最後の姑

 
「走って!帰ってきた!桜庭ほんぽっ!」。五人目の姑はあんまり知らない人だった。知っているのは国籍と性別くらい。この姑の本を読むことは一生ないんじゃないかな……というのもまずいかもしれないので、とりあえず文庫本一冊買ってみました。しかし読むかどうかは大微妙。

ついでに(というわけでもないけれど)『ノンセンスの領域』も購入。作者は、ええと、『ブラック・ビューティー』の人でしたっけ。

文学フリマも迫ってきました。今回の新刊は、『夜毎に石の橋の下で』好評の余勢をかって、レオ・ペルッツの短篇「ボタンの一押しで」。

この短篇は発想といい展開といい、デラメアのある作品に似ています。世の中には同じようなことを考える人がいるもんだな〜と妙に感心しました。おまけに叙述は平井翁言うところの「朦朧法」で、作中で明示はおろか暗示さえしないのに、読者に「もしかしたらこうではないのか」と思いあたらしめるという不思議な技巧。ペルッツの代表短篇というと「月は笑う」が有名ですが、拙豚はこちらのほうが好きです。

あと新刊はもう一冊出したいのだけれど、こちらは原作者がまだ生きている(たぶん)という、翻訳権上たいそうまずい作品なので、遠慮しておいたほうが無難か……

おうそうそう、最後にこれが言いたかったんだけど、自分が本のなかで出会った最恐の姑はシートンのおばさんでした。もっとも「おばさん」だから厳密には姑ではないけれど、それだからなおさら、いやもう実にあれは姑というものの純粋結晶でした。