わが創元推理文庫神7(その4)

創元推理文庫はアンソロジーの宝庫でもある。永遠のロングセラー(たぶん)『世界推理短篇傑作集』『怪奇小説傑作集』を除けても『恐怖の愉しみ』とか『怪談の悦び』とか『淑やかな悪夢』とか『日本怪奇小説傑作集』とか『秘神界』とか、あるいは七年前の「ミステリーズ!」で予告されながら今はトワイライトゾーンに入った感のある全三巻の某巨大アンソロジーとか、単行本だと荒俣御大の『怪奇文学大山脈』とか超ゲテモノの大盤振舞『怪樹の腕』とか。

こうしたアンソロジーに全力投球する東京創元社のスタンスは(あまり表立って言われたことはないと思うけれど)素晴らしく好ましい。今後もこの方向に邁進してくれればと切に願う。

そもそも怪奇小説とアンソロジーというのは切っても切れない縁がある。英米でも "Not at Night" とかシンシア・アスキスとかピーター・へイニングとかすぐ名が思い浮かぶ。あるいは東雅夫さんが怪奇小説の権威であり、かつ名アンソロジストでもあるというのはほとんど必然みたいなもので、二にして一のものだと思う。

もちろんSFやミステリでもアンソロジーは盛んだけれど、怪奇小説ほどではないのではないか。なぜだろう。百物語への嗜好と何か関係があるのだろうか。

それはともかく神7の四冊目は創元アンソロジー群団のなかで現在唯一手に入りやすい『怪奇礼讃』。これは十五年くらい前に一度出て最近復刊されたものである。衰えぬ人気のほどがしのばれる。

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この本については当ブログでは過去にさんざん語ったので(たとえば2017年9月26日の項)ここでは繰り返さない。アンソロジー・ピースもアクセントとして交えつつ、本邦初訳をメインにして思い切って自分の好みで選び、それでいながら普遍性もそなえているというアンソロジーの王道だと思う。あと作品がたくさん入っているのもお得感があっていい。