女の運転するロールスロイスから白髪の青年が放り出されたのを目撃したマーロウは、そのまま青年を家に連れて帰る。そういえば少し前に『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』というライトノベルがあった。だがタフガイはもちろんそんなものは拾わない。拾…

『エルクマン-シャトリアン 怪奇幻想短編集』

昨日は久しぶりに盛林堂書房まで出向いて『エルクマン-シャトリアン 怪奇幻想短編集』を買ってきた。ウェブ上で販売されるやまたたくまに売り切れてしまい、そのまま幻となった本である。でも幸い店舗にはまだ残っていた。「挿絵が入っているだけで本文はむ…

『手招く美女』

世間ではとうに『マゼラン雲』とか『ホフマン小説集成上』とかが出ているというのに、今日ようやく『手招く美女』のページを開いた。最近の国書の刊行ペースについていくのは老残の身にはなかなかハードである。巻頭の「手招く美女」はむかしむかし牧神社の…

一度ならず二度までも

ナイトランド・クォータリーvol.20 バベルの図書館アトリエサードAmazon SFファン交流会のアンケートには「二度と訳したくありません」と書いてしまったキャベル。実はそのあともう一度訳しているのを思い出しました。『ナイトランド・クォータリー vol.20 …

パぺの表紙

SFファン交流会も盛況のうちに終了したようで何よりです。わたしは残念ながら外せない用があって参加できませんでした。あらためてお詫びします。その代わり、といっては何ですがパぺ関連の小ネタをひとつ。2006年にエディション・プヒプヒからスタニスワフ…

共感性

テュルリュパン ――ある運命の話 (ちくま文庫)作者:レオ・ペルッツ筑摩書房Amazon 『テュルリュパン』を読んでくださった方の感想がツィッターにぽつぽつ現われてきました。ありがたく読んでいます。今までのところいちばん「うんうんそうだよね」と思ったの…

『悪魔を見た処女 吉良運平翻訳セレクション』

学魔の新刊『鎮魂譜 アリス狩りVII』を買おうと思って雨の中を東京堂書店まで行った。お目当ての本は新刊平台ですぐ見つかったが、そのすぐ近くに目を疑うような本が並べてあった。すなわち本書である。吉良運平の名は乱歩『幻影城』の愛読者にはおなじみだ…

最古の叙述トリック作品は?

夏来健次・平戸懐古というすばらしいタッグによる英米古典吸血鬼小説傑作集『吸血鬼ラスヴァン』が来月末に東京創元社から出るらしい。おお、これはものすごいものになりそうで今から楽しみだ。平戸懐古氏といえば、話は急に変わるが、氏が私家版「懐古文庫…

我が尻よ

浅暮三文さん(通称グレさん)が久しぶりにファンタジーを出すらしい。ゴールデンウィーク明けに河出文庫から、題して『我が尻よ、高らかに謳え、愛の唄を』。表紙絵は今をときめくYOUCHAN。それにしてもあまりに不穏なタイトルである。中井英夫とか、須永朝…

本代は支払われたのだろうか

昨日書影をあげたヴェデキント仏訳本は、十数年前に洋書まつりで生田旧蔵書が大放出されたときに手にいれた。あのときは生田が晩年にいたるまで豪快に本を買い続けていたことがわかってびっくりしたものだった。現にあのヴェデキント仏訳の刊行年一九九〇年…

金玉を噛まれる

ちょっと必要があってフランク・ヴェデキントの日記を拾い読みしていたらこんな一節にぶつかった。 「彼女は[…]をちょん切ろうとしたが[…]、僕の金玉を噛んだので僕は痛さで悲鳴をあげた」。ここだけは本人も恥ずかしかったのかフランス語で書かれてある。噛…

『テュルリュパン』販売開始

テュルリュパン ――ある運命の話 (ちくま文庫)作者:レオ・ペルッツ筑摩書房Amazon レオ・ペルッツ『テュルリュパン』がアマゾンで販売開始になりました。丸善・ジュンク堂でも、たとえば都内なら丸の内本店・日本橋店・池袋本店に在庫があるようです。皆様な…

『サラゴサ手稿』ついに完訳

岩波書店のツイッターによれば、『サラゴサ手稿』が畑浩一郎氏の訳で九月から刊行されるという。これはめでたい。千夜一夜物語にならって何重もの入れ子構造をもったこの作品は、そのテキストもガラン版、マルドリュス版、バートン版などが並立する先輩並み…

