『輝く平原の物語』

 3月6日の日記ではエラソーに書いたが、実は拙豚はウィリアム・モリスはあまり読んだことがないのであった。せめてもの罪滅ぼしに、今日は「輝く平原の物語」を読むなり。

 平和な国クリーヴランドに突如現れた海賊船は、一人の美しい乙女をさらっていった。婚約者を奪われた若者ホールブライズは奪回の旅に出発する。なにやら発端は西村寿行だが、まあこれはウィリアム・モリスだからして、「犬のような格好で○○」とかそういうことは全然ないのなり。

 ホールブライズの探索行はシンボルに満ち満ちており。老人の若返る国。愛する人の出現する書物をめくり続ける王女。不死の王。そして恋人の顕現。かの薔薇十字の書「化学の結婚」との強い類縁を拙豚は感じる。つまり、探索の対象はストーリーの表層では婚約者なのだが、実はこれは錬金術的探求の物語なのではなからんか? その方向で物語を読み解きたい誘惑に拙豚はかられるなり(たぶんそういった解釈は誤りならんが)

 特筆すべきは訳文の見事さなり。適度の緊張をもって弛みなく悠々と進む語り。何より文体が最初から最後まで統一されてるのが素晴らしいなり。文章の好みは人により異なるならんが、拙豚はこのような文章が一番好きなり。変に凝らずに淡々と訳したのがいい結果を生んだのならん(゜(○○)゜) プヒプヒ