『遠感術は可能なりや(キャン・テレパシイ・エキスプレン)』(サヴェジ)G.P.Putnam's Sons 1902

 場末の古本屋で均一本など漁っていると、まれに黒死館蔵書と同一タイトルの書を発見することあり。何たる奇縁! あるいは黒死館はかつて実在しており、今眼前にあるこの書はその流出本ではなからんか。かような妄想が湧きいずるを如何ともしがたし。

 こころ慰む新刊書が見当たらぬような折には、それら往古の書を紐解き紹介せん。本日はその第一段、サヴェジ先生の"Can Telepathy Explain?" を俎上に乗せるなり。

 本書の前半では著者が直接的あるいは間接的に経験した色々な超自然的現象(いわゆる心霊現象)が物語られており。結論としてかような現象は確かに実在するものであり、偶然や詐術で説明できるものではないとされており。

 後半では、どういう原理でこれらの現象が起こるのかが議論されており。その説明原理として、著者は遠感術説 (Telepathic Theory) と心霊説 (Spiritistic Theory) が有力な二大仮説であるとす。ここで遠感術説とは、人間は他人に思考を送ったり、他人の思考を感受したりする能力を持っているという説なり。また心霊説とは、人間の魂は死後もなお人間界にとどまり、生者と交渉を持っているとの説なり。ページ数にして40ページくらいを費やして、この両者のうちどちらがより妥当かが検討されており。

 大真面目でこういう議論をやるところが時代を感じさせるなり。著者は結局、遠感術説では説明がつかない超自然現象があるとし、心霊説に軍配をあげており。これが本書の結論なり。

 このように見てくると虫太郎によるタイトルの訳「遠感術は可能なりや」は、誤訳とまでは言えないにしてもピントがぼけていると言わざるを得ず。この書は遠感術の可能不可能を論ぜしものにはあらず。タイトルCan Telepathy Explain? を内容に即して訳すならば「遠感術で説明できるか?」とでもするのがより適切ならん。

 このことから憶測するに、虫太郎はこの本を読んでいないか、あるいは読んだとしても、せいぜい拾い読みではないかと拙豚は僭越ながら思うなり(゜(○○)゜) プヒプヒ