リキジ……

ひさびさにコトリの宮殿出ますよーとツイートしようとしたら地面が揺れましたね。今回はリキジ……いや、コント特集です。 pic.twitter.com/2Fkb6z7pXg — タカスギシンタロ (@kotorigun) 2022年4月4日 リキジン(りきマガジン)が復活するそうな。いや、なには…

『テュルリュパン』来週発売

ツイッターの世界ではバズったら(というのはつまりアクセス数が増えたら)宣伝してもいい、という不文律があるようです。当ブログは一向にバズらないけれど宣伝はします。ということで来週あたりに久方ぶりのレオ・ペルッツ新刊『テュルリュパン ある運命の…

裏表紙の叙述トリック

日本では本の帯によく「〇〇氏絶讃!」などという宣伝文が書かれてある。英米のペーパーバックでそれにあたるのが裏表紙の引用文である。たとえば「驚天動地の傑作!(ニューヨークタイムズ)」とかそんな感じで書評の一部が引用されている。しかしこれが実…

巨大アヒルの正体

ここ最近の日記でしきりに登場する巨大アヒルは府中の古書店「夢の絵本堂」で買ったものだ。価格は三百円 (税込) だった。「夢の絵本堂」はこのようにときどき面白いものを売っているので、府中図書館に用があって行くときには必ず立ち寄る。ただし週のうち…

古老の昔話:イラストレーターの「あと描き」

今のライトノベルの巻末には、当たり前のように、作者のあと書きといっしょにイラストレーターの「あと描き」もついている。だがこれを一番最初にやった本は何だろう?文献によればそれは菊川涼音+夢路行のコンビによる『妄想自然科学入門』であるらしい。…

続・古老が語るモダーン・ディテクティヴ・ストーリイ

(これは昨日のツヅキです) モダーン・ディテクティヴ・ストーリイ(以下MDS)という言葉は、高校生のころ、新潮文庫に入っていた福永武彦『加田伶太郎全集』に付された都筑道夫の解説で知ったのだったと思う。 しかし『加田伶太郎全集』を読んだ当時の生意…

古老が語るモダーン・ディテクティヴ・ストーリイ

都筑道夫といえばモダーン・ディテクティヴ・ストーリイ(以下MDS)論である。これを自分は高校生のときほぼ同時代的に読んで、いろいろ思うところがあった。そこでこの機会に古老の昔話をしておこう。なにしろ老耄のことゆえ、いつボケて昔のことを忘れるか…

『都筑道夫創訳ミステリ集成』の楽しさ

都筑道夫創訳ミステリ集成作者:ジョン・P・マーカンド,カロリン・キーン,エドガー・ライス・バローズ,新保博久,堀燐太郎,平山雄一作品社Amazon 翻訳を依頼されたはいいけれど、「こんなつまらんものを訳してられるか!」とぶち切れて(かどうかは知らないが…

四月のSFファン交流会

SFファン交流会の四月例会は『〈マニュエル伝〉シリーズの魅力(仮)』と題して中野善夫さんと安野玲さんが参加される予定です。わたくしは都合により参加できませんが、皆さまこぞってお申込みください。きっと面白い話が聞けると思います。ところで話は急…

『さよなら、愛しい人』

さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:レイモンド チャンドラー早川書房Amazon チャンドラーの『さらば愛しき女よ』はむかし清水俊二訳で読んだときはあまり感心しなかった。マーロウは例によって行方知れずになったある女の捜索にたずさわる。…

モデルナ副反応の恐怖

この日記に書いたように月曜に三回目のワクチン接種をした。だが今回の副反応は一、二回目を上回った。ファイザーとモデルナのちゃんぽんにしたのがいけなかったのか、それともモデルナ自体の副反応が強烈なのか、それとも個人の体質的なものなのか、そこら…

荻窪ミニヨンの怪事件

三回目のワクチン接種を済ませたプヒ氏はヤレヤレこれで一安心と勇躍荻窪ミニヨンに向かった。そしてそこで実に奇妙な話を聞いたのであった。 ミニヨンというのは荻窪におそらく半世紀前くらいからある老舗の名曲喫茶である。かつてここで小野夕馥氏による森…