ジョルジュ・サンドのゴシック

 
知る人ぞ知るジョルジュ・サンドのゴシック・ロマンス『スピリディオン』が突然翻訳された! 全九巻の「ジョルジュ・サンド・セレクション」の第一弾だそうだが、いやあ近頃は本当に何が出版されるか分からない。

これはなんというか、かっての国書の世界幻想文学大系の一巻になっていてもおかしくないような話だ。おぼろげに謎を予兆する発端から、物語は意外な方向に展開していき、そして結末はけっこうな驚愕(それもゴシックの伝統をきちんとふまえている)なので、一切の予備知識なしに読むことをお勧めします。特に版元藤原書店のサイトだけは絶対に見てはだめだ!(笑)

えーそれから、たぶんミステリーの人(ウィルキー・コリンズとか好きな人)が読んでも面白いと思います。あと、皆からなぜか仲間はずれにされる若き修道僧と先輩修道僧の怪しい交情はその手の雰囲気が好きな人をも満足させる……かもしれない。しかし、どうして女性作家が男だけの世界(この小説の場合は修道院)を描くとこういう雰囲気になってしまうのだろうか……。

ちなみにサンドがこの小説を書いたのは、ショパンとの駆け落ち先であるマヨルカ島だ。そこの湿っぽい気候にやられたショパンはいきなり結核を再発し寝込んでしまう。彼を看病する傍ら、ひとりいけない妄想をつのらせるサンド……ということはたぶんないと思う。