2020-01-01から1年間の記事一覧

みえすいた嘘

ボルヘス『伝奇集』:迷宮の夢見る虎 (世界を読み解く一冊の本)作者:今福 龍太発売日: 2019/12/13メディア: 単行本今福氏のボルヘス本のどこがいいのか。今まで必ずしも十分に論じられていなかった詩作品が俎上にあげられているのも嬉しいし、「読書家ボルヘ…

ボルヘスとパンデミック

殉教 (新潮文庫)作者:由紀夫, 三島メディア: 文庫三島由紀夫の中篇『三熊野詣』に自分の周りをアルコールで丹念に拭きまくる老歌人が出てくる。巷の噂では折口信夫がモデルらしい。むかし読んだときには「えらい神経質な人だな」としか思わず、変な人を見る…

続続吉田訳ポー

吉田健一訳ポーの特徴を見るためには、おそらく「アモンティラドの樽」の最後の一文が最適ではと思う。これの原文は For the half of a century no mortal has disturbed them. In pace requiescat! これを田中西二郎はこう訳した。 あれから半世紀、何者も…

文学フリマ広島の超収穫

遅くなりましたが二週間ほど前に行われた第二回文学フリマで遭遇した恐るべき本を紹介したいと思います。組糸座(くみとざ)という謎のサークルが頒布する十夜木文麦という方の三冊です。下の画像の左から「いろはなとり」「にしのことりことつきのよる/きた…

時間からのポー

ポーといえば気にかかることが一つある。ツイッター界隈を流れる噂によれば、ラヴクラフトの "Colour out of Space" を「宇宙からの色」とか、"Shadow out of Time" を「時間からの影」と訳している本があるらしい。ツイッターというのはデマ生成装置みたい…

続松山翁とポー

モーセと一神教 (光文社古典新訳文庫)作者:フロイト光文社Amazon 松山俊太郎翁のポー解釈は、マリー・ボナパルトの『エドガー・ポー』の影響を受けていたように思う。ここでいきなり脱線すると、この『エドガー・ポー』といい、プシルスキーの『大女神』とい…

続吉田訳ポー

ポーの文章は重い石を積み重ねて城壁を作っていくような感じで、内容はともかくその文体が好きか嫌いかと問われると、まああれだね、ちょっと答えにくいところがある。 むかしむかし、松山俊太郎翁の講義、というか放談がまだ美学校で行われていたころ、佐々…

史上最強

東雅夫さんのこのツイートにはわが意を得た思いがする。「史上最強」というのはまったく同感。「中学時代、これでポーにハマりました」というのもまったく同じ。「赤き死の仮面」がにわかに注目をあつめるポオには、戦前から多くの訳書がありますが、一巻本…

続ホワットダニット

こんな話を聞いた。もしかしたら業界では有名なエピソードなのかもしれない。 むかしむかし、作家X氏の傑作集が出ることになって、その解説をY氏が担当することになった。ところが、いざ出来上がった解説に目を通したX氏は、「これではだめです」と言い張り…

MONKEYの探偵特集

MONKEY vol.20 探偵の一ダーススイッチパブリッシングAmazon ボルヘスはマリア・エステル・バスケスとの対話でこんなことを言っています。 ボルヘス ……第二に(これははるかに大切なことですが)探偵小説は特殊なタイプの読者を作りあげたのです。つまり、わ…

幻想と怪奇来たる

縁あって『幻想と怪奇1』のご恵送にあずかりました。 どうもありがとうございます。 紀田・荒俣両巨頭による創刊の辞、北原尚彦氏のイントロダクションに続いて、いきなりアーサー・マッケンの短篇登場! やはりアーサー・マッケンは不滅です。牧神社版の作…

ホワットダニット

竹本健治さんがマイ・ホワットダニットという面白い催しをやっている。 このTogetterがやたらめっぽう面白い。でも「何でこれがでてこないんだ!」という古典があったので FF外から失礼します、どころかツイッター外から失礼します。つまりこれ↓ですね。もっ…

やれ嬉しや

高原英理さんが拙訳『怪奇骨董翻訳箱』を第六回日本翻訳大賞に推薦してくださいました。どうもありがとうございます。おかげさまでアマゾンで在庫四冊だった『翻訳箱』が今では二冊になっています。高原さんが気に入ってくださったツァーンの『ある肖像画の…

新たなる噴飯の胎動

『阿部徳蔵魔術小説集』、フランメンベルク『降霊術師』、「『犯罪公論』傑作選」と、恐ろしくモトデがかかっているであろう好企画を続けざまに放っている黒死館附属幻推園がまたまた何か怪しげなことを企んでいるらしい。そう風の便りに聞いた。漏れ聞く噂…