尻の火は消えず

 12日に文庫解説を送稿し、14日に雑誌小特集のゲラを戻したので、あとは短篇をひとつ訳せば今月の締め切りはオールクリアである。それが終われば夏の終わりまでに長篇をひとつ訳して、漠然としたプランを固めて、それからもうひとつ別の訳書の注と解説があるだけ。これくらいで忙しいと言ってたら世間が笑うだろうけれど、拙豚史上では過去最大の忙しさである。

 特に最後のがクセモノというか、這い寄る混沌というか、彼方から不幸の手紙が来そうな成り行きなのである。不幸の手紙を出す者はそのうち自分が不幸の手紙を受け取るという。巡る巡るよ因果は巡る~ 悲しみ喜びくりかえ~し~


 ところで今ちょっと調べてみて驚いたのですが、メイ・シンクレアの『胸の火は消えず』が出たのってもう7年も昔の話なんですね。そろそろ復刊フェアでまた出してもいいのではないでしょうか。桜庭一樹さんがどこかで「念写したみたいな文章」と言ってましたがまさに言い得て妙。この独特の心霊的な味わいは他に類を見ません。

 版元の内容紹介には「不毛な愛の果てに、永遠に続く情欲の地獄に堕ちた女性の絶望を描く」とか書いてありますが、これはある種の読者を惹きつけようとした叙述トリックのような気がします。まあウソではないにしても、そこから想像されるようなハーレクイン的な作品では全然ないのですよ。
 
【追記】
 桜庭さんの評言はツイッターの中にありました。
ところで「胸の火は消えず」、全編書いたというより念写した感があってじつにオソロシイです」(2014年3月9日)
 至言!