『幻想と怪奇』3号

各所で話題騒然の『幻想と怪奇』3号を買ってきた。
 

 
 
巻頭80ページあまりの平井呈一特集は圧巻で、これだけでも十分にもとはとれるが、さらに圧巻なのはそれに続く短篇群である。実にみごとなアンソロジー(精華集)になっている。アンソロジーのテーマはいわば平井呈一趣味であり、「こわい話・気味のわるい話」趣味である。

不思議な現代性をたたえるウォルター・スコット「タペストリーの間」(和爾桃子さんの訳文のせいかも)、マリオン・クロフォード、E.F.ベンスン、A.M.バレイジなどの遺珠発掘、聡明で清澄なアスキス節が堪能できる「白い蛾」(いわゆるフェミニズム色も感じられる)。ニュー・ゴシックのえげつない(←誉め言葉)匂いがプンプン漂うマイクル・チスレット「ミスター・ケッチャム」。

それから井上雅彦氏の「紙の城館」。並みいる英米の強豪に混じって違和感がないのもすごいが、平井呈一への絶妙なオマージュになっているのには大感服した